考えるための道具箱

Thinking tool box

The Wall/Pink Floyd

2005-06-08 00:21:03 | ◎聴
20代半ばから30代半ばまでの空白の10余年、つまり90年代の空白をうめるべく、しっかりと大量に音楽を聴くことにしました。よくよく考えたら渋谷のQFRONTには夜中の2:00まであいているTUTAYAがあるわけだから、もっと積極的に利用しておけばよかったんだけどね。

ただし、なにが書けるか?といえば思い出話くらいしかかけないので、どちらかというと聴いた音楽の記録ということになると思われます。通し番号とか打ってみたりして。

【001】The Wall/Pink Floyd

空白の10年の答えになっていないし、なにをいまさらと思われるかもしれませんが、これは久しぶりに聞くとやっぱりいい。一般的には出来が悪いとかなんとか言われているこのアルバムを好きだというのは少し複雑な感情ではあるれど。じつは、高校生や大学生のときにたまたま入手していた『Dark Side of the Moon』など『The Wall』以前のものはもとより、とりわけ『The Wall』直後の『The final cut』なんかはこれもまた出来が悪いといわれているにもかかわらずカセットテープがのびのびになるほど聴いていたんだけど、『The Wall』については、持ってる友人がいなかったのか、ずっとレンタルが貸し出し中だったかの理由で手元になく、じっくり聴いたことがなかったのです。

空白の10年の間も、ときおり『Another Blick In The Wall (Pt.2)』が頭のなかに囁きかけたり、あまつさえ一日中口ずさんだりすることも確かに何度かあった。でも『The Wall』全体をなんとかしようという具体的な企てにおよぶことはなく、そういった意味ではずっとおこりのような状態が続いていたわけだけれど、このたびすっきり解熱できました。

続編とも残り滓ともいわれている『The final cut』から逆行したこともあり、きわめて敷居低くPink Floydを思い起こすことができ、同時にこのことで自分は絶頂のロジャー・ウォーターズをよかれと思っていることが追認できたわけです。さらに、いわゆるコンセプトアルバムの魅力へのインプリンティングに抗えないこともよくわかりました。最後の曲が最初に戻るなんていうチープな計算にいまでも感動してしまうわけです(もちろんそれだけがコンセプトアルバム要素というわけではないけれど)。styxの『Paradise Theater』やBilly Joelの『The Nylon Curtain』とかね。邦楽でいうなら浜田省吾の『Promised Land』とか。なんとういうかコンセプトの、巧みな一貫性というものにいとも簡単に満点をあげてしまうのです。きわめて大衆的なんですけれどね。

で、よくよく見てみると詞なんかも恰好いい。

つまり
きみは
ショウでも観にいこうと
思ったというわけだ
広大な密室に繰り広げられる混沌の中で
ぬくぬくとしたスリルを味わうためにね
どうしたんだい?
いやにまごついているようじゃないか
きみが期待していたものと
あまりにも違うといういうのかい?
この冷ややかな両眼の裏に
何が隠されているのか知りたいなら
かきむしるようによじ登って
化けの皮をひっぺがせばいいのだ
(「In The Fresh」 訳/山本安見)


訳の改行とかも恰好いいんだけどね。

『The Wall』は発売が1979年で、これにて80年代が幕をあけるわけだけど、じつは始まりと同時に終わり、あとは残滓である『The final cut』が燻っているだけ、というのは、まさに80年代の時代性をあらわしているともいえ、そんなところからもなにかしら興味を持つのかもしれないなあ。ああ、やっぱり思い出話だ。


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