TSUNODAの経営・経済つれづれ草

身近な経営に関すること、経済に関することを思うままに

事業再生 -経営者なら諦めるな-を読む

2007-10-27 20:04:45 | 今週の一冊
八木宏之の著書「事業再生 -経営者なら諦めるな-」を読みました。今日はその感想を書きます。

 八木宏之氏は54万部売れた「借りたカネは返すな」の著者です。初めて八木氏の本を読みました。たいへん面白く読ませていただきました。納得したこと、勉強になったことを書いてみます。また、私は制度融資の担当をしていたのですがその時の感想等もふまえて書いてみたいと思います。

1 経営者は金融機関と対等に付き合え 
 日本人はまじめで義理堅いので債務超過に陥り、融資の返済が滞ると金融機関に申し訳ないと思ってしまいます。金融機関の言うことは絶対であり、逆らうと融資を打ち切られるてしまうと考えてしまいます。著者はそんなことを考える必要はない、「金融機関が上で、自分は下」という意識は捨ててくださいと考えます。
 確かに私達は、金融機関からお金を借りる時は、卑屈になっています。しかし、金融機関にとって融資はビジネスです。ビジネスならば債権者と債務者は契約のもとに平等であるはずと著者は言います。借り手責任があるのと同様に、貸し手責任もあって当然で堂々と交渉すればよいと書かれています。バブル期のときに審査もろくにせず融資を積極的に斡旋して、バブルがはじけると貸し剥がしをしてきた金融機関にも貸して責任があると書かれています。
 経営者は、業績が悪くなったら「助けてください」と頼むのでなく「この方法で再生したい」と前向きな計画書を持って正々堂々と金融機関と交渉すればよいという主張は納得です。私も融資担当の時に感じたのですが、経営者の方は融資となるしゃべりかたも丁寧になりました。金融機関との協調融資の制度融資案件では金融機関は「信用保証協会」の保証付ならば融資するという安全策しかとらない業種なのだと思いました。
 担保主義でないしっかりとした審査能力を持つ金融機関と事業目的を正々堂々と主張できる経営者の対等な関係が今後の経済の活性化に必要なことだと思いました。

2 連帯保証制度を見直す必要がある
 日本の連帯保証制度は世界でも特異な制度で、金融機関側が融資に対するリスクを負わないのは今の時代にあっていないと書かれています。著者は「連帯保証制度見直し協議会」を立ち上げこの制度の廃止を訴えているのは納得です。確かにこの連帯保証制度は問題が多いと私も思います。私が「小規模企業者等設備資金」という制度融資を担当していた時に融資を受けるためには、連帯保証人が融資要件でした。融資を申請する企業の方は、今時連帯保証人になってくれる人などいないと言われたことをおぼえています。借り手のみがリスクを負うこの制度は見直しの機運が高まっていると書かれています。昨年から信用保証協会の保証についても連帯保証がなくなったと記憶しています。

3 循環型経済が敗者復活の土壌をつくる
 「中小企業白書」によると、「もう一度起業したいか」との問いに対して、「はい」と答えた経営者は、アメリカでは72.3%、日本はわずか37%のデータが出ている、日本は一度事業に失敗すると、立ち直れないほどのダメージを受けてしまう国だと書かれています。著者はこれからの日本は、創業→成長→競争→優勝劣敗→淘汰→再編→(廃業)→整理→再生→成長という企業環境のリサイクルを想定内に置く必要があると主張しています。企業の寿命が近づいたら、何度も何度も生まれ変わればよい、そのサイクルこそが、日本経済を活性化させると。「事業再生」という本の題名の意味がここに書かれています。                
 
 企業と金融機関との対等な立場での事業展開、連帯保証人の問題、会社分割、事業譲渡、合併、新しい資金調達の方法、債務者主導の再生ファンドと書かれている内容は循環型経済のための手立てです。そして、「企業再生」はその循環型経済のキーであると著者は主張するために本の題名にしたのではないでしょうか。

 http://www.sodan.info/mail/
   ↑ 八木宏之氏のHPです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