-熱処理加工について1-
包丁などの刃物(刃部)に使用する金属は必ず熱処理加工が施されています。
なぜ、こんなお話をするのかというと...
お客様から熱処理加工のご質問をお受けしましたが、誤解をなさっている事が多いのに気づいたからです。
そもそも、包丁などの刃物類はなぜ熱処理をするのでしょうか?
それは、以下のようなことが考えられます。
・昔は鋼を造るとき、金属の塊(インゴット等)がないため、鉄鉱石や砂鉄などを炉で溶かして素材となる金属の塊にする必要があったから(現代でもさほど変わらないが)
・熱して溶解した金属を型に流し込んで冷え固まるのを待つのが「鋳造」、それを更に溶解まで行かない程度に熱してモチの様になった所を叩いて鍛えるのが「鍛造」。よって鋳造より鍛造の方が安定した組織で硬い鋼材となる。
(熱した鉄を叩いて鍛えたりすることにより金属組織の均一化や脱酸素を行い硬い金属が造られるのがわかったから)
刃物は何かを切る物。
切るためには刃を薄くしなくてはならない。
薄くしても強度を保ち、耐摩耗性を上げるためには高硬度の金属が必要。
だから熱処理加工を施す。
また、熱処理加工で硬度を上げるためには素材に炭素が含まれていることが重要。
炭素の含有率が少ない鋼材は幾ら熱処理加工をしても、強度が増すことはない。
スプーンやフォーク、シンクなどに使われる金属はそこまで薄くしなくても良いので熱処理加工によって強度の増すことのないいわゆる軟鉄(炭素含有率がほとんどない鋼材)と呼ばれる物が使用され、俗に18-8や18-10と呼ばれる材料が市中には出回っている。
この18-8などの数値の意味は18クロ-ム+8ニッケルの材料だよということです。
よって、これらを研ぎ上げても刃は付くことは付くが、使用のたびに刃先が潰れていくのが感じられるほど刃持ちが悪くナマクラである。硬度を上げるための炭素がほとんど含まれておらず、ゆえに錆びることはまずない。刃物材として適さないのは明白である。
鋼の包丁は炭素が豊富なので錆びやすい。
ステンでも刃物用鋼材なら炭素含有率が高く錆びますが、ニッケルやクロームなどの錆を押さえる元素も多く含まれているので錆びにくくなっています。
あっ!?これって以前に鋼材ステンレス編でも書いたような気が...。
生活の中で強度を増すために炭素はいろいろな物に使用されている。
炭素繊維を母材とした樹脂?がカーボンシート。ゴルフクラブのシャフトや釣り竿、レーシングカーなどの外装や部品に使われていますね。あと、車のタイヤが黒いのは炭素がゴムに練り込まれているから等...。
探してみると結構身近にあるものです。
また、究極の炭素結晶?はダイヤモンドである。炭素が硬さに貢献しているのが何となく想像できますか?
気がついたことを書き記していたら話が脱線気味になってしまいました。申し訳ありません。
私がお話ししたかったことは、刃物に使われる金属はスプーンなどの軟鉄と違いステンでも錆びることがあると言うことと、強度と切れ味を増すために熱処理をしていると言うことなんです。
また、熱処理加工をしていない俗称「生鉄」と呼ばれる物と熱処理加工後の「焼鋼材」の硬度の差はHRC換算で2~3倍ほど違い、当然ですが加工後の方が硬くなります。
硬さは熱処理加工の技術や材質に含まれる炭素の含有率に左右されます。
金属はほとんどの物が同じ色をしているので材質の見分けが難しく、専門家でも一見してわかる人は少ないです。
この熱処理技術も目に見えない違いです。
そこにも必ず、海外製ではマネできないノウハウや匠の技術があります。「見た目のカタチ」の違いにない何か?は確かに存在します。
次回はそんな包丁の熱処理加工方法などを大まかに説明したいと思います。それでは。
包丁などの刃物(刃部)に使用する金属は必ず熱処理加工が施されています。
なぜ、こんなお話をするのかというと...
