包丁のトギノン ブログ

トギノン販売有限会社 包丁の製造販売店のブログです

両刃の刃物について

2012-06-27 | 包丁の切れ味考察
両刃の刃物について

以前、切れ味考察の本刃付け編でもお伝えしたかと思いますが
実は...両刃の刃物には「右利き用」、「左利き用」の刃があります。

なぜ、以前お伝えしたことを改めて書き記すか?
それは、両刃の刃物が右利き、左利きオールマイティに使えるから
左利きの人も両刃を買っとけ!
みたいなあまりにも無責任で知識やノウハウのない包丁・刃物販売店が多いことに驚いたからです。
こんな事書くと業界から目をつけられるかもしれませんが、包丁選びの目安として一知識として知っていただくことがお客様の利益に繋がると思ったから書きます。


一般のお客様にお話しするとあまり知られていないので驚かれますが、両刃の刃物も「右利き用」、「左利き用」の刃付けがあります。
一般的に市中に出回っている両刃の包丁は「右利き用」の刃付けとなっています。
両刃なのに左利きで上手く切れないとお悩みのお客様!
実は、その刃付け貴方に合っていなかったのです。

アバウトな図ですが下図をご覧ください。


なぜ、このような刃になるのか?
それは日本人特有の切り方にその秘密があります。
切り方については食文化の違いもあると以前お伝えしましたが、ここではそれは置いときましょう。
日本人は諸外国、特に欧米に比べ体も小さく力も小さい。
力のある欧米の人は刃物を斧(オノ)的な使い方をします。これで十分切れていました。(力が強いから)
日本人は日本刀、剃刀的な使い方。つまり「引き切り」を多用します。
これは刃渡りを上手く使い効率の良い力を使うことで切れ味を生む使用方法なのです。

実は、この引き切がキモです。
人は「押す力」より「引く力」のほうが大きな力をかけられるのです。(車のハンドルも押すより引いた方が楽に切れますって教習所でも習いませんでしたか?)
この刃物の引き切り動作は右利きの人、左利きの人とでは角度が違ってきます。
包丁を右手で握るか?左手で握るか?
真っ直ぐ狙ったラインで切りたい場合、上記の図で示した専用の刃角が必要なのです。
もし、人に3本目の手があり体の真ん中にあるか、機械にセットしギロチンのように切るののならば5:5の刃角でも良いでしょうが...手で握って使う道具である以上それは難しい。
また、人間工学的にも人は棒状のものを握るとやや手のひらが下を向いた「パーム」状になることがほとんどでは。
これは力の入れ易さ・骨格等と関係があります。
自然体で両手腕を前に差し出して下にダラリと下ろすと手のひらはやや内側・お尻側を向き、甲は斜め外を向きます。
そうです、「ハ(は)の字」形状です。これは、ゴルフや野球、剣道など棒状のものを握る動作に於いてもこの状態が自然体なのです。
この状態で真っ直ぐ狙ったラインに刃先を入れていくのには、右利き・左利きそれぞれに適した刃角が必要であり、同じではダメなのが想像できますよね。
(ここでいう刃角は厚い薄いの刃角でなく左右の取り幅のことです。)

このことからも、市中にある両刃の刃物(基本は右利き用で6:4~7:3ほどの刃角)が右・左利き兼用なんて紹介する業者には疑問を感じます。
勿論、刃角の取り方だけでなく他にも多くの要素はあり各業者のノウハウもありますが、このことを知らないと左利きの人が包丁を研ぐ場合も右利き用の刃にしたり、5:5のセンター刃にしてしまう危惧もあります。
これではせっかくいい道具をご使用になっていても良い結果が出ず損をしてしまいますよね。

左利きで真っ直ぐ切れないとか使いにくいとお悩みの方は最寄の金物屋、包丁屋さん、研ぎ屋さんにご相談ください。
私どものお客様でも、左利き専用の刃で切るとあまりの使いやすさで驚かれる方が非常に多いですよ。


-追伸-
弊社のWEBでも左利きの包丁を販売しております。
販売ページはこちらから→左利き用包丁

また、WEB販売店でご希望の包丁が見つからない場合ももお気軽にご相談ください。
私ども「包丁のトギノン」は製造から販売まで一貫して行っております。
製造元販売ならではのご提案が出来るかとも思います。

今後とも宜しくお願いします。