カスピ海のバクー(アゼルバイジャン)から地中海のジェイハン(トルコ)までを繋ぐ全長1,700キロメートルにもおよぶ「BTCパイプライン(バクー・トビリシ・ジェイハン・パイプライン)」は、アゼルバイジャン・バクー油田の価値観や世界のエネルギー事情をもがらっと変えた、非常に影響力のあるインフラである。
この最強インフラによって、アゼルバイジャンのエネルギーは世界に大きな影響力をもたらすこととなった。このときアゼルバイジャン政府が、世界のエネルギーメジャー30社と交わした契約は、「世紀の契約(Contruct of Century)」と呼ばれ、この国の急速な経済成長にさらにターボエンジンを搭載することとなった。
そのBTCパイプラインからさらに欧州へ向けて延長される「ナブッコ(トルコ・オーストリア・パイプライン)」、「TAP(トランスアドリア海パイプライン)」などが計画されているが、どれも巨額の投資を必要とするプロジェクトであり、費用対効果が十分に見込めるかどうかも疑問視されている。
現在、いちばん問題視されているのが、天然ガスの供給量不足の懸念だ。これらパイプラインをフル稼働させるためには、アゼルバイジャンの天然ガスだけでは供給不足で、さらに安定的な天然ガス供給国が必要であるという考え方である。
イラクは地理的に欧州へのエネルギー搬送上、重要な国のひとつとして認識されている。イラクは莫大なガス埋蔵量を誇るが、現在、欧州への輸出ルートが確立されていない。EIA(Energy Information Administration)の発表によれば、「イラクは世界のガス市場のための重要な源となり得る。しかし現在、十分なパイプラインや輸送インフラが不足しており、生産量の60パーセントを損失している」とのことだ。
大量の天然ガスが眠るイラク北部のクルド自治区は、年間100億立方メートルの天然ガスをトルコへ輸出する力を持っているが、現在は搬送インフラの不足や、イラク中央政府とクルド自治区間の契約などで障害に直面している。イラクが欧州にガスを輸送するための「BTCパイプライン南ガス回廊」はアゼルバイジャンとトルコの支援によってこれらの問題を解決し運営していくという計画だ。
BTCパイプライン南ガス回廊は、16年に運用開始、17年までに本格的に輸出を開始する計画となっている。この期間にイラクはアゼルバイジャンの天然ガスとともに、欧州の多様化するニーズに応えることで第二のエネルギー供