包丁のトギノン ブログ

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「本刃付け」のはじまり?

2015-07-29 | 包丁の切れ味考察
「本刃付け」のはじまり

当ブログで本刃付けについて何度か書き記した後、各刃物屋さんで「本刃付け」の商品が結構出回ってきました。
今回は本刃付けとはどのような形で始まったか?など記したいと思います。

ハッキリ言います!
「本刃付け」の刃物は最初からはありません。

!!!

なんだ、そりゃ~。と思われるかもしれませんが、これもまた一つの事実です。
なぜそうなのかは順を追って記します。

もともと本刃付けの刃物は販売されていません。
というよりも、初期設定で無いというのが正しいかな。
以前、-本刃付けについて1-で、

”「本刃付け」とは何なのか?上手く表現できませんが、それは…
包丁の刃先を鋭く研ぎ上げること。
本気印の刃付け?勝負刃付け?のこと。”

と記しました。
本刃付けは特殊な刃付けなんです。
万人受けするわけではなく、ある一定の用途とスキルをお持ちの方にしか意味が無いものなので、一般市場には出回って無いんです。
どこにあるかって?
それには、本刃付けの始まりを考えて見ましょう。
一般的に販売される刃物は「量産型(標準型)」といえばよいでしょうか。
これを購入した板前さんや料理人の方が、自分好みの鋭いスペックに調整加工(チューニング)して使っていた。
これが「本刃付け」の始まりなのかなと。

でも量産型の刃物を自分好みにチューニングするには結構手間がかかるものです。
だから、御贔屓の使用者の代わりに刃物屋さんがある程度までチューニングして..「本刃付け品」として販売するようになった。
これならすぐに自分好みの刃付けに出来る。またはプロの使用用途にそのまま使えたりするものもあり、即戦力として重宝された。

というわけで、一般市場に出回っていなかった理由をご理解いただけましたか?

上記の理由から、1点物や特注の刃物を除き、最初から本刃付け加工された刃物はありません。
しかしながら、昨今は本刃付けの刃物の鋭い切れ味を求めるお客様が増えてきました。
それに対応すべく、各刃物会社、問屋、金物屋などが量産型をチューニングし最初から本刃付けの刃物を販売するようになったのです。

以下のものは他社の包丁なので銘は伏せますが、お客様よりご依頼があり本刃付けをおこないました。
比較しやすいように刃を向かい合わせるため、右利き用と左利き用の和包丁を並べました。
右用の物が本刃付け品です。左用が量産品というか標準刃付け品。
写真では上手く写らないので申し訳ありませんが、刃先の角度や艶が違って見えるでしょうか?




チューニング前後を見比べてください。
刃先を鋭くするために刃肉を取り、理想的な刃の厚みを実現するように均一化すると、このように研ぎ跡が出ます。



この研ぎ跡は見栄えは少々悪く思えますが、切れ味は抜群です。
本刃付けを理解していない知らない方は「なんだこの中古品みたいなの。」といわれますが、このような研ぎ跡が出るものこそ本物の「本刃付け」といえます。
切れ味を追求し刃先のことを熟考し「刃付け職人が1つ1つ手作業」で研ぎ上げた証なのです。
元々の刃物の形状やお客様の求める本刃付けの形状によって異なることもありますが、大なり小なり研ぎ跡が出るものこそ本物かなと。

1点物や特注の刃物を除き、研ぎ跡がない刃物で本刃付け品と謳う「ナンチャッテ」商品も最近は多いようですのでご購入の際にはお気をつけてください。
これも本刃付けが人気上昇している故の弊害なのかもしれませんね。
それでも、気になったらご購入店舗へどこが本刃付け商品とそうでないのと違うのか聞いてみては如何でしょうか?
貴方が納得できる説明をしていただける店舗様なら安心してお買い求めできます。
そうでないところは...。

それではまた。
以下の過去記事もご参考いただければ幸いです。

-本刃付けについて1-
-本刃付けについて2- 
-本刃付けについて3- 


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