これが私の生きる道

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月刊「根本宗子」『スズナリで、中野の処女がイクッ』

2014年05月25日 19時22分58秒 | 演劇
演劇を観に行くとフライヤーという他作品のチラシが
入場時に手渡されたり、席に置いてあったりして
開演までの時間で眺めていたりするんですが
その中でこの「月刊「根本宗子」というものもよく目にしていて
もうかなり前から気になっていました。

しかしその度に面白くなかったら嫌だなぁとか
知っている俳優さんでも出ていたら行くんだけどなぁとか
要は面倒なだけなのに様々な理由付けして先延ばししていたんですけど
この度、満を持して観に行くことにしました。

会場はスズナリで、作・演出・出演の根本さんがパンフレットに
スズナリで公演を行えることに
感慨深いものがあるようで
演劇人としてはミュージシャンでいう武道館的な感覚があるのでしょうか。

前列自由席と指定席があり、
200円安いこともあって前列自由席を選択。
指定席は満席で、補助席も用意されていたようですが
なぜか自由席は空席があって
通路側で隣の人もいなくて圧迫感がなく
最高の席でした。
前回が体臭に悩まされただけに
座席位置の運っていうのは舞台の出来自体に負けず劣らず
大事なものと改めて感じました。

舞台はメイド喫茶の控室です。
セットの組み方が独特で
木の枠がステージ上を額縁のように囲んでいるので
普段より狭く感じて、演出の意図でそうしているのかなぁって
初め不思議でした。
ワンシチュエーションコメディのいい所は
話の筋が分からなくなることがないことですね。
因果関係は分かりませんが、
舞台転換が多いほど内容が複雑になるような気がします。

そこでメイドとして働く、じゅん、もなか、まゆり、イブの4人に
オーナーの横瀬、雇われ社員の福田、店の常連のドミニクの7人のお話です。
控室なのでメイド服や私服に着替えるシーンが何回かあるんですが
1列目だったんで目のやり場にちょっと困りました。
足フェチの人だったら堪らないかもしれません。
なぜか観ながらメイドの4人をAKBメンバーに当てはめていました。

じゅん:柏木由紀
もなか:高橋みなみ
まゆり:河西智美
イブ:川栄李奈

AKBに詳しくないので、あくまで個人のイメージで
役者さんの外見にかなり引っ張られています。

もなかは27歳の最年長でメイド長を任されています。
オーナーと付き合っていた過去があり、
最近は通販番組にハマっていて
そこで紹介される食品を食べては太ることを恐れて
吐いたりしていて
一見、気が強そうですが、本質的にはそんなに強くありません。
客観的に見て、この先の人生で
一番苦労しそうな感じはします。

まゆりは22歳でイマドキの女の子ですが
グループ内では割と上手く人間関係をこなせるタイプです。
現在、オーナーと付き合っていますが
元カノのもなかとの過去を気にしており
こちらも精神的なアップダウンが激しい。
もなかとまゆりは共にカラーリングしており
前に元、楽天の野村監督が髪の色を変える人は
精神的に安定していない、と偏見めいたことを言っていましたが
それに当てはまります。

イブは19歳で傍目には何も考えていない天然ちゃんのように見えますが
後半で実は腹黒でサイコパス的な部分(物事の善悪に疎い)
を持ち合わせていることが明らかになります。
尾崎桃子さんという女優さんが演じていますが
今日の出演者の中では一番役者っぽい人だと感じました。
どこかで観たことがある人かと思いましたが
どうも初見でした。

じゅんは根本さんが本人が演じており
イメージではもっとギャル度が高い人かと想像していましたが
どちらかというといいとこのお嬢さんな感じでした。
この中では一番常識人で
自己主張もあまりしない大人し目の人ですが
彼女の財布を盗んだのがイブと知り
烈火のごとく責め立てます。
もちろんもなかもまゆりも一緒になってそれに加勢しますが
その最中に大地震が襲ってきて、状況が一変します。
前述した舞台セットはこの為に用意されていたもので
震災車みたいにセットが左右に激しく動いて
実際に地震が起きているような演出が施されていて
これは中々すごかったです。

震源地は青森という設定で、そこがイブの郷里ということで
彼女がひどく動揺してしまい、
もなかとまゆりがそれをなだめるという方向に進んでしまいます。
怒りが爆発しているじゅんはもちろんそれに納得せず
尚もイブを責め立てようとしますが、
そんな場合じゃないだろうと、もなかとまゆりに逆に非難されます。

自分はじゅんに同情的な立場です。
不良がちょっといいことをしただけで実はいい人、
というのも似たようなものがあります。
地震で両親の安否が心配なのは分かるけど
だからってそれまでにした悪事が許されるのかって
根本さんが「私の中の正義の話」と書かれていますが
こういう世論の風向きで善悪が揺らぐことってよくあります。
個人的にはイブがここで弱さを見せてしまったのは
人間的ではあるんだけれども
彼女に失望した部分ではあります。

他のキャストだとこの店の社員役の福田は
元女子校の先生でしたが、
「中途半端な親切(?)」が負担になり
転職してきたのですが
人物的に興味深いところがあったので
もう1~2エピソード、あっても良かったかなぁって感じました。

話的に難しいことはなくて、場内も終始笑い声が渦巻いていました。
実はじゅんはドミニクが好きだったという大オチも
題名はここから来ているのか、と上手いなぁと思いました。
岸田國士戯曲賞とかを狙うような方向ではなく
今のような割と気軽に楽しめる方向で行ってもらいたいです。
余談ですが、終演後、ロビーに出演者の人たちが普通にいて
ちょっとびっくりしました。

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