★ 質問
「なつかしいミシェール
きみがここの家に、近いうちまた登ってきてくれるといいんだが。覚えているかい、下で岬に沿って競走しただろう、あのとき以来きみには会っていない。(・・・・・・)
僕はヴィラの塀の根もとのやまももの繁みの中に、死んだ白ねずみを一匹見つけた。そいつがくたばったのは、もういい加減前に違いない。埃に似た血の斑点を除けば、すっかり黄色くなっていたよ。そして眼のまわりには小さな同心円のしわがよっていた。閉じたまぶたはX型をしていた。(・・・・・・)
★ 答
「なつかしいミシェール、
今日もまた、夏もそのうちに終わるだろうと考えたよ。夏が終わって、もうそれほど暑くなくなり、太陽は隠れ、雨水が、絶え間なく、一滴一滴と、あらゆるものを蔽いつくすのが見られるとき、何をすればよいのかと僕は思ったのだ。
★ 答
「なつかしいミシェール
今や間もなく雨が来そうに思われ
今や太陽は一日一日と、光線の一筋ごとに弱って行き、ついには雪の玉に変身してしまいそうで、僕の方は、デッキチェアに窮屈な姿勢ではまりこんで、その冷却を跡づけて行く必用が生じそうに思われ、
(・・・・・・)
それじゃあきみは、僕みたいに、
最後に残った光のただ中に来て眠りたいとは
思わないのか。
きみはほんとにここに来て、ビールかお茶を飲みながら、物音が窓辺を過ぎるのを耳にしながら、僕に静かなお話をしてくれる気はないのか。僕たちはそれから裸になって、お互いの体を眺め、指で何かを数え、同じ一日を千たびも生き直すだろうに。
<ル・クレジオ『調書』(新潮社1966、2008)>