包丁のトギノン ブログ

トギノン販売有限会社 包丁の製造販売店のブログです

包丁のマーキングについて 其の四

2015-06-29 | 包丁のマーキングについて
包丁のマーキングについて 其の四

レーザーマーキングの加工例
黒系と白系の2タイプを見比べます。

一角朧の黒系レーザー加工

PROウェ-ブの白系レーザー加工


どうですか?
どちらも鮮明にマーキングが行われています。
金属へのレーザーマーキングは黒系よりも白系の方がより鮮明さが際立つ傾向が強いです。
なぜなら黒系は焼き色を付けるように加工をするのに対し
白系は掘り込み(すりガラスのように)加工をするからです。
また、加工面の色や素材にも左右されますが、金属の場合は鏡面仕上げに近づくほど反射して見にくくなるので
見る角度によっては艶のある黒系より艶消しの白系の方が見やすくなるという特性もあります。(これもデザインや好みによりますが...)
黒系(角度を変えて撮影しています。反射で見え方が違います。)

白系(角度を変えて撮影しています。反射で見え方が違います。)


またレーザーが鮮明にマーキング出来るわけは「非接触型」だからです。
いままでお話しした「電解マーキング」「シルク印刷」などほかのマーキング方法は必ずと言ってよいほど「接触型」です。
接触型というのはマーキング製版が加工面に直接触れること。
加工面に触れるのでよりダイレクトになり鮮明になると思いがちですが、版は劣化・摩耗してゆきますしインクや薬品によっても鮮明さが左右されます。(インク、薬品は液体であるが故)
つまり数をこなすうちに鮮明さが落ちてくる。

対してレーザーは光線で加工するのだから「非接触型」(投影型といってもよいでしょう)。
非接触だからダイレクトさに欠けると思われがちですが、そのあたりはデジタル処理した版を投影しインクも使わない、版も劣化・摩耗しないので鮮明さは変わりません。(厳密にいうと光線照射のレンズや出力装置に左右されますが接触型に比べるまでもない)
だから私は接触型がアナログに近く非接触型がデジタルに近い加工法なのだろうと考えます。


レーザーマーキングのデジタル数値化した製版DATAの様子


このように細かく設定することで1/100mm以下の加工も可能としています。
また、接触型は版のサイズでしか加工できないのに対して、レーザーではある程度のサイズで製版DATAを作成することで、コンピューターグラフィックスの拡大縮小のようにサイズ変更も思いのままという利点もあります。

それではまた。

包丁のマーキングについて 其の参

2015-05-27 | 包丁のマーキングについて
包丁のマーキングについて 其の参

其の参
今回は「レーザー彫刻」「レーザーマーキング」について述べます。
「レーザー彫刻」「レーザーマーキング」とは刃物などの表面に文字や絵?などをレーザー光線を照射してしてマーキングする加工の事です。

レーザー光線を照射するなんてなんだかSFチックな話ですが、簡単に言うと光線を当てることで加工物の表面を焼く事が出来るんです。
焼くことで焼き色を付けたり、削ったり出来るのです。
加工可能な素材はほぼ選びませんが、光を照射させての加工法なので苦手なものもあります。
そう、光を反射させたり屈折させたりする加工物は得意ではありません。
そのような加工物はそのままだと正確に彫刻・マーキングが出来ません。
歪んだり思ったような彫刻が難しい。どうしてもその様な加工物に加工したい場合は加工物の表面に光を反射しにくくする前処理が必要となります。(着色したり僅かに曇らせたりしたりなどの)

レーザー照射の機械はそれこそピンきりです。
安価なものだと100万円程度からで、高価なものだと数千万円以上となります。
それらの違いは精度の高さや出力の強さなどで機械の価格はグンと違ってきます。

この加工方法のメリットは
1.特別な製版がいらない(本腐食や電解マーキング、シルク印刷などのような版下が不必要)
2.薬品を使わない(化学変化を促進させる薬品やインクが不必要)
3.加工時間が短い(薬品を使わないので前処理が不必要など)
4.デジタル制御で正確性がUP、鮮明
などが挙げられます。

逆にデメリットとしては
1.加工装置に費用がかかる
2.焼くことで着色するので加工の色が白系・茶系・黒系や虹色しか選べない(それも加工物によっては条件が限定されるので基本的には白系の削りか黒系の着色しか出来ません)
3.画像などをスキャンして加工DATAを取り込むことも出来るが、より鮮明さを上げるためCADやDFX形式のDATA変換後、機器の専用DATAに再変換が必要。
などが挙げられる。


