史跡訪問の日々

幕末維新に関わった有名無名の人生を追って、全国各地の史跡を訪ね歩いています。

館林 Ⅱ

2016年02月12日 | 群馬県
(法輪寺)


法輪寺


石川喜四郎墓

 石川喜四郎は、天保五年(1834)、館林藩士石川定興の子に生まれた。慶応四年(1868)四月、館林藩が勤王に決すると、歩兵隊長となって総州結城に出兵した。武井、野州小山付近で両軍戦い、大鳥圭介の戦略と彼我の兵力相違のため政府軍は苦戦した。四月十七日、下総武井にて敵の重囲中手兵二十五人とともに奮戦したが、敵弾に腰部を貫かれ斃れた。三十五歳。同日進藤常吉、十六日には山本富八、山澤与四郎ら藩最初の戦死者となった。なお戦死した武井にも墓がある(官修墳墓)。


戸谷佑嵩墓(戸谷戸助の墓)

 戸谷戸助は、用組隊。慶応四年(1868)五月十三日、江戸千住にて彰義隊に斬られたという。十七歳。


本木信吉遺髪塚

 本木弥三郎信吉は、慶応四年(1868)九月五日、若松城下にて戦死。十八歳。

 「明治維新人名辞典」によれば、岡谷瑳磨之介の墓も法輪寺にあるそうだ。気が付いたのが、館林から戻ってからのことであった。再度、探しに行くにしては、館林は遠い。この次に館林を訪問することができるのは何時になることやら。

 岡谷瑳磨之介は、文化四年(1807)の生まれ。父は岡谷兵八郎、母は喜津。館林藩の中老として、弘化三年(1846)、転封直後の藩の財政回復策を建言、嘉永元年(1850)、家老に進み、安政三年(1856)三月、藩政改革を主宰した。家臣の在番制度、藩校の創設や茶の栽培を主とした殖産政策、軍制改革等その治績は大いに挙がった。しかし、攘夷、開国、勤王、佐幕の間にあって、早くから海外事情を学び、開港論を主張したため、文久三年(1863)十一月、専制を非難する藩の尊攘過激派(館林断髪党)の大久保鼎らに辞職を迫られて退任した。万延元年(1860)の幕府の遣米使節団派遣の時、長子勝義を同行させている。慶応元年(1865)、年五十九で没。

(邑楽護国神社)


邑楽護国神社

 邑楽(おうら)護国神社は、明治二年(1869)、館林藩主秋元礼朝(ひろとも)が、戊辰戦争の戦没者三十九柱の霊を祭祀したのがその端緒であり、当初は近藤村大谷原の調練場に創設された。明治八年(1875)には、宇都宮、黒羽と並んで関東における官祭招魂社に指定された。現在地に遷座したのは明治十四年(1881)のことであり、昭和十四年(1939)に邑楽護国神社と改称された。


大砲一隊臨碑


戦死者碑


西南役戦死碑

 邑楽護国神社境内には館林招魂社があり、そこに大砲一隊臨碑や戦死者碑がある。大砲一隊臨碑は、戊辰戦争における館林藩の戦死者三十九人を慰霊するものである。明治二年(1869)九月建立。
 また社殿の裏側には西南役戦死碑がある。篆額は秋元興朝。明治十一年(1878)四月の建立。

(大道寺)


大道寺

 大道寺には生田萬の父祖の墓や田山花袋の和算術の師である戸泉鋼作の墓がある。


義峰院生田君 想嚴院鈴木氏之墓
(生田萬曽祖父の墓)

 生田萬は、享和元年(1801)、越智松平藩士として館林に生まれた。二十歳の頃から国学の道に進み、二十四歳のとき、平田篤胤の門下に入った。藩政改革にかかる書を提出し、文政十一年(1828)館林藩を追われ、天保七年(1836)、越後柏崎に移った。その翌年、天保の大飢饉の困窮した領民を救おうとして乱を起し、失敗して自刃した。
 大道寺には生田萬の曽祖父、祖父、両親の墓が並んでいる。右の写真は曽祖父のものである。


戸泉家累代之墓(戸泉鋼作の墓)

 戸泉鋼作(1836~1909)は、館林藩士戸泉善治の子。明治十三年(1880)頃から青少年を対象に和算を教えていた。田山花袋は明治十六年(1883)十一歳のときからここで算術を学んだ。授業終了後、吉田陋軒(ろうけん)の休々草堂で漢詩や漢文を学んだという。


梶塚正繁遺髪塚

 梶塚(もしくは梶岡)勇之進正繁は大砲長。慶応四年(1868)閏四月四日、羽前蔵増村にて戦死。四十六歳。

(常楽寺)
 常楽寺は市内木戸という集落に位置している。駅から自転車で二十分ほど走る。広い境内に幼稚園を併設しているが、一見すると墓地が見当たらない。実は墓地は土手を越えた向う側にある。


常楽寺


多田由兵衛の碑


真教道覺清信士(多田由兵衛の墓)

 多田由兵衛は郷夫。慶応四年(1868)九月五日、若松城下にて戦死。多田家墓地に昭和五十四年(1979)に建てられた多田由兵衛の碑によれば、「藩命に依り郷夫として」従軍した由兵衛は、「奪激力闘防戦に努め」たが、「不幸凶弾に斃れ壮烈なる戦死を遂げ」た。時に弱冠二十であった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 館林 Ⅰ | トップ | 前橋 Ⅴ »

コメントを投稿

群馬県」カテゴリの最新記事