包丁のトギノン ブログ

トギノン販売有限会社 包丁の製造販売店のブログです

日本刀のサヤと柄(つか)

2010-06-30 | 包丁について(総合)
前々回は日本刀の目釘(めくぎ)について小話をしました。
現代においては、日本刀に詳しいマニアックな人以外は知らなかったのではないかと思います。
そこで柄とサヤの小話を1つ。

今一度、日本刀の姿を思い浮かべてください。
大きく分けて2種類の外観が浮かんでくるのではないでしょうか?

1つは戦国武将が腰に差している塗りサヤに柄巻きの施した日本刀。
もう一つは白サヤ(木がむき出しのもので抜いていないときは棒状に見えるモノ)に収まった刀。

簡単に言いますと違いは塗りサヤ・柄巻きのものは戦の本番仕様?
白サヤは持ち運び・刀の休息サヤ?(別名:安めサヤともいいます。高い安いのヤスイではなく、「やすらか」の方の意味)
という感じですか。

なぜ、柄やサヤの仕様でこの様な違いが生まれるのか?
それは...

戦でヘビーな使用となると白サヤでは柄の強度が足りず割れてしまう事があったからだそうです。
対して、塗りサヤ・柄巻きのものは柄が割れそうになっても柄にしっかり組紐が巻き付けてあり、その下には滑り止めの鮫皮を巻くなど強度を上げる役目を果たしていました。それらは実践で汗や血糊が付いても滑りにくく良いとされていたのです。


では、白サヤのメリットは何でしょうか?
装飾がされていない分価格は安かったでしょうし、また通気性が良かったことも錆びやすい刀の保存に適していたのです。
抜かない刀を塗りサヤで保存では通気性が悪くすぐ錆びてしまう。
戦などで頻繁に刀を抜くのであれば塗りサヤでもOK。むしろ雨などが降ってもサヤにしみこまない、変形しにくいなどが利点でしょうか。
外出用が塗りサヤ、保管・お手入れ時用?が白サヤという具合ですね。

刀とサヤにはいろいろなことわざや格言・いわれなどが多くあります。
代表的なのは...
「反りがあわない」
刀は刀匠の意図や好みにより反りが個々に違います。刀を納めるサヤは専用品なのです。刀身とサヤの反り具合などが合わないと収納できない。つまり、相性が合わないという意味です。

「元のサヤにおさまる」
仲違いしていた人が、結局の所...座りが良い・ぴたりとフィットするということで元の場所(人)におさまることを言います。

この様に刀とサヤは切っても切れない関係なのです。
日本刀は刀身の切れ味ばかりに目がいきがちですが、脇を固めるサヤや柄、鍔などに目を向けるとおもしろいですよ。

それでは、また。