弊社ではご依頼に応じて有償となりますが、「レーザー彫刻」「レーザーマーキング」で名入れも行なっています。
マイ包丁やマイアイテムに、記念品に贈答品に最適ですよ。



次回は加工例を挙げてさらに詳しくお伝えしたいと思います。
それでは。

マーキングについて 其の弐

2008-10-31 | 包丁のマーキングについて
マーキング方法のお話です。

其の弐
今回は「電気腐食マーキング」について述べます。
電気腐食マーキングとは刃物の表面に文字や絵?などを電解してマーキングする加工の事です。

まず、用意しなければならないのが「ステンシル」と呼ばれる版の作成及び用意です。
包丁に入れたい「名(めい)」や「模様・イラスト・ロゴマーク」などを転写してステンシルの版を作成します。
次に電解を行う電圧機材の用意。
これは、電流が流れる「バレン」のような物。
バレンとは版画などに使われる押しつけてこするように使う「アレ」のことです。(上手く説明できなくてスミマセン)

あと、電解を促進させる電解液。
結構、これが肝心要なやつでこの電解液の選択肢次第でマーキングが白っぽくなったり茶色系、黒ぽくなったりと色を決定づける物となります。
もちろん、電圧や刃物の鋼材によっても色は変化しますし適していない電解液を使用すると鮮明にマーキングできません。まぁ、これは長年の経験や職人の腕、データなどによる物が大きいです。

包丁に先ほど用意したステンシルの版をマーキングしたい箇所に固定し、電圧機材を用いてステンシル部に電解液に浸しながら電圧をかけてゆきます。すると転写したステンシルのマスキングの所は電流が流れませんからマスキング以外のところが電解液と反応して金属表面が電解されてゆきます。
これが、電気腐食と呼ばれるマーキング方法です。

処理後は包丁についた電解液を石けん水などで中和してやらなければなりません。
この処理を怠ると包丁は錆びやすくなります。もちろんその後、新たに洗浄を行い手入れをなども行いますが。
以上が無事済めば、電気腐食マーキングは完了です。

比較的、マーキングの中では工程が簡単な部類で量産も出来、加工賃も「本腐食マーキング」に比べぐっと安価に出来ます。

弱点は、マーキングの彫りが浅い。金属を電解して入れるのですから砥石などでごしごし磨くと落ちてしまいます。しかし、洗剤や通常の使用では消えることはありません。
もう一つ弱点は、色が白系・茶系・黒系などからしか選択できません。「本腐食マーキング」のようにカラフルな色入れが出来ません。

少しはマーキングについて御理解いただけましたか?
マーキングのお話はたくさんありますので、ぼちぼち時を見計らいUPしてゆこうと思っております。

下記画像は電気腐食でマーキングした製菓で使われる「スパチュラ」のマーク部のアップ画像です。
オールステンのスパチュラでペガサスプロシリーズの150㎜。(品番:PPS-15)
衛生的で尚、かっこいいでしょ。






包丁のマーキングについて 其の壱

2008-09-10 | 包丁のマーキングについて
其の壱
-初めに-
今回は、包丁のマーキングについて述べたいと思います。
マーキング方法は多種多様ありましてそれぞれ特長があります。
種類としては...
・腐食マーキング
・電機腐食マーキング
・シルク印刷
・プリント印刷
・パット印刷
・刻印
・彫刻(タガネで彫る)
・レーザー彫刻
・レーザーマーキング
などなど

どれが一番優れているかというより、それぞれに特長や趣向がある物なので製造側としてはマーキング選択に悩まされます。
なおかつ、それぞれ加工工程やコストが全然比較にならないくらいの差があるんです。
これをお客様にその価値を違いを御理解していただくのが難しい。
それらの理由から、少しでもマーキングによる「違い」を少しでもお伝えできたならと思い書きました。

其の壱では「腐食マーキング」について述べます。
腐食マーキングとは、刃物の表面に文字や絵?などを彫り込んでゆく加工の事です。
加工方法としては、包丁表面に彫り込むところ以外をマスキング(白抜き状態)して、薬品でマスキング以外の所を腐食(溶かし彫り込む)させるのです。
すると、腐食された所は凹みます。
この状態で出荷されるとマーキング方法は「白腐食」などと呼ばれます。
腐食の凹みを活かして「色入れ」(塗料を流し込む)すると「本腐食」などと呼ばれます。
本腐食は黒や赤、金や緑など様々のカラフルな色入れができます。
また、腐食による凹みによって長年お使いになった包丁でもマーキングが消えてなくなってしまうことがほとんどありません。
もちろん形が原型よりかなり変形してしまうくらい研ぎ上げた包丁はこの限りではありませんが...。

簡潔に述べましたが加工には大変な手間と時間がかかります。それに本腐食は職人による1本1本地道に手作業で行いますのでコストが高く付きます。
包丁で使われるマーキング方法としては技術・コスト・美観など総合で1,2を争うレベルの高い物なんですよ。

少しはマーキングについて御理解いただけましたか?
マーキングのお話はたくさんありますので、ぼちぼち時を見計らいUPしてゆこうと思っております。

下記画像は本腐食」でマーキングした牛刀のマーク部のアップ画像です。
カラフルで素晴らしい仕上がりでしょ