★ ワイシャツのボタンをはめもせず、アダムは毛布の間から一種の黄色い学生ノートを取り出した。その最初のページには、見出しに、手紙でするように、こう書き込んであった。
なつかしいミシェール
★ 「なつかしいミシェール
・・・・・・他のことなんかどうでもいいんで、何がどうなろうとこっちは想像力に充ちみちてるし、こんな詩だって書けるんだ
今日はねずみの日、
海に溶けこむ前の最後の日。
きみはといえば、幸いなことに、きみはきっと記憶のうず高い堆積の間から見分けられるはずだ、ちょうどかくれんぼをしていて、きみの眼とか手とか髪の毛が、葉の茂みの丸いすき間からのぞいているのが見つかり、いっぺんにそれとわかった僕が、もう葉っぱなんかにだまされずに、かん高い声で、<見つけた>と叫ぶときみたいに」
<ル・クレジオ『調書』(新潮社1966、2008)>
なつかしいミシェール
今、その文章に再び触れて、なつかしい(覚えていなかったが)感動を覚えた。
こういう文章が存在する喜び。
それにしても、44年はおそるべき年月だね(笑)