東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

はだしのゲン わたしの遺書

2013年04月25日 | インポート
0408 どこの学校の図書館にもある  「はだしのゲン」。子どもたちにも人気のある漫画であり、被爆体験をリアルに語り継ぐことのできる教材でもある。
 かつて中沢さんを教育研究集会でお呼びしたとき、リアルな被爆体験と共に核心に満ちた天皇制批判に驚き、共感した記憶がある。
 昨年12月19日に亡くなった翌日に発行された著書(はだしのゲン わたしの遺書、中沢啓治著、朝日学生出版)は、中沢さんに取材し構成したものだが、まさに遺書である。
 「はだしのゲン」は、教育評論で第2部が発表され続けていたことを憶えている。少年ジャンプ(第一部:被曝から妹の死までの「原爆編」)の連載がオイルショックで連載できなくなり、第二部(看板屋での修業を経て東京に旅立つ「戦後編」)は、「市民」で1年、「文化評論」で3年半、そして「教育評論」3年半、連載を続けて完結したことを初めて知った。そして、第三部は、被曝者として差別を受けたり、東京大空襲の孤児たちとであって仲間になったりして、戦争の実態に迫っていき、漫画家のアシスタントになって本格的に絵の勉強をするためフランスに旅立つ。原発のたくさんあるフランスで絵描き仲間と原発問題を考える。というストーリーを構想していたが09年から視力が衰えて断念したことも、この遺書により知った。まだまだ、「はだしのゲン」を続けたかった中沢さんの無念を想う。
 DVDになっている、山田典吾監督の実写版、真崎衛監督のアニメ版、紀伊国屋書店がつくったドキュメンタリーなどの映像も、優れた教材になる。岩波ブックレットでも簡潔に中沢さんのメッセージが書かれていて子どもたちに読んでほしい作品だ。是非、授業でとりあげてほしい。
 中沢さんは、頼まれた色紙に「人類にとって最高の宝は平和です」と書き、座右の銘は「一寸先は、闇」だったそうだ。このギャップが彼の人生そのものを語っている。
 ふまれても、ふまれても、たくましく芽を出す麦が、もう一つのテーマであった「はだしのゲン」を、私の遺書と中沢さん言う。伝えたいことのすべてを込めたと言い切り、これからも読みつがれていくことを願って、この遺書は終わっている。