音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

弦楽四重奏曲第2番イ短調 (ヨハネス・ブラームス)

2010-03-07 | クラシック (室内音楽)


この楽曲は、作品番号でいうと弦楽四重奏曲第1番ハ長調と同じ、Op.51の2になっている。これは色々な意味でやはりベートーヴェンの弦楽四重奏曲を意識していると思われる。ベートーヴェンの初期弦楽四重奏曲である第1番から第6番までりの作品番号はいずれもOp.18で枝番で1から6になっている。また、同様に、所謂、ラズモフスキーと言われる第7番から第9番も同じ番号で、Op.59の枝番で、1から3になっている。この辺りの拘りに関しては全然分からないし、実は本人の意向ではなく出版社の都合なのかもしれない。ただ、興味があるのは、どうしてこういう分け方をするのだろうということだけだ。そこに法則性が無いとしたら、余計に音楽家としての意思を強く感じるのである。

特に、このブラームスの2曲に関しては、初演は第2番の方が先である。更に、同じ番号なのに全く対照的な作品になっている。第1番はかなりベートーヴェンに接近しているが、第2番は寧ろバッハに近く、対位法的に書かれているのが大きな特徴である。また、一般的に言われるようにのびのびとした楽想はシューベルト的であるという言い方も納得できる。さらにもうひとつ、第1楽章の冒頭の動機が重要で全曲を統一しているが、これは、かの親友、世紀のヴァイオリニスト・ヨアヒムのモットーでもあり、この楽曲では素直にその部分を取り入れている。第1楽章、第1主題の最初の4音、AFAEはヨアヒムのモットーFAE "Frei aber einsan 「自由にしかし孤独に」"の音名化である。第2楽章ではヴァイオリンが先行するが、気が着くとヴィオラとチェロが対位法になっている。第3楽章はメヌエットだが、ここではチェロの短いカノンが印象的である。そして、第4楽章のロンドもハンガリー色彩が出ていてとても良い旋律だ。ブラームスの音楽というのは面白いもので、最初に聴いた印象がすべてではない。正直、私は、この楽曲を聴いたタイミングが、ラズモフスキーの後であった。というか、私の弦楽四重奏曲とのつきあいは、最初にベートーヴェンの13番から入って、大フーガ。そのあと、ベートーヴェンの後期とモーツァルトのハイドン・セット、更にハイドンの名曲を一時期に立て続けに聴いた。そのあとで、ラズモフスキーとブラームスという順序だったら、やはりブラームスの曲はいずれも最初はとても地味に思えた。同じ室内音楽でも弦楽六重奏曲やヴァイオリン・ソナタのような抒情的な部分を感じなかったのは事実であるが、しかし、どうして、何度も何度も聴き込むと、これだけ細かく構成されているところに色々気づいて、さすがにブラームスだと思ってしまう。確かに最も影響された音楽家だから贔屓めにみてしまうのかもしれないが、バッハもベートーヴェンも、さらにはモーツァルトとシューベルトも知っているのだから、後出しジャンケンみたいなものかもしれない。

だが、やはり第3番はもっと凄い楽曲である。だから、その鑑賞に関してはもっとブラームスを知って、更には他の音楽家の書いた弦楽四重奏曲ももっとちゃんと聴いてから書きたいと思う。交響曲第4番同様、弦楽四重奏曲第3番はこの時代のヨーロッパ音楽の集大成且つ最高傑作なのであるから。


こちらから試聴できます。



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