朝9時半ごろに「ニャーニャー」と猫の鳴き声がする。
外では、女の声で「あ、子猫がいるーう」と・・。
通りすがりの女だったんだろうが、猫の大きな鳴き声は止まない。
「ううー?」とはっきり目が覚めた俺は、小雨の中外へ出ると、
家と家のスキマに、捨て猫がいた。
子猫というよりは、少し成長してはいるが、まだ大人の猫ではない。
呼んでみると、警戒しながらも、すぐに「ニャー」とスリ寄って来た。
まさか、こんな雨の日に猫を捨てるとは・・・。
飼い猫だったんだろう、人を怖がるどころか助けを求めている。
さわってみると、ブルブル震えているのがわかった。凍えていた。
しょうがないなとは思いながら、部屋に抱いて戻り、ミルクを与えた。
やっぱりお腹を空かしていたんだろう、飲みっぷりがハンパナイ。
膝に乗せて温めてやっても、なかなか震えが止まらない。
近くのコンビニに「猫缶」を買いに出ようとすると、離された瞬間に大声で鳴き始めた。
なにはともあれ置いといて、買って来た猫缶を与えると、ガツガツと一心不乱にがっつき始めた。
そして、食べた後も、人がいないと気づくと、すぐに鳴いて探し始めるのだった。
きっと、捨てられたことがトラウマになっているのかな・・。
ノミもシラミもいないようで痒みはなく、毛並みも汚れてはおらずとてもきれいだ。
捨てられて1日かそこらしか経っていないようだ。
まさか、迷子になって?とは思ったが、首輪がないのでやはり飼い主はいないのだ。
食うだけ食った後、濡れタオルで体を拭いて、思い切ってコタツに入れると、
ようやく安心したのか、ぐっすり眠り込んでしまった。
それでも、俺がトイレに行くと、追っかけてきて、ドアの外でニャーニャー探している。
用を足しながら「わかった、ここにいるから」「泣くな」と声をかける。
よっぽど一人(一匹)にされるのが怖いのだろうなあ・・。
さて、一夜の宿を貸そうとは思っているが、このアパートでは猫は飼えない。
実は、以前、3代飼ったことはあったが、結局クレームが出て放つことになった。
クレームをつけた1階の老夫婦も猫を飼っていた過去があるのだが・・。
まあ、そういうわけで、うちで面倒を見ることはできない。
とりあえず、腹を満たしてやり、体を温め、眠れる場所を提供してあげた。それだけだ。
この猫は、メスである。
元の飼い主は、そこそこ大きくなってきたこのメスが子猫を生むのを嫌い、
避妊手術をすることもなく、野外に放り出したわけだ・・・。
様々な事情があるのだろうが、仮住まいとペットは難しい問題だ。
今は、コタツのそばで眠りについている。
当然だが、名前はつけない・・・。
猫は大好きだし、事情が許せば、飼いたいのはヤマヤマなのだが、そうはいかないのだ。
信心深く心優しい年配の方達がよく通る寺を知っているので、そこに放とうと思う。
あれ・・これを書いてたら「ニャー」と呼んでいる。ああ・・また食べるのね(笑)
今、廊下で、2個目の猫缶を食べている・・・よく食べるなあ・・・。
あ、完食したんだ・・・食べたらまたコタツに入るんだ・・・そうざますか・・。