包丁のトギノン ブログ

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ダマスカス鋼(積層鋼材)の構成について1

2015-02-25 | 包丁・刃物の鋼材について
ダマスカス鋼(積層鋼材)の構成について1

まだまだ、寒い日が続いていますが、夕方になるとだんだん日が長くなってきて春が近づいているのかなと感じます。

さて、今回はダマスカス鋼(積層鋼材)の構成についてお話したいと思います。
以前、このブログでも
■ダマスカス鋼について1
■ダマスカス鋼について2
でお伝えしたかと思いますが、一般的にダマスカス鋼と呼ばれ販売されているものは「積層鋼材」(クラッド鋼の一種)であります。
本物のダマスカス鋼もありますが、超貴重品のためコレクターが所有していたり、イギリス大英博物館に保存されているそうです。

つまり一般入手できるのはほぼ全てといって言いほど「積層鋼材」(クラッド鋼の一種)です。
※もちろん上記に当てはまらない特別で例外のものもあります。

今回はその「積層鋼材」(クラッド鋼の一種)の構成の違いをお伝えしたいと思います。
ダマスカス鋼の「紋様」を出すために積層鋼材を作りました。
それも複雑な紋様を出すために「多重積層化」しています。
16層、33層、65層など様々な多層鋼が鋼材が作られています。

例えば簡単に言うと一般的なニッケルダマスカス鋼と呼ばれる16層の構成はこんな感じです。

1.スチール  (炭素含有率が低くく熱処理硬化しない鋼材)
2.軟鉄   (炭素含有率が低くく熱処理硬化しない鋼材)
3.ニッケル鋼 (炭素含有率が低くく熱処理硬化しない鋼材)
4.軟鉄
5.ニッケル鋼
6.軟鉄
7.ニッケル鋼
8.炭素含有の高く熱処理硬化する鋼材 =「芯材」(V10やSUS440Cなど。安価なものは420系を使用か?)
9.ニッケル鋼
10.軟鉄

↓(上記の組み合わせの繰り返し)

15.軟鉄
16.スチール
これで16層。

ご理解いただけましたか?33や65層などもこの繰り返しです。
これは多層の芯材に炭素含有率の高い鋼材を使用し、それ以外は熱処理硬化のしない軟鉄やニッケル鋼を使用した「両刃刃物」用の鋼材。
一般的な両刃の洋包丁(三徳や牛刀など)に使われます。

このまま研磨してゆくとダマスカス紋様が綺麗に出ないので、鋼材表面をプレスやハンマーで打ち付けてデコボコにします。
芯材以外は熱処理硬化のしない軟鉄やニッケル鋼なので、その部分の層が比較的簡単に潰れたり変形します。
その後、研磨することであの斑なような紋様が浮かび上がります。

究極をいうと斑紋様以外は通常の「割り込み材」(3層鋼)と変りありません。
熱処理で硬化しない軟鉄系鋼材+熱処理で硬化する芯材+熱処理で硬化しない軟鉄系鋼材=3層鋼
「熱処理で硬化しない軟鉄系鋼材」の部分が幾重になっているかの差ですね。

ただ、3層より16や33などの多層のほうが鋼材や刃物を製造するにあたり、手間暇・技術を必要とするので高価になることは否めません。
でも、切れ味を左右する芯材が変らなければ切れ味自体に差は見受けられないのが現状です。

ただ、最近は例外なダマスカス鋼もあります。
この点は次回お伝えしたいと思います。

今回この様はお話をさせていただいたのは、あまりにも「ダマスカス鋼」だから切れるんだと思われているお客様が多いので。
各方面からご注意されるかも知れませんが、お客様により多くの判断基準を得て欲しいと思い記しました。
それではまた。