包丁のトギノン ブログ

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刃物の曲がりについて

2013-06-26 | 包丁について(総合)
刃物の曲がりについて

包丁や刃物類の曲がりに付いてお話したいと思います。

刃物の製造工程には様々な意味があります。
例えば鋼材硬度を増すために行う熱処理、形状を作るための研削、切れ味を司る刃付け作業など...。
全ての工程には必ずしも「意味」があり、必用だからこそ数々の工程を経て1つの刃物が完成します。

その工程の中に目立たないけど地味だけど、とっても大切で重要でもっとも意味のある工程があります。
それは、「歪:ひずみ」抜きです。
全ての刃物を製作するにあたり、絶対に避けられない問題として歪の発生があります。
鋼板から刃物の形状を作るのですが、鋼板自体「真っ直ぐ」とは限りません。僅かですが歪んでいることが多い。
だから、歪抜きをして極力真っ直ぐになるよう修正をします。

そして鋼材から刃物形状をプレスやレーザーなどでカットしても歪が発生します。
だから、歪抜きをして極力真っ直ぐになるよう修正をします。

また、熱処理を行うと歪が発生します。これは鋼材が熱されて組織が膨張し冷やすことで組織が凝縮されるから。
鋼材硬度をあげるために必要な作業ですが、歪の発生は免れません。
だから、歪抜きをして極力真っ直ぐになるよう修正をします。

ようやく刃物の形状を整える研削になるのですが、ここでも砥石や切削工具の削りだしに於いて「応力」が働くため歪が発生します。
だから、歪抜きをして極力真っ直ぐになるよう修正をします。

こうして幾つかの工程を経て刃付けの作業に入りますが、その前に歪をチェックし必用なら歪抜きをして極力真っ直ぐになるよう修正をします。
なぜなら、真っ直ぐでない刃物形状でないと真っ直ぐな刃が付けられないからです。

そして、出荷前の歪検査にて弊社の基準を満たしていないと不良となります。

ここに挙げた工程はごく一部で大雑把に記したものです。
実際にはもっと多くの工程がありますが、大体の工程の流れは感じ取ってもらえたのではないでしょうか?

そうなんです。実に全ての工程に「歪抜き」が関わってくるのです。
目立たないけど地味だけど、とっても大切で重要でもっとも意味のある工程なんです。
全ては各工程を上手くこなす為に行われます。

皆さん、刃物は真っ直ぐが「当たり前」だと思っておられる方が多いがとんでもない。
以前、知り合いの方に歪の話しをしたら「曲がってないよ。」と言われたので、お使いの包丁を確認していただいたら左に曲がっていました。
「普通気づきませんよ。」と私は答え今では笑い話となったことが多々ありました。
まあ、長年の使用で僅かに力が加わり続け曲がったので判らなかったのだろうと思います。
刃物は金属製のものが多いので無理にこじったり、保管が悪かったり、使用方法に誤りがあったり、研ぎ直しが悪いとか、使う人の癖などにより多少曲がることもあります。
その場合はある程度、真っ直ぐになるよう修正してからご使用になると狙ったラインに刃が入り込む様になりますよ。

安価な刃物は歪抜きを省いていることが多い。
なぜなら目立たず地味な作業で価格に換算されにくから。
色やデザインを派手にしたり、鋼材にこだわりました、硬度にこだわりました―の方が正直市場受けしますもん。
高価な刃物はちゃんと歪抜きしていますが、まれに???と思うものもあります。

貴方の包丁は曲がっていませんか?

次回は具体的な歪の取り方を幾つか挙げたいと思います。
それでは。




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