史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

宗像

2016年06月11日 | 福岡県
 今年(平成二十八年)のゴールデンウィークは福岡県を訪ねることにした。昨年の長崎・佐賀に続き、九州である。
 もう半年前から準備を始め、各市町村の観光協会等に問い合わせをして万全を期した。今回も非常にタイトなスケジュールで一瞬の無駄も許されない旅程となった。
 福岡への出発便は、羽田空港を朝七時二十分に出るものであった。これに乗るために早朝四時前に起床。高尾駅の始発に飛び乗った。今回の福岡史跡旅行は五泊六日。出発日を含め毎日四時半に起きて、五時にはホテルを出て、第一目的地には日の出時刻に到着した。九州地方は日の入りが遅いので、午後七時までは十分に史跡を訪ねることができる。連日、おにぎりや菓子パンを車内でほおばり空腹をしのいだ。六日間の総走行距離は千五百キロメートルを超え、撮影した画像は千二百二十枚を数えた。さすがに三日目には体調を崩し、激しい下痢に襲われたが、それでも予定したスポットの九割は回ることができた。その点では十分満足している。しばらく画像と資料の整理に追われる日が続きそうだ。帰着後数日は疲れているのに早朝に目が覚めてしまう「時差呆け」状態が続いた。
 ちょうど旅行の二週間ほど前に熊本地方を大地震が襲った。つい先日熊本県(山鹿・玉名方面)の史跡を旅したばかりで、熊本の被害に心が傷んだ。ことに激しく損傷を受けた熊本城の惨状には衝撃を受けた。このまま福岡旅行を敢行したものか迷いが生じたが、幸い福岡県では大きな被害もなく、平穏な日常が維持できているようだったので、予定とおり決行した。(一日を除き)天気にも恵まれ、心から史跡旅行を堪能することができた。さすがに東京に戻った時点でヘロヘロであったが…。

 福岡県は、藩政時代でいえば、小倉藩、福岡藩、久留米藩、柳川藩という大藩と、その支藩である秋月藩、小倉新田藩などが存立していた。いずれも薩長のように時代を主導するような存在ではなかったものの、それぞれ個性的な歴史を幕末に刻んだ。また、福岡の地からは、平野國臣、月形洗蔵、真木和泉などといった情熱的な志士を生んだ。
 維新後、秋月では明治政府への反乱が起こり、福岡では鹿児島の西郷に呼応して兵を起す動きがあった。西南戦争後には玄洋社という、この時代の日本を代表する右翼的政治団体を生んだ。これも維新に乗り遅れた福岡で発生した「反動的」事象であろう。彼らの足跡をできる限り追ってみたい。

(赤間宿跡)


五卿西遷之遺跡碑

 宗像市の赤間は、唐津街道に位置する宿場町で、今も古い街並みは往時の雰囲気を伝える。法然寺の南側の交差点の一角に五卿西遷遺跡碑が建てられている。
 文久三年(1863)八月十八日の政変によって三条実美ら七卿は京都を脱して長州に落ち延びた。そのうち五人(三条実美、三条西李知、壬生基修、東久世通禧、四条隆謌)が長州から筑前に入った。慶応元年(1865)、赤間宿の御茶屋(本陣)に二十五日間滞在したが、その間、全国から西郷隆盛、高杉晋作、中岡慎太郎や地元の早川勇ら百人に近い志士が馳せ参じた。

(武丸)


維新之志士早川勇顕彰碑


早川勇歌碑

 国の為 ふかき心を つくしかた
 身はよせかへる 波にまかせて

 宗像市吉武地区コミュニティーセンターの前の広場に早川勇の銅像が建っている。
 早川勇(養敬)は、天保三年(1832)、筑前遠賀郡虫生津村の農民の家に生まれた。吉留出身の藩医早川元端の養子となり、嘉永年間には江戸で佐藤一斎、藤森弘庵、大橋訥庵らに学び、帰藩後は鷹取養巴、月形洗蔵らとともに尊王運動に従事した。文久三年(1863)、三田尻に滞在中の三条実美とすでに接触を持っていたが、慶応元年(1865)正月、五卿が太宰府に移ると、その祗候を命ぜられた。同年十月、乙丑の獄に連座、閉門に処せられた。慶応三年(1867)十二月、幽閉を解かれ、明治元年(1868)、徴士となって、明治二年(1869)には奈良府判事となった。のち司法省に移り、司法少丞、司法権大丞を歴任。ついで明治十七年(1884)には元老院大書記官に進んだ。明治三十二年(1899)、年六十八で没。福岡藩出身の尊攘派としては珍しく維新まで生き抜き、新政府で活躍した。

 なお、この顕彰碑の文字は佐藤栄作によるものである。佐藤栄作は、ちょうど明治百年に当たる昭和四十三年(1968)当時に内閣総理大臣の席にあったこともあって、各地の記念碑にその名を残している。ただし、佐藤栄作は長州藩内でも尊攘派と対立した坪井九右衛門の家系の出であり、どちらかというと佐幕方ということになる。
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