TMA講師代表の個人研究:
島根県立大学の北東アジア研究センターから、NEAR News No.50を戴きました。副所長の福原裕二先生は、朝鮮社会科学院への交流訪問を兼ねて、国内視察の旅行をされたそうです。本年6月7日からの数週間の滞在のようだ。もともと同国との関係があり、島根県立大学の朝鮮人の研究スタッフを帯同させた旅なので、先方が不都合な見学先は、当初から除外されている。だから、先方の対外宣伝の利用された面も無きにしも有らずである。とはいえ、そこは学者という第3者の眼で、主に写真撮影とヒアリングをされたので、北朝鮮の空気の一部は言外に伝わってくる。
朝鮮労働党の暴君による暴政により、朝鮮社会は大停滞のように思われる。が、社会規律が守られ、中国官僚のようにモラル・ハザードに陥るという危機的な状況にはない、という。しかも、中国から、粗悪な古古米も古古米、家畜の飼料のようなコメを比較的に高価に売りつけた「関係」も暴露されている。経済の一番のネックは、石油にあることがきちんと実証されている。中国が石油の輸出を完全に零にしたら、・・・という制裁は、民用の交通から順に軍用の輸送へと経済を麻痺させるに違いない。国際社会の経済制裁の圧力が高まれば、中国の対朝貿易の商社、つまり中国籍朝鮮族には、粗悪品を安く仕入れ、高価に売りつける条件が拡大する。福原先生は上品なので、中国の国籍をもつ朝鮮族と、朝鮮労働党との貿易関係の特殊な癒着には言及されていない。朝鮮国籍をもち、ヨーロッパで活動する朝鮮人ビジネスマンとの飛行機の機内での会話を紹介され、北朝鮮の経済の可能性を楽観されている。これも、深読みが足りない気がする。とはいえ、朝鮮社会の内部で、下からの内乱が起こったり、あるいは、頂点の暗殺を期待するようでは、北朝鮮社会の現実には迫ることができない。
経済制裁は、朝鮮族の内部で、外部に暮らし、貿易の旨みのある勢力と、国内の特権階級の特権の特殊価値を更に高め、市場経済原理が公平化された形で機能しない方向へとアクセルを踏みこんでいることになる。中国にたいしても、朝鮮への経済制裁の強化を外交カードとして取引材料にされ、日本側にはマイナスに作用している。国内外からの閉鎖経済の制度を強化するだけでは、脳のない話である。この点だけは、福原先生の文章の裏の意味がくみ取れる。