包丁のトギノン ブログ

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-本刃付けについて3-

2009-08-18 | 包丁の切れ味考察
-本刃付けについて3-

本刃付け、その3です。
前回は補足説明として、刀身を研ぎ上げる「刃肉取り」という作業についてお話ししました。
今回は刃先の刃角についてお話ししようかと思います。

まず、前回ご説明した刃肉取り作業を行った包丁からどのように刃角を決めるか?
下図をごらんください。3つの例によるパターンにてご説明します。


①は先端の刃先の刃角は変わらず角度によって出る角?を直線的にそぎ落として刃角後半?の角度を滑らかにしたもの。
これだけで食材への食い込みがかなり違い、切れ味も向上。

②は図ではわかりにくいのですが貝を合わせた様な形状...そう、蛤刃(はまぐりは)です。
刃先は鋭く身厚を保てる刃付けとなっています。刃肉取り作業を行った刀身に見られる刃角後半?の角を丸くするように研ぎ上げる。
刃こぼれしにくい刃付けです。刃先から刃角後半にかけて緩やかにラウンドしていますので、食材に刃が食い込んでもひかかりにくい。キュウリなどを切ったとき刀身にへばりつかず切り離れがよい。刃持ちはよいが、一発の切れ味は他の刃付けにやや劣るか?

③は刃先の角度を鋭角にそぎ落とした物。図の中では抜群の切れ味を誇るが刃かけなどを起こしやすく切れ味の持続性は少々劣る。

本刃付けとしては上記図のどれもが正解だと私は思います。
以前も申し上げたとおり、包丁の形状・使用されるシーンなど考慮した適材適所なのです。
また、包丁メーカーによって上記以外の形状も考えられますし、それらは全て個性というか特長というか...企業秘密的な部位でもあるわけです。
究極の刃付けはお客様が、どのような食材を切るのか?どのような使用方法なのか?包丁を使いこなす腕?スキル?などを業者に伝える事によって初めて実現できると言っても過言では無いでしょう。
だって、産毛などを剃るカミソリと骨切りナタなど硬い物を切る刃物が同じ刃付けで良いはずがありませんから。

さらに、下図をご覧下さい。

一般のお客様にお話しするとあまり知られていないので驚かれますが、両刃の刃物も右利き用、左利き用の刃付けがあります。
一般的に市中に出回っている両刃の包丁は「右利き用」の刃付けとなっています。
左利きで上手く切れないとお悩みのお客様!実は、その刃付け貴方に合っていないのです。
刃角の取り幅は上記の図以外に6:4~8:2までメーカー・包丁の特性などによって様々です。
これらの要因も本刃付け加工にはかなり影響を及びますので、先に説明した刃角の様に単純な話では無くなるのは明白です。
本刃付けとは、切れ味にこだわる日本人ならではの加工方法なのです。

全てだとは言いませんが、安価な海外製品がそこまで考慮して作られていると私は感じません。
良い悪いではなく、そこには文化の違いから来る差があるのです。
日本の刃物は日本の料理を作るのに適した刃付けとなっています。だから、欧米などの国は日本食ブームによって日本の包丁ブームが起きていると言われています。
食は生きてゆくうえでの基本です。もっと日本の包丁の素晴らしさを知っていただきたいと思います。
そこには必ず、海外製ではマネできないノウハウや匠の技術があります。「見た目のカタチ」の違いにない何か?は確かに存在します。