包丁のトギノン ブログ

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包丁の研ぎ方(実践編)1

2016-08-25 | 包丁について(総合)
前回、伝えきれなかった両刃包丁の研ぎ方のコツです。

前回は包丁の研ぎ方を大雑把ですがお伝えしました。
また、様々な研ぎ方の動画がネット上にありますから具体的なやり方はそちらを参考にされるとよいでしょう。
今回はそれらであまり伝え切れていないコツ?をお伝えできたらと思います。

私は趣味の一つに釣りがあります。
釣りといえば、針。
この針先がナメてしまった時や掛りが甘いときに針を研ぎます。
ただこれが、先端を細くするだけでは刺さりが悪く駄目なんですよね。
それは何だと言うと...研ぐ方向というものがあるんです。
研ぐ方向(研ぎ跡の向き)が悪いとまったくもってしっくりしません。
なんで、こんな話をしたかというと...
包丁などの刃物も研ぐ方向(研ぎ跡の向き)が切れ味(鋭さ)に左右されるから。

そこで、以下の点をご注意いただきたい。
1.
切れる刃を付けるためには「カエリ(刃がえり)」が必要であることを前回お伝えしました。
カエリをきれいに出すためには、研ぎ方向というものがあります。
利き手にあったカエリを出すためには一方方向へ研ぐ必要があります。
往復ではありません。
ミネの方向へ10の力で押すとしたら、刃先方向へは1~3までの力で引いて研ぎます。
往復運動で均等5:5に力をかけてゴシゴシ研ぐと、刃先が細く・薄くなってもカエリが出にくく研ぎ跡方向が安定しない。
思ったほど切れ味が良くありませんし、永切れも望めないでしょう。

■刃表の研ぎ

■刃裏の研ぎ
※画像上方向へ「押して研ぐ」、「引きは力を入れないように」しましょう。前後均等にしないことで刃角が安定します。

また、包丁には「刃表」「刃裏」というものがあり、これは右利きの方と左利きの方では方向が違います。
以前にもお伝えしたかと思いますが、例え両刃の刃物でも人が使う以上右利き用、左利き用の刃付けがあります。
このあたりを誤るときれいに刃がついても使い心地が悪かったり、うまく切れなかったりするなどの弊害が出ます。

それらを踏まえてですが、まず、必ず利き手にあった「刃表」のほうから研ぎましょう。
理由はカエリが出る方向です。刃表から研ぐとカエリは刃裏のほうへ出ます。
それを刃裏のほうから、さらにカエリが薄くなるように研ぐ。
また、刃表からカエリを薄くするように研ぐ。
刃裏からカエリを薄く...と繰り返します。
刃先は利き手や好みに合った6:4や8:2などに研ぐことも必要になってきます。

※右利きの人の刃表・刃裏です。押し研ぎで、矢印のほうへカエリを出します。
※左利きの方は表・裏が左右逆になります。

2.
カエリが極限まで薄くなり、指で触れると「パラパラ」と薄氷みたいに落ちるくらいになったら、刃裏をぴたりと砥石に当てて刃物の刃先からミネ方向へごく僅かに軽く触れる程度の力で1~2回研ぎましょう。
そしてフキンなどで構いませんが、刃を馴らしましょう。
これで研ぎは完成。

でも、実を言うとこれは正攻法ともいうべき研ぎがうまい方のやり方。
研ぎの上手い方や慣れている方はこれで刃が立つ。
初心者の方やステンレス鋼などの粘りのある鋼材刃物の場合は少し違います。

つづく。