山種美術館で12月4日まで開催されている展覧会「速水御舟の全貌 -日本画の破壊と創造-」のブロガー内覧会に参加しました。
※この記事の写真はすべてブロガー内覧会で許可を得て撮影したものです。
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◆撮影可能な絵のうち特に印象に残ったもの◆
速水御舟/名樹散椿(めいじゅ ちりつばき)/1929年制作/山種美術館所蔵
山種美術館のコレクションを代表する作品のひとつで、美術館のカフェ「椿」の由来にもなった絵。京都の地蔵院にある五色八重散椿(ごしき やえ ちりつばき)を描いたものだそうです。
前から見てみたいと思っていましたが、今回の展覧会でようやく念願叶い対面となりました。
最初に見たときは「胸に迫りくる絵だなぁ」という印象、次いでその華やかさに圧倒されました。
美術館で屏風を見る楽しみは、いろいろな角度から立体的に作品を楽しめること。
近づいたり遠ざかったり、右から左へゆっくり移動したり、しゃがんでみたり。立ち位置によって印象も変わります。(私はこの角度から見た椿が好きです)
屏風の一部を拡大。大きくうねるように画面を横切るこの枝を見て、なぜかルソーの絵を連想しました。(曲線のうねりと色使いのせいでしょうか。)
※調べてみたら、似たような枝の描写がありました。(→熱帯嵐のなかのトラ(Wikipedia))
屏風をさらに拡大。
モデルとなった五色の椿は、実際に1本の木にいろいろな色の花が咲くそう。
屏風の左下にあったこの展示も、とても興味深いものでした。
背景を金色にするときの技法を3種類、実際の見本で紹介しています。
左が箔押し。金箔を使った技法で、一般的な方法とのこと。そして真ん中が金泥、右が撒きつぶし。
同じ金でも、技法によって見え方や印象が違うのですね。
「名樹散椿」の背景は、金砂子を何度も撒いては擦りつぶす「撒きつぶし」という技法で描かれているそうです。
通常、金砂子を用いるときは部分的にパラパラと散らすことがほとんどで、このように一面に敷きつめるのは非常に珍しいとのこと。使う金の量もとても多いらしい。
(ちなみに「名樹散椿」の右隣に展示されている「翠苔緑芝(すいたいりょくし)」の背景は金箔によるものだそうです。
次に行くときはよく見比べてみなくては。)
「名樹散椿」は1930年にローマ日本美術展覧会に出品され、御舟自身も展覧会の美術使節として渡欧したそう。
渡欧の翌年、現地での写生を元に描かれたのがこの絵。↓
速水御舟/オリンピアス神殿遺址/1931年制作/山種美術館所蔵
一方、こちら↓は現地で滞在中に写生されたもの。
速水御舟/フィレンツェ アルノの河岸の家並(写生)/1930年制作/山種美術館所蔵
好きな部分を拡大。絵の真ん中~左あたり
このあたりも好きな部分。絵の右端あたり
速水御舟/春の宵/1934年制作/山種美術館所蔵
拡大。はらはらと花の散る「気配」が感じられて、吸いこまれそうになる。おぼろげに光る月がまたいい。
最後はいよいよ「炎舞」。
この作品の展示を念頭に設計された展示室で、この作品のために調節した照明のもとで鑑賞。
速水御舟/炎舞(の一部)/1925年制作/山種美術館所蔵
1925年の夏に滞在した軽井沢で制作した、焚火に群がる蛾を描いた絵。
美術館を代表する作品のひとつだけあって会場内でも人気があり、全体の写真は撮れず。なので、私の好きな部分を撮ってみました。
闇に舞う火の粉が本当に動いているみたいで、何度見ても不思議な感覚に陥ります。
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◆ギャラリートーク◆
私が速水御舟という画家を知り、好きになったのはここ数年のことです。
「炎舞」や「翠苔緑芝」など好きな作品はいくつかありましたが、今回の展覧会で彼の作品をまとめて見る機会を得たこと、そして画風の変遷について詳しくお話を聴けたことで、今まで「点」と「点」だった個々の作品を速水御舟の作品群という「面」のひとつとしてとらえることができました。
解説にもありましたが、速水御舟は40歳という短い生涯の中で本当にさまざまな画風の作品を残しています。
(展覧会場をひとめぐりした後で、これらの作品が全て一人の画家の手によるものだと思い起こすと、驚きを禁じえません。)
古今東西さまざまな絵の影響を受けながら作風は変わっていったけれども、常に根底にあったのは、非常に高い技術力、不断の努力、そして超現実的なものだった、という館長の言葉が特に印象に残りました。
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◆公式HPや関連情報など◆
◇山種美術館 ホームページ
◇開催中の展覧会(12/4までは「速水御舟の全貌 -日本画の破壊と創造- 」)
◇前期は11月6日まで、後期は11月8日から12月4日まで
◇11月6日(日) 午前9時~ NHK Eテレ「日曜美術館」で放映予定
※この記事の写真はすべてブロガー内覧会で許可を得て撮影したものです。
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◆撮影可能な絵のうち特に印象に残ったもの◆
速水御舟/名樹散椿(めいじゅ ちりつばき)/1929年制作/山種美術館所蔵
山種美術館のコレクションを代表する作品のひとつで、美術館のカフェ「椿」の由来にもなった絵。京都の地蔵院にある五色八重散椿(ごしき やえ ちりつばき)を描いたものだそうです。
前から見てみたいと思っていましたが、今回の展覧会でようやく念願叶い対面となりました。
最初に見たときは「胸に迫りくる絵だなぁ」という印象、次いでその華やかさに圧倒されました。
美術館で屏風を見る楽しみは、いろいろな角度から立体的に作品を楽しめること。
近づいたり遠ざかったり、右から左へゆっくり移動したり、しゃがんでみたり。立ち位置によって印象も変わります。(私はこの角度から見た椿が好きです)
屏風の一部を拡大。大きくうねるように画面を横切るこの枝を見て、なぜかルソーの絵を連想しました。(曲線のうねりと色使いのせいでしょうか。)
※調べてみたら、似たような枝の描写がありました。(→熱帯嵐のなかのトラ(Wikipedia))
屏風をさらに拡大。
モデルとなった五色の椿は、実際に1本の木にいろいろな色の花が咲くそう。
屏風の左下にあったこの展示も、とても興味深いものでした。
背景を金色にするときの技法を3種類、実際の見本で紹介しています。
左が箔押し。金箔を使った技法で、一般的な方法とのこと。そして真ん中が金泥、右が撒きつぶし。
同じ金でも、技法によって見え方や印象が違うのですね。
「名樹散椿」の背景は、金砂子を何度も撒いては擦りつぶす「撒きつぶし」という技法で描かれているそうです。
通常、金砂子を用いるときは部分的にパラパラと散らすことがほとんどで、このように一面に敷きつめるのは非常に珍しいとのこと。使う金の量もとても多いらしい。
(ちなみに「名樹散椿」の右隣に展示されている「翠苔緑芝(すいたいりょくし)」の背景は金箔によるものだそうです。
次に行くときはよく見比べてみなくては。)
「名樹散椿」は1930年にローマ日本美術展覧会に出品され、御舟自身も展覧会の美術使節として渡欧したそう。
渡欧の翌年、現地での写生を元に描かれたのがこの絵。↓
速水御舟/オリンピアス神殿遺址/1931年制作/山種美術館所蔵
一方、こちら↓は現地で滞在中に写生されたもの。
速水御舟/フィレンツェ アルノの河岸の家並(写生)/1930年制作/山種美術館所蔵
好きな部分を拡大。絵の真ん中~左あたり
このあたりも好きな部分。絵の右端あたり
速水御舟/春の宵/1934年制作/山種美術館所蔵
拡大。はらはらと花の散る「気配」が感じられて、吸いこまれそうになる。おぼろげに光る月がまたいい。
最後はいよいよ「炎舞」。
この作品の展示を念頭に設計された展示室で、この作品のために調節した照明のもとで鑑賞。
速水御舟/炎舞(の一部)/1925年制作/山種美術館所蔵
1925年の夏に滞在した軽井沢で制作した、焚火に群がる蛾を描いた絵。
美術館を代表する作品のひとつだけあって会場内でも人気があり、全体の写真は撮れず。なので、私の好きな部分を撮ってみました。
闇に舞う火の粉が本当に動いているみたいで、何度見ても不思議な感覚に陥ります。
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◆ギャラリートーク◆
私が速水御舟という画家を知り、好きになったのはここ数年のことです。
「炎舞」や「翠苔緑芝」など好きな作品はいくつかありましたが、今回の展覧会で彼の作品をまとめて見る機会を得たこと、そして画風の変遷について詳しくお話を聴けたことで、今まで「点」と「点」だった個々の作品を速水御舟の作品群という「面」のひとつとしてとらえることができました。
解説にもありましたが、速水御舟は40歳という短い生涯の中で本当にさまざまな画風の作品を残しています。
(展覧会場をひとめぐりした後で、これらの作品が全て一人の画家の手によるものだと思い起こすと、驚きを禁じえません。)
古今東西さまざまな絵の影響を受けながら作風は変わっていったけれども、常に根底にあったのは、非常に高い技術力、不断の努力、そして超現実的なものだった、という館長の言葉が特に印象に残りました。
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◆公式HPや関連情報など◆
◇山種美術館 ホームページ
◇開催中の展覧会(12/4までは「速水御舟の全貌 -日本画の破壊と創造- 」)
◇前期は11月6日まで、後期は11月8日から12月4日まで
◇11月6日(日) 午前9時~ NHK Eテレ「日曜美術館」で放映予定