包丁のトギノン ブログ

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打ち刃物と鋼材会社の材料を使用した刃物 その2

2014-07-28 | 包丁・刃物の鋼材について
打ち刃物と鋼材会社の材料を使用した刃物 その2

以前、地元ローカル放送局の取材を受けたことをお伝えしました。
実は結構、各方面での反応があり驚いています。
私が面識がない人からも
「この前TVに出ていらっしゃいましたね。私も包丁が欲しいので相談に乗ってください。」
と声をかけられる事が多々あり嬉しい反面、TVって影響力すごいなと思いました。

話がそれましたが、今回の本題に戻りたいと思います。
まず、「打ち刃物」とは何でしょうか?
日本刀の製造などに用いらた「鍛冶」による技法により製造された刃物を「打ち刃物」といいます。
よく皆さんが想像する、真っ赤に熱せられた金属を金槌などでトンカチ、トンカチとする事です。

では、なぜトンカチ、トンカチするのでしょうか?
それは金属を「鍛造:たんぞう」したいためなのです。

「鍛造」とは金属材料に大きな力をかけ変形させることで目的の形状に加工する「塑性加工法:そせいかこうほう」の1種で、金属内部の隙間をなくし組織レベルでの微細化をはかり強度を増す技法のこと。※隙間とは空間や不純物等が含まれる。
例えはおかしいかもしれませんが、鍛造前はスポンジ様で鍛造後は消しゴム様とでも言いましょうか。
金属組織の「密度」が変化するのです。


鍛造時に火花が出ますがそれこそが密度が上がっている証です。(隙間が無くなったり不純物が排出され燃えているのです)

また、鍛造は大きくわけて
熱間鍛造」:金属の再結晶温度以上に加熱し、形状を変形させる工程において抵抗を減らす工法。硬い材質も楽に鍛造できる。
冷間鍛造」:基本的に常温で形状を変形させる工法。軟らかい材質に向くが、硬い材質は割れたり抵抗が大きくなりすぎるため向かない工法。材質を熱しないため膨張率をさほど考えなくてもよく寸法精度に優れる。
の2つがあります。
刃物を製造するのには一般的に金属を熱して成型する「熱間鍛造」が主に採用されます。

しかし、刃物鋼材を鍛造する前に「鍛接:たんせつ」という作業が必要な場合があります。
まず、打ち刃物には
1.「全鋼:ぜんこう」とよばれるすべてハガネでつくられた物
2.「鍛接:たんせつ」された複合鋼材の物

があります。
2.の複合鋼材を作るため必要になる「鍛接」とは、地金(軟鉄など)と刃金(ハガネ)を接合することをいいます。
接合の仕方は地金と刃金の間に砂鉄や銅や銀などの柔らかい金属を接着剤代わりにして挟み込み金属を赤みを帯びるまで熱し槌(ハンマー)で叩くことで接合します。柔らかい金属が異種金属の組織レベルでの表面に食い込むことで接合されるのです。

それらを踏まえたうえで以下の考察をしてゆきたいと思います。
1.金属の密度を上げる鍛造のどこが優れているのか?
A.単純に密度が上がることで金属材料の丈夫さが増す。(空間や不純物がなくなるため材料特性がどの部位でも一定になるため)

2.なぜ鍛接をするのか?
A.単一鋼材でも鍛造することで丈夫で硬い鋼材になりますが、鋼は硬くなればなるほど折れや欠けが生じやすくなる特性を持つ。
この問題を解消するために「割り込み材・ダマスカス鋼」のような軟らかい鋼材と硬い鋼材を合わせた(サンドイッチ状のような積層構造)にすることで中心の鋼材硬度を維持しながらも、折れや欠けを大幅に軽減できるため。
「折れず曲がらず」といわれた日本刀造りもこの技術を活かして造られています。(注:日本刀全てがこの製造方法ではありません。一部の技法によって作られたもののことをここでは指しています。)


まさに読んで字のごとく金属を「鍛造」=鍛えて造る。だから鋼材が1ランクも2ランクも上質なものへ変化しているのです。
もともと、鍛造で用いられる鋼材は「踏鞴製鉄:たたらせいてつ」で造られたものを使用していました。
砂鉄・岩鉄・餅鉄を原料とし踏鞴製鉄を行なって製鉄された鋼材を鍛錬によって刃金にし鍛造されていたのです。
これこそが鍛造の素晴らしい点で、もてはやされ、評価される点ではないでしょうか。

しかしながら、この様な素晴らしい鍛造にも欠点があります。
それは何でしょう?
長文になりましたので今回はここまで。続きは次回に持越しです。
それではまた。