2017年にワールドシリーズを制したのはヒューストン・アストロズ。
このチームは、シーズン100敗以上を3年繰り返すような最低のチームだった。
なぜ彼らが、世界一になったのか?
チームを立て直したのはアストロズのGMジェフ・ルーナウの戦略にある。
彼は、まず、下位球団から選手を指名できるというドラフトを活かして、チームの若返りを図り、
資金力がない分、数学者、物理学者、統計学者やコンピューターの専門家という野球以外のスタッフを集めた。
このオタク集団とも呼ばれるこの専門家達で新しい「モニタリングシステム」を作り出した。
いたるところにビデオカメラを設置して、選手達の最高のパフォーマンスが出せるよう解析を行ったのだ。
ここでわかった事は、ボールを打つ角度が8°から50°の間が最もホームランが出る角度だということで、
バッターにボールのやや下を叩き、フライを打つようにまず練習、全員に徹底させた。
すると、この打法によって選手たちの長打力が飛躍的に伸び、
腰を開かず重心を後ろに残した打ち方によってさらにホームランが出るようになる。
これは、日本でも、王、落合や松井などの長距離打者がやっていることだが、それをチーム全体に徹底させた。
さらに、三振が多かった打線(ワースト4位)の欠点を補うような対策も取る。
選手に意識革命を行い、(徹底して低めを捨てる:個人的な推測)「我慢」を強いた。
どうしても三振が減らない打者は見限って放出し、三振の少ない選手を獲得する。
これによって、「三振が少なく長打力もある打線」が完成していった。
メジャーが呼ぶこの「フライボール革命」は、やがて他球団も追随して行ったそうだが、
アストロズは、驚くことに、この打法の欠点をつく投手陣をすでに揃えていた。
最もホームランを打たれない球種は何か?
それはカーブ。
カーブの被本塁打率は、1.3パーセントで最も低いというデータを得ていた。
そこで、なんと、アストロズは、鋭いカーブを投げられる投手陣を既にそろえていたというのだ。
あるいは、もしかしたら、鋭いカーブを習得させたのかもしれない。
このカーブによって、ワールドシリーズでは、相手チームの主力を抑え込んでしまう。
こういった戦略によって、アストロズは全米一に輝いたのだった。
限られた厳しい条件の中で、先を読んだチーム戦略を立て、
選手たちに徹底したことが世界一になれた理由である。
番組を見ていて、このGMの手腕に思わずうなってしまった。
元々経営コンサルタントだったそうだが、全くたいしたものである。