東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

エマ・ラーキン 著 大石健太郎 訳,『ミャンマーという国への旅』,晶文社,2005

2006-11-19 22:18:43 | 旅行記100冊レヴュー(予定)
ひょっとして、ラストに、とてつもないどんでんがえしがあるのでは、と期待したり、本書全体がパロディもしくはブラック・ジョークではないかと深読みしてもムダである。
ストレートにミャンマー軍事政権を批判した内容であり、著者自身にミャンマー社会とビルマ人を貶める思考があるのではないか?と自問する姿勢はまったくない。
わたしからみると、「人権ハラスメント」、あんたらの国はこんなに人権無視で非人道的で遅れているんだよ!としつこくしつこくわめきたてる本である。

ミャンマー社会全体への視点は、汚いものをみて目をそむける態度である。
スイカに群がるハエとか、汚いトイレ、ペンキのはげた建物、粗末な衣類などをことさら強調している。
悪かったよな、汚くて。
せっかく海外旅行するんだから、もっと積極的に楽しんで、肯定的にとらえればいいのに。

著者の旅は、ジョージ・オーウェルの過ごした都市をたどるものであるが、大英帝国のアジア支配については、著者に特に不満がないようだ。キプリングについても、深い批判も共感もないようで、英語圏の一般人はこの桂冠詩人の作品をあたりまえのものとして、捉えているようだ。(コメントの指摘のように、キプリングが桂冠詩人だというのは間違いです。われながら、なんで、こんな無責任なこと書いたんだろう)

ひとつだけ、もっともだと思う点は、ミャンマーの人たちが英語学習にとても苦労している状況だ。
著者のもとへも、英語を学びたい、英語を話したいというミャンマー人がたくさん集まる。
英語を話すこと、英語を勉強することに、ひじょうに憧れているのだ。
こうしたミャンマーの状況からみると、日本の英語学習環境はめぐまれている。
だから、本書の中で、意味不明の文、わけのわからない内容がたくさんあっても文句をいってはいけない。
訳者に文句をいうくらいなら、原書を読もう。
日本では英語を学ぶこともも容易であり、原書も入手できる。
翻訳者に文句をいってはいけない。