黒澤明監督「影武者」を久し振りに見たが、
クライマックスシーンには、鳥肌が立った。
昔はそうも感じなかった映像に、ゾッとするような悲壮美を感じたのだ。
監督70歳の作品だから、脂の乗り切ったという感はないが、
それでも、この映画の格調高さ、悲壮美はどうだ!!
武田の騎馬武者隊は、戦国の雄、勇壮な美しさを誇っていた無敵の軍団だったが、
それが、信玄の死によって、息子勝頼が愚将だったゆえに、あえなく滅んでいく・・。
信長の繰り出した鉄砲隊によって、騎馬武者隊の時代が終るのだ・・・。
この映画に関しては、勝新太郎が抜擢されるはずだったそうだが、
2人が決裂したために、実現しなかったのはあまりにも痛い。
もし実現していれば、本当に面白さも含めて傑作になったかもしれない。
仲代達矢はすばらしい名優だが、信玄のイメージにはやはり合わない。
あと、どんなに優れた組織があろうと、トップが能無しであれば、
その組織は長く持たない・・・そう痛感させられた映画でもあった。
戦国武将として超一流であった信玄あっての無敵騎馬軍団だったのだ。
いつの時代も、トップに立つ人物の器次第で、その組織の運命が決するのだ。
また、一人の「弓引き」としても、いろいろ考えさせられた。
人を殺傷したければ、銃を使えば足りるのであって、
現代における武道の役目は、やはり、人を生かす道にあるのである。
黒澤映画を、最近また見直しているが、本当に底が深くて驚かされる。