「ねえ
わたしを愛している?」
と あの人は何度も尋ねた
走る電車の窓辺で
日の当たらない部屋の窓辺で
戸田の漁港を見下ろす民宿の窓辺で
病室の窓辺でも
ぼくは「うん」と答えることが出来ず
そのたびに何かあいまいなことを言った
(なんと言ったかもう覚えていない)
あの人は哀しい思いをしたろう
「うん」と言うことに気後れしていただけではない
自分が本当にこの人を
愛していると言えるのかどうかわからなかった
だけではない
「アイシテイル」などという
そこらに飛びかっている
どうとも解釈できる決まり言葉でなく
自分のその人に対する気持ちを
愛かどうかはわからないが鮮烈な気持ちを
どうすれば正確に伝えることが出来るのか
分からなかったのでもある
もう40年余も昔の話だ
あの部屋もあの漁港もあの病室も
もう辿り着くことはできないが
電車は同じ線を今も走る
窓から見える風景は違っていても
わたしを愛している?」
と あの人は何度も尋ねた
走る電車の窓辺で
日の当たらない部屋の窓辺で
戸田の漁港を見下ろす民宿の窓辺で
病室の窓辺でも
ぼくは「うん」と答えることが出来ず
そのたびに何かあいまいなことを言った
(なんと言ったかもう覚えていない)
あの人は哀しい思いをしたろう
「うん」と言うことに気後れしていただけではない
自分が本当にこの人を
愛していると言えるのかどうかわからなかった
だけではない
「アイシテイル」などという
そこらに飛びかっている
どうとも解釈できる決まり言葉でなく
自分のその人に対する気持ちを
愛かどうかはわからないが鮮烈な気持ちを
どうすれば正確に伝えることが出来るのか
分からなかったのでもある
もう40年余も昔の話だ
あの部屋もあの漁港もあの病室も
もう辿り着くことはできないが
電車は同じ線を今も走る
窓から見える風景は違っていても