1 生産年齢人口のピークは2011年頃
中国の人口は、2006年末時点で13億1,448万人と世界一の規模を誇っている。しかし、人口増加率は一人っ子政策の影響で低下傾向にあり、毎年の人口増加数も年々減少している。2006年には前年比で692万人の増加となったが、ピーク時に比べると約3分の1の規模にとどまっている。
また、労働力の規模を表す生産年齢人口(15~64歳)についてみると、高齢化の進展と新規流入労働力の減少に伴い、生産年齢人口が数年後には減少に転じることが懸念され始めている。
中国社会科学院人口・労働経済研究所の張車偉副主任による、2000年センサスをもとにした試算によれば、中国の生産年齢人口は2014年の9億9,700万人がピークとなり、2015年からは減少が始まるとしている。労働市場においては60~64歳の年齢層に対する需要は極めて少ないことから、15~59歳の年齢層でみるならば、ピークの到来と生産年齢人口の減少はさらに早まり、2011年の9億2,700万人がピークとなり、2012年から減少に転ずる可能性が高いと予想している。
また、国連の”World Population Prospects”によれば、5年毎のスパンで見ると、生産年齢人口は2006~2010年までは増加するものの、2011~2015年の期間中には減少に転じ、この期間で年平均84万人の減少に転じるとしている。その後、年平均の生産年齢人口の減少幅は次第に拡大し、2031~2035年の5年間では、年平均の生産年齢人口の減少が768万人と最も拡大する。さらに、その後は年平均の減少の幅は小さくなるものの、2050年まで減少傾向には歯止めがかからないと予想されている。
このように、中国の労働力は今後数年の間にピークに達し、その後は減少に転じるものとみられる。
2 深刻化する単純労働者不足と賃金上昇
このような労働力の減少が始まる前に、中国では既に人手不足の兆候がみえ始めている。
2002年後半からは、広東省において「民工荒」と呼ばれる労働者の不足現象がみられ始めた。当初は、例えば旋盤工といった技術水準が相対的に高い労働者の不足であったが、2003年入り後からは、運搬作業員、家政婦といった単純労働者の不足も顕著となっている。さらに、2004年以降、広東省のみならず、中国の主要工業地帯である沿海部の様々な地域において、労働者の不足が常態化しつつあり、熟練工のみならず、一般労働者の募集も困難な情勢となりつつある。とりわけ、これまで中国の沿海部の都市部において、低コスト労働力の中心となっていた内陸部の農村部からの出稼ぎ労働者の不足が顕著となっている。中国政府が、広東省など沿海部12省の都市部を対象にした人手不足に関する調査によると、調査した企業のうち35%の企業が、労働力が不足していると回答している。とくに、18~25歳の年齢層の未婚の女子労働者の不足が全体の60~70%を占めているが、若年労働力を中心に人手不足が深刻化しつつある。
沿海部を中心とする都市部において、現在人手不足がとくに問題となっている職種はいわゆる単純労働者(低付加価値労働者)である。今後、人口構成上の問題から若年労働力の減少が予想されるなかで、いわゆる低付加価値労働力の確保は年々難しくなることは間違いない。
このような量的な確保の困難に加え、中国では賃金の上昇が急速に進んでおり、最低賃金が毎年のように高率で引き上げられている。このため、「低廉で豊富な労働力を利用した低コストでのものづくり」という中国のビジネスモデルは早急に見直されるべき段階に来ているといえる。さらに、労働契約法の導入により、今後は従業員を長期に雇用せざるを得ないケースが増えることが予想され、これまでのように受注生産や短期の生産計画に基づく生産の変動を派遣社員で調整するような生産体制をとることが徐々に難しくなる可能性が高い。
3 日本企業の中国戦略の見直し~低コスト基地から脱却し人材の育成を急げ~
以上を踏まえると、日本企業の中国における事業戦略は、現在大きな曲がり角に差し掛かかりつつあるといえ、今後を見据えた以下のような長期的な戦略の確立が必要になっている。
第1は、中国を低コストの生産基地とみなしている場合には、その抜本的な見直しが必要なことである。
既に述べたように、中国ではいわゆるワーカークラスの人手不足が顕著となりつつある。このため、大量に労働者を雇用して労働集約型の生産を行う業態では、労働者の量的な確保が難しくなっている。また、賃金の上昇も急で、賃金を少々上げたくらいでは労働者を必要な数だけ確保することが難しい場合も増えている。このような状況の下、いわゆる労働集約型からの転換が必要となっており、より付加価値の高い生産品目へのシフトや、効率化を進め、より少ない労働力での生産を可能にすること、あるいは機械化を進めることなどが課題となりつつある。
一方で、どうしても労働集約型の生産が必要であるならば、中国でも比較的低コストの労働力が確保しやすい内陸部へ生産拠点のシフトを図ることや、あるいは、ベトナムやインドネシアなど、より労働コストの安い「中国プラス1」の国へのシフトを検討することが必要である。
第2は、人手不足が顕著となるなかで、人材育成の重要性が高まっていることである。
労働者の量的な確保が難しくなるなかで、優秀な人材を外部から獲得することが一層困難となりつつある。このため、即戦力の人材を雇用するよりも、雇用した人材を社内で育成していくことの重要性が高まっている。
日本企業はもともと人材育成には熱心であるが、中国においても、長期的な視野に立って、計画的に人材を育成していくシステムを確立する時期にきているといえる。
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