音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

モア (ピンクフロイド/1969年)

2010-08-28 | ロック (プログレッシヴ)

ピンクフロイドは映画のサントラ盤を2枚製作している。その内の1枚がこれである。但し、この作品は、単に映画音楽とうのではなく、フロイド的にはこの作品と次の「ウマグマ」が、可なりこのバンドの歴史の中では重要な役割を担っていとも言える。

そもそも映画音楽というのは、メインは「映画」であり、音楽というのはその映画の脚色のひとつである(成り立ちはそうである)。しかし、音楽の長い歴史に比べると、映画の歴史はせいぜい100年。にも係わらず、どうして映画がメインで音楽は付随な役割なのかが、ずっと私の疑問であり、ジレンマだった。映画とは総合芸術だからという言い方も勿論できるが、それよりも、映画の変わりとして歴史を考えれば、短いスパンでは舞台芸術が上げられる。実際にオペラやバレエにおいては、芝居の部分も大事だが、音楽があって付随されるものであるし、バレエに至っては舞踊であるから、音楽がないと舞踊は始まらない。更に言えば、映画がヒットして音楽が当たるという構図よりも、音楽が当たったから映画もそれに連ねて動員に結びついたというケースが多いのではないか。特に、1970年代の後半は、「フェーム」、「フラッシュダンス」、「サタディナイト・フィーバー」、「グリース」、「フット・ルース」などは、勿論商業音楽としての新しい販売法のひとつではあったが、何れも、音楽単発でもヒットしたものばかりである。この「モア」という映画作品は、イラン出身の映画監督バーベット・シュローダーの処女作で、ルクセンブルクで製作された変わり種である。シュローダー監督といえばごく最近はMADMENテレビシリーズであるが、映画では「運命の逆転」、「ルーム・メイト」、近年は「パリ・ジュテーム」などの秀作もある。しかし、この「モア」という作品はヒットしなかったし、私もフロイドが音楽担当(というかサントラを出していた)から、後々DVDで観た(このDVDだってフロイドが音楽を担当しているから発売したようなものだ)のだが、麻薬あり、恋愛ありの青春ロードムービーであるが、なんとも特筆できるものはなにもない。というかあるとしたら、フロイドの音楽だけである。私もこの作品を映画音楽として聴いたことは殆どなく、フロイドの普通のラインナップである。冒頭に書いたが、この作品と次作の「ウマグマ」が重要な役割というのは、サントラという半ば「オーダー」受けた作品であるにも関わらず、フロイドが前作「神秘」で気づきあげたオリジナリティを殆ど逸脱していない。それだけはなく、映画音楽というある意味の良い緊張感が、新しいフロイドを模索していのも事実、要はオトが分かり易くなったということで、この経験は後々の名盤「おせっかい」や「狂気」に繋がっている。

この作品は、僅かの期間で製作・録音されたが、それは既にフロイドがライヴ演奏を重ねてストックしてあった曲があったということと、映画製作の関係で時間がかけられなかったという(一節には8日間と言われている)色々な条件が重なった。そういうプレッシャーに強いバンドであるという一面も見せたと言える。


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