「サラリーマンは奴隷だ、本当に優秀な人間なら独立して稼ぐはずで、サラリーマンなどやらないのではないか」という質問に、ホリエモンがこう答える。
「お金だけで考えればね。独立して経理や税務の面倒くさい業務をするよりも、年収は少し下がっても会社に所属することで好きなことだけできる状態ならそっちを取る人もいる。それは企業がうまく人を使えている証拠だと思うよ」
ホリエモンこと堀江貴文氏(服役中)は実は好きで、購読しているメルマガの、その中でもとくに好きなQAコーナーでの一節。
堀江氏なら「すぐに会社やめて好きなことをやれば」と答えるのか思ったらそうではなく、なんとバランス感覚のあるお答えかと感心した。
「すぐやれば」式に即答することもよくある。
「起業したいのでそのためにお金をためている、いい方法はありませんか」というタイプの若い人からの質問が多いのだ。
そういう時には、「お金ためてる暇があったら、起業してしまえ、お金なんてなくたって会社はつくれる、すぐに好きなことを始めよ」とアドバイスしている。
ぎゃくに「留学したいのでその資金をためるために起業して順調にお金はたまっている、もっとためたい」という若者には、「典型的な留学ばかだな。留学自体が目的化してどうする」と答える。
一私立高校教員としてサラリーをいただいている我が身をふりかってみると、日々の業務のなかには面倒なこともたくさんあるが、やりがいがあり、努力に見合う結果も得られることは多いし、数字や形にならない小さな喜びはたくさんある。奇跡とよびたくなる出来事に出会うこともある。もちろん心底ムカつくことや唖然とすることも多々あるけど、トータルではほんとに好きなことをやらせてもらっているなと思う。
面倒と感じる書類業務は、おそらく公立学校の先生方よりはるかに少ない。だいたい毎週職員会議があるなんて話を耳にすると、ほんと私立に入れてもらえてよかったと思う。
お給料のうち、どれだけが税金になり、社会保険につかわれているかなど全く知らない。
ホリエモン氏が言うように、サラリーマンが独立すると、それまで会社にやってもらっていた事務仕事をすべてやらないといけなくなる。そのためのスタッフを雇えないなら、せっかく独立したところで自分の能力を使う時間が削られる一方だ。
そういうスタッフを雇って十分にやっていけるだけの利益が計算できないなら独立しない方がいいということだ。
だとしたら、独立して好きなことをやるという発想は志としてはすばらしいが、会社のなかで好きなことをやろうとする方が、一般人にとってはより効率のいい生き方だ。
サラリーマンは奴隷だとか、社畜だとか卑下するのではなく、会社でどう過ごしているかが問題なのだろう。その人自身がどう生きているかであり、サラリーマン一般として語れることではない。
もっと言うと、独立してしまったがために、意に沿わぬ仕事をそれまで以上にしなければならなくなる場合もある。
給料をもらう仕事をやめて、たとえばお芝居の世界に身を投じるというような人生を選んだとする。好きなことをするために、好きでないことをしてお金を稼がないといけないのは間違いない。
けっきょくはバランスの問題かな。もしくは、ものごとを幅広く好きの状態でいられるか。
コピー取り、お茶くみにも、創造性はもとめられると中谷彰宏氏がよく言う。
最近なんとなくそれもわかる気がする。
ブラックでさえなければ、とにかく入れてくれるところに入って、与えられたことを好きになってみるのが一番だ。
大学新卒生のニートが三万人いるってニュースを、昨日かな、読んだ。
社会がどうの、経済がどうのという前に、「自分の好きなことを見つけよう」というわれわれの進路指導にも根本的問題があると思うのだ。