お客様から熱処理加工のご質問をお受けしましたが、誤解をなさっている事が多いのに気づいたからです。
そもそも、包丁などの刃物類はなぜ熱処理をするのでしょうか?
それは、以下のようなことが考えられます。
・昔は鋼を造るとき、金属の塊(インゴット等)がないため、鉄鉱石や砂鉄などを炉で溶かして素材となる金属の塊にする必要があったから(現代でもさほど変わらないが)
・熱して溶解した金属を型に流し込んで冷え固まるのを待つのが「鋳造」、それを更に溶解まで行かない程度に熱してモチの様になった所を叩いて鍛えるのが「鍛造」。よって鋳造より鍛造の方が安定した組織で硬い鋼材となる。
(熱した鉄を叩いて鍛えたりすることにより金属組織の均一化や脱酸素を行い硬い金属が造られるのがわかったから)
刃物は何かを切る物。
切るためには刃を薄くしなくてはならない。
薄くしても強度を保ち、耐摩耗性を上げるためには高硬度の金属が必要。
だから熱処理加工を施す。
また、熱処理加工で硬度を上げるためには素材に炭素が含まれていることが重要。
炭素の含有率が少ない鋼材は幾ら熱処理加工をしても、強度が増すことはない。
スプーンやフォーク、シンクなどに使われる金属はそこまで薄くしなくても良いので熱処理加工によって強度の増すことのないいわゆる軟鉄(炭素含有率がほとんどない鋼材)と呼ばれる物が使用され、俗に18-8や18-10と呼ばれる材料が市中には出回っている。
この18-8などの数値の意味は18クロ-ム+8ニッケルの材料だよということです。
よって、これらを研ぎ上げても刃は付くことは付くが、使用のたびに刃先が潰れていくのが感じられるほど刃持ちが悪くナマクラである。硬度を上げるための炭素がほとんど含まれておらず、ゆえに錆びることはまずない。刃物材として適さないのは明白である。
鋼の包丁は炭素が豊富なので錆びやすい。
ステンでも刃物用鋼材なら炭素含有率が高く錆びますが、ニッケルやクロームなどの錆を押さえる元素も多く含まれているので錆びにくくなっています。
あっ!?これって以前に鋼材ステンレス編でも書いたような気が...。
生活の中で強度を増すために炭素はいろいろな物に使用されている。
炭素繊維を母材とした樹脂?がカーボンシート。ゴルフクラブのシャフトや釣り竿、レーシングカーなどの外装や部品に使われていますね。あと、車のタイヤが黒いのは炭素がゴムに練り込まれているから等...。
探してみると結構身近にあるものです。
また、究極の炭素結晶?はダイヤモンドである。炭素が硬さに貢献しているのが何となく想像できますか?
気がついたことを書き記していたら話が脱線気味になってしまいました。申し訳ありません。
私がお話ししたかったことは、刃物に使われる金属はスプーンなどの軟鉄と違いステンでも錆びることがあると言うことと、強度と切れ味を増すために熱処理をしていると言うことなんです。
また、熱処理加工をしていない俗称「生鉄」と呼ばれる物と熱処理加工後の「焼鋼材」の硬度の差はHRC換算で2~3倍ほど違い、当然ですが加工後の方が硬くなります。
硬さは熱処理加工の技術や材質に含まれる炭素の含有率に左右されます。
金属はほとんどの物が同じ色をしているので材質の見分けが難しく、専門家でも一見してわかる人は少ないです。
この熱処理技術も目に見えない違いです。
そこにも必ず、海外製ではマネできないノウハウや匠の技術があります。「見た目のカタチ」の違いにない何か?は確かに存在します。
次回はそんな包丁の熱処理加工方法などを大まかに説明したいと思います。それでは。