音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

レット・ゴー (アヴリル・ラヴィーン/2002年)

2010-11-05 | ロック (ヨーロッパ・その他)


これは世界共通であるが、音楽界では10代で成功者になる人の確率が他の分野に比べるととても高い。10代というのは一般の人が普通の職業で大金を掴むなんていうことは殆どあり得ない。もっとも実力の世界といわれるスポーツ界にしても、例えばせいぜいテニスで世界大会の勝者になるとかでないと巨額マネーを手にすることはない。その他のプロスポーツでも20代前半で成功者のなる人は多いが、音楽界では更に若くてもチャンスが転がっているというのが現実であるが、当然、そのチャンスを掴む人な何年に一度、何億人にひとりという確率である。

このアヴリル・ラヴィーンはそんな選ばれた一人である。あのビートルズやマライヤ・キャリーですら、20歳を超えてから、また、マイケルはジャクソン・ファイヴ時代に、スティーヴィー・ワンダーも10代でヒット曲を出しているが、巨額マネーを得られる時代は1970年代に入ってからである。だが、アヴリルはこのスーパー・スターたちよりもずっと早く、若い頃から音楽活動を始めたことで、とても早い段階で成功者になってしまった。彼女は1984年にカナダのオンタリオ州でフランス系カナダ人として誕生。敬虔なパブテスマ(プロテスタント)教信者一家だったが、いち早く彼女の音楽的才能に気付いた母は、2歳の時から教会で彼女を自分と一緒にミサで聖歌隊として歌わせ、その歌声は評判であったという。14歳ですでに数々のオーディションを勝ち抜いていた彼女は、カナダ人で国民的かつ世界的な大スターだったシャイナ・トゥエインのコンサートツアーに参加するというチャンスに恵まれ、オタワのステージでシャイナの歌を披露したことが音楽界メジャーの注目を浴び、スターダムへの階段に立った。このアルバムは2002年、アヴリル17歳の時に発表したファースト・アルバムであったが、実は16歳のときにデビューアルバム発表の予定はあったが、彼女の類い稀な才能に必ず大スターへの確信を掴んだ関係者は、カナダやイギリスではなく、初版はいきなりアメリカでの発売を考えたために、若干発売が遅れたから、この作品の構想は既に16歳の時に出来上がっていたのであった。この作品には、ロック音楽をベースとしていながらも、オルタナティブや、グランジの要素が含まれており、それでいてポップで音がメジャーであるという今までの女性ヴォーカリストには前例の見られない部分が各国で大ヒットし、イギリスではアルバム第1位の最年少記録を更新した。カナダのアーティストのデビュー盤がアメリカとイギリスの両国でヒットするというケースも大変珍しく、アルバムは全世界で1600万枚売れるまさにメガヒットとなった。同時に音楽でなく、彼女の奇抜なメイクやファッションは同年代のカリスマ的存在になり、その生き方もクローズ・アップをされるなど時の人となった。そんな10代にして尾鰭が沢山ついてしまった彼女であったが、前述した音楽性に関しては、そもそもが教会で歌い、ポップスも経て、シャイナに付いたことでカントリーを歌えるという幅広い音楽経験が彼女のオリジナリティーを作り上げたという点で、商業音楽に歓迎されたのであろう。セカンド・アルバム以降も大ヒットしているが、現時点で26歳である彼女が今後、どんなミュージシャンになって行くのかは楽しみである一方、このまま音楽を続けられるのかという心配がない訳でもない。若くしてスーパースターになってしまった者には、必ずと言ってよい程、その代償が色々な形で現れるというのが、悲しいかなこの世界の宿命であるのだから。

日本でも超売れっ子のひとりである。日本で彼女が売れる理由は多分にイメージが先行してしまっている彼女の生き方なのだろうが、カントリー音楽を生ギター1本で歌っている彼女の本当の良さ、歌のうまさというのにも是非注目して、それでも彼女が格好良いと思うのなら、是非、ファッション・リーダーだろうがカリスマにだろうが認定して欲しい。この才能はもっと生かして欲しいと思うのが長いこと音楽ファンをやって来たひとりとしての願いである。


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