包丁のトギノン ブログ

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-割り込み材について1-

2011-08-30 | 包丁・刃物の鋼材について
-割り込み材について1-

前回、告知しました鋼材について記したいと思います。

今回のテーマは「割り込み材」についてです。
■割り込み材(ワリコミザイ)
 ハガネとそれ以外の金属で多層鋼やサンドイッチ形態をしているもののこと。
 クラッド材(包み込むの意味)とも呼ばれる。

鋼材の中心(刃先に当たる部位)に全鋼(ゼンコウ:刃部全て日本鋼で製作された刃物)とおなじハガネ材を使用し切れ味を確保。
その上、両側?にあたる部位には錆びにくい鋼材を使用し「折れ」「サビ」を防止。という鋼材なのです。
うまく説明できないから、下図をご覧ください。
全鋼と割り込み材の比較図


家庭用刃物には使い勝手の良い割り込み材が重宝されてきました。
しかし、近年は割り込み材も進化してきており中心の心材にSKや白紙などの日本鋼以外のものを使用するものが出てきました。
なぜ、そのようになったかというと上の図の割り込み材をご覧ください。色の違う部位ハガネのだけが他の部位と比べ異常に錆びたり欠けたりするからです。
もちろん、全鋼は全ての面が錆びやすいです。

近年は、日本鋼並に炭素が含まれたステンレス系鋼材が開発されています。

以前お話したとおり失われたダマスカス鋼を現代の技術で再現しようとした際、ステンレス鋼が誕生したと記しました。
誕生した際のステンレス鋼は、文字通り「錆びない」を主として開発されたため炭素含有率が少なく刃物に使用した際の切れ味はいまいちでした。

しかし各方面の学者や鋼材メーカーの努力により、ステンレス鋼でも切れ味の良いものが出来てきています。
切れ味が遜色なく耐久性もすぐれたV金や粉末系、10Aや440C、など日本鋼よりは錆びにくく欠け難い切れ味の良いステンレス系鋼材の合金が誕生したのです。
(これは高炭素の鋼をつくりさらに「バナジュウム」や「コバルト」、「モリブデン」、「クローム」などをうまく配合?添加?ドーピング?して特性を上げることで生まれたのです。ちなみに青紙系の鋼材は日本鋼の白紙をベースに調整元素を添加したセミステンレス鋼である。)

正直、一発の切れ味は日本鋼に劣りますが、一般的な日々の使い勝手や耐久性を考慮すると日本鋼に勝ると私は考えております。
それでも日本鋼が優れているとお考えの人は一発の切れ味を大切にする方で、毎日それも触れたつど研ぎ直したり、メンテナンスの手間を惜しまない方だと思います。
車にたとえると
日本鋼は F1のマシン(レース用でサーキット専用車)
高炭素のステンレス鋼は スーパーカー(高性能だが市販車)
といったところでしょうか。
多少大げさな表現だと思いますが、切れ味やメンテナンス、使い勝手からいうとレース用と市販車のたとえ...想像に難しくありませんね。
上記の内容からもお察しのとおりステンレス系でも切れ味の良いものは、高炭素鋼であるから日本鋼よりはましという程度で、ホント錆びやすいんですよ。
でも本当は、お使いになるシーンやメンテナンスをどれだけ行うか?また使用者のテクニックまでもを考慮するような限定目的ならに日本鋼もあり。むしろそれしかない!とう場面もあります。

次回はそんなステンレス系鋼材を使用したものや従来の日本鋼を使用した「割り込み材」の構成?作り方を図を交えてお伝えしたいと思います。