1995年は人生でいちばん映画を観た年で、映画館で観た映画だけで50本を超えていたのだけど、観た映画ではなく観(られ)なかった映画として記憶に残っているのがキアロスタミ。予定していたのが当日になって都合がつかなくなり、そのまま立ち消えになってしまった。
それから21年。夏に彼の訃報に接し、秋に全作品を上映するときいてユーロスペースに足を運んだ。選んだのは「桜桃の味」。
途中しばらく意識の飛んだところもあって、今のところはこれといった感想が出てこない。けれども、この映画を観たことで私の中で何かが醸成されていくような気がする(半ば確信している)。たぶん醸成には数年単位の時間がかかると思うけど、数年後の邂逅を楽しみに気長に待とう。
(21年前だったら「なにこれわかんない」で済ませていたかもしれない。そう思うと、この歳になって観たこともあながち無駄ではない気がする。時間が経ってわかることもあるということが、今ならよくわかるから。)
10月11日までBunkamuraで開催してたピーターラビット展。
子どものころ大好きだった絵本の世界がそのまま戻ってきたような展示会場に、原画や作者ゆかりの品々。涙腺をふるふる緩ませながら展示に見入った。
緩んだ涙腺が引き締まったのは、展示の終盤、日本で紹介されたピーターラビットのコーナー。
ピーターラビットの絵本が最初に出版されたのは1902年だけど、その数年後には日本でも紹介されている。ただし原作がベアトリクス・ポターとは一言も書いてない。絵の出来も様々。いくつか展示されてた非公式版の中で脱力したのが、1915年発行の児童書に掲載されていた「昔、アルトコロニ、太郎、二郎、三郎、ピータ郎トイフ四匹の兎ガ…」というお話。・・・ピータ郎!?
でもこれ、ほんの100年前の日本の話なのだ。たとえば今現在、模倣に積極的な国が世界のどこかにあったとして、その国のことをとやかく言えた立場じゃないなぁ
そしてもしかしたらその国は20年もたたないうちに模倣品でない素晴らしいものを生み出すようになってるかもしれない。(かつて精緻な青銅器や陶磁器をつくりだして日本やヨーロッパを魅了したように。)
・・・イングランドから始まって最後は別の国に思いを巡らせてしまったけど、そういう意味でも色々と感慨深い展覧会でした。