包丁のトギノン ブログ

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打ち刃物と鋼材会社の材料を使用した刃物 その5

2014-10-30 | 包丁・刃物の鋼材について
打ち刃物と鋼材会社の材料を使用した刃物 その5


前回は「鋼材会社の材料」の欠点というか弱点についてお話しました。
今回は良い点・優れたところです。
良い点としては、日本の製鋼会社は非常に優秀なんです。
それは各鋼材の構成成分をきっちり混ぜ合わせて、特殊な鋼材を作れる事。

例えば、日立金属の青紙1号。
以下の成分で作られています。
(公表されている成分表です。おそらく全てではないと思う。なぜなら混ぜ方や微妙な成分などは知らされていない。まぁ、そこが真似されないノウハウというか個々の鋼材会社の味付けなんだろうけど...何故って?詳しくは下記参照ください。)

C:カーボン 1.3~1.4%
Si:ケイ素 0.1~0.2%
Mn:マンガン 0.2~0.3%
P:リン 0.025%以下
S:硫黄 0.004%以下
Cr:クロム 0.3~0..5%
W:タングステン 1.5~2.0%
等を鉄に混ぜあわせています。

この成分をただ高炉の釜にいれ混ぜあわせるだけでは上手く均等に成分が行き渡りません。
ここをきっちりクリアできるからこそ日本のJIS規格に沿えるのです。
また、海外の製鋼会社を批判するわけではないのですが、日本のものと比べるとばらつきが多く感じられます。
何度か試しに使ったことはあり刃物の製造過程でも感じたのですが、味付けのレベルではありません。
これら成分表を参考に中国などではいわゆる「なんちゃって鋼材」が作られています。
同じような成分で安価なので飛びつき使い続ける刃物会社さんもありますが、刃物の製造中に錆びやすかったり欠けやすかったり脆かったりするので、安易に同等の鋼材料として使用するのは疑問を感じます。
当然製品になったあと使い続けても違いや不具合を感じることが出来るわけです。

なにが問題か?
感単に言うと1番問題なのは...成分が上手く混ざり合っていないのです。
さらに酷い時は含有されているはずの成分が抜かれていたり、入っていない成分が入っていたり、はたまた含有率が規格と大きく違っていたりすることもありますので、同等材料とならず問題が生じるのです。
日本の鋼材会社が長い年月試行錯誤し作り上げた鋼材。
それこそ成分表は出ていますが、混ぜる順番、温度、微妙な成分などは知らされていないのです。
すなわちそれは、そこに個々の会社が持つ「企業秘密」とも言うべき「隠し味」があるのです。
海外でもその点をよく理解している製造会社は、日本の特殊鋼材を輸入して使用しているようですよ。
まさにJAPANクオリティーのすごさが垣間見れますね。
様々な研究を元に今も尚、今までに無い新しい特殊鋼材が開発されており、またそれを安定供給させる技術の確立。
それこそが、「鋼材会社の材料」が優れた点ではないでしょうか?

(製鉄所の回転炉の様子)

それでは。