1月末にオペラシティで聴いたチョ・ソンジンのリサイタルの記録
曲目
ベートーヴェン ピアノソナタ8番、30番
ドビュッシー 映像第2集
ショパン ピアノソナタ3番
アンコール
シューマン 幻想小曲集op.12より 夕べに
ドビュッシー 喜びの島
リスト ラ・カンパネラ
感想メモ
冒頭の低い音が床を伝って靴底から響いてきた瞬間、心を掴まれた。
石造りの建造物のようなベートーベン。そして美音。特に今回のリサイタルでは低音の強音が印象的で、文字どおり何度も痺れた。
後半のドビュッシーは音が空気に溶けていく様子(まるで水に溶いた絵の具のよう)が感じられて陶然とした。演奏直後に近くの席から「天才の奏でる音楽、って感じね」と溜息まじりの感想が。わかる、まさにそんな演奏。
最後のショパンは圧巻の一言。凄みのある演奏で、音楽の渦の中に巻きこまれているうちに曲が終わっていた。(昨年水戸でアルゲリッチを聴いたときに味わった感覚と同じ)
ショパンの直後には小林秀雄の「モオツァルト」の一節や、中村紘子さんの「悪魔の血の一滴」という言葉、あとトリフォノフ の演奏も連想した。
アンコール3曲目のラ・カンパネラが始まると客席から黄色いどよめき(に限りなく近い溜息)が。この曲ではキラキラと金属的な響きが印象に残った。(次の日もずっと頭の中で鳴っていた)
とにかく圧倒されたこの日のリサイタル、奏者や会場はもちろん良かったけど、観客の方々についても一言。風邪の流行期にもかかわらず客席から聞こえる咳はとても少なくて、皆が演奏に集中しているのがわかった(それでいて決してピリピリしてるわけではない)。ロビーの雰囲気も穏やかで心地良かった。