包丁のトギノン ブログ

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-ダマスカス鋼について2-

2009-04-08 | 包丁・刃物の鋼材について
-ダマスカス鋼について2-
ダマスカス鋼について2ではダマスカス風鋼材の製造方法を追求します。

しかしその前に似たような紋様を出す鋼材の比較対象を挙げてみます。
1.日本刀などの積層紋様
2.ダマスカス(本物)のまだら模様

1.の日本刀などに見られる積層紋様
これは主に「折返し鍛錬法」という手法や焼き入れ時の泥・土盛りなどによって出来ます。
その2つの方法とは...
折返し鍛錬法によって1つの鋼材を鍛えながら折り紙のように何度も何度も折り合わせて鍛えてゆく事で、鋼材の層が出来るもの。または、芯材のハガネの上に異種鋼材を鍛造し接着するもの。
焼き入れ時の泥・土盛りによって、厚く盛った部分と薄く盛った部位との焼き入れ温度差によって紋様が出来るものです。
図1


2.ダマスカス(本物)の場合
前回にもお伝えしましたが、ダマスカスの鋼材はインドのウーツで精錬された物という諸説があります。特殊な精錬方法によってか、はたまた「コズミック・スチール」(隕鉄:いんてつ)だから出来たのかよくわかりませんが、鋼材を熔解し固まる時にまだらの紋様が出来上がるとのこと。いろいろな成分が混ざり合う...そう、アイスコーヒーにミルクを入れ少しかき混ぜた状態みたいな感じと言えば何となく解りますか?そう、あの混ざりきっていない状態で固まったのがダマスカス鋼だという説もあります。
図2


それらを踏まえたうえで、現代のダマスカス風鋼材の製造方法とは...
ズバリ積層鋼が主であります。(全てではないでしょうが、ほぼこの形態で製造されていると思います。)
積層鋼とはいろいろな鋼材を本の様にページを重ねたように創られる。
一番単純な積層鋼では「クラッド」、「割込材」と言われる鋼材があり、これらは3枚の鋼材をあわせ作られる。
芯材のハガネ以外の外側軟鉄を幾重にも繰り返し31層、63層などのダマスカス風積層鋼材が出来上がります。
もちろんこれだけではまだらの紋様は出来ずストレートの刃紋となります。
まだら紋様を出すために槌目を入れ鋼材の層を変化(等高線のように高い低いを作る)させます。
これを研ぎあげるとまだら紋様が出来上がります。
図3

このダマスカス風の鋼材を創り上げるときいろいろな鋼材を積み重ねていくと、およそ50~80CMの厚みになります。
それに圧をかけ、出来上がりは5~2㎜ほどまで薄くのばしてゆきます。製造方法はほとんど鍛造と言えますね。
硬さが違う金属を重ね合わせるのでで均一にのばすのには大変な技術力が要ります。半端じゃ出来ません。
図4

まあ、これが現代のダマスカス風の鋼材の大まかな製造方法でしょうか。

-最後に-
この鋼材によるメリットは...
1.硬く錆びやすい鋼材を使っても外側に貼り付ける鋼材が錆びにくい物であれば刃先(芯材)が錆びるだけで済む。
2.また、硬い鋼材だけだと折れやすいが、外側にある軟らかい鋼材のおかげで折れにくい。
3.硬いところは刃先だけなので刃研ぎがラクに出来る。
4.芸術的なマダラ紋様。
などが挙げられます。
しかし、4.のマダラ紋様以外はクラッド鋼や割込材などと、耐久性・切れ味等なんら変わりありません。
ダマスカス風鋼材だから切れ・耐久性があるのではなく、あくまでも芯材の鋼材や熱処理加工、刃付けなどが関わってくるのです。
ダマスカス風鋼材が高価なのは技術力と手間がかかることから致し方ないと思われますが、実用性能面からは製品は少し高い様な気がします。
このこと...以外と知らない方が正直多いです。
なんて書き記している私もまだまだ勉強中でまだまだ知らないことも多々あります。
ホント、奥が深いんですこの業界は...。

それではまた。