TMA講師代表:この日本という国家は、GDPでは世界で第3位であるから、人口が仮に8000万に縮小しても、高度な生産技術を発揮すれば、一人当たりのGDPでは、高い水準を保ちうると考えられる。今、74歳の目で、私を含む高齢者たちをみていると、特に知識人と言われた人たちの「試され済みの脳力」が、次世代に継承される必要のない「暗黙知」に寄りかかっていることが分かる。先進国の長老層に値しない暗部がめだつ。特にひどいのは、医療倫理、医療機器、薬品の許認可にかかわる学者、さらに憲法学者である。
私が蔑視するのは、高学歴、しかも、大学教授として通用してきた人文・社会科学系の長老たちである。老後に備え、第一に、哲学をゴールとすること、第二に、2つ以上の外国語の文献を、特に古典を深く読み込むこと、第三に、自分の趣味の世界に閉じこもらないで、地域社会の一員として社会的に生きること、この三つができていない高学歴老人が多いように思われる。私が敬愛するのは、理科系の学者たちである。きちんと個別研究から哲学の域にゴールし、外国語の能力、社会との接点を失っていない。それと、文系でもコンピューター・サイエンスとの相性を深めている学究たちならば、敬愛できる。SNSに流れる顧客のニーズを読み解き、大衆社会の流れに沿いながら、柔軟な思考を忘れない人たちである。
ここで、「試される次世代の日本人」というのは、何千万という外国からの移民、国際結婚、まさに多様性のなかに生きながら、血筋は複雑で違えども、日本列島に暮らす人々である。地球上で最初に朝を迎える「日の出の国」としての知的先進を保ちうるのか、それが試されている。自然に受け入れたアメリカ文化は、それなりに文化環境として残るとしても、日本人としてのこだわり、美意識のような精神世界観をどこまで、日本語としても、外国語に翻訳するとしても、日本文化を輸出型へと転じる必要がある。それに、大きな答えを出してくれたのが、日本のアニメーション産業である。このようなソフト・パワーが、日本を守る最大の武器である。かといって、ハードな防衛装備を軽視してはバランスを失う。日本発、ここがポイントとなる。
実は、もう次世代の日本人は、すでに日本発の力で、22世紀の人類世界を切り取っている。後は、アニメに加え、医薬工の産業経営力を高め、日本が人類にとり最高の病院国家としての拠点になることだ。これを妨げているのが、医療にかかわる生命倫理の学者、旧世代の個別人権主義的な生命観である。治療用の医療器具にたいする「岩盤規制」である。熊本地震で、ようやく液体ミルクへの国の規制を緩和する動きが出たそうだ(「読売新聞」2016.10.16)。
以上、次世代の日本人を代表するTSSの田中淳社長の、富山大学工学部での講演を傍聴した感想である。田中社長の講義とメールを私流に翻訳し、少し枝葉をつけ加えてみた。工学、医学、薬学、経営学のコラボが、大きな武器となる時代だと思われる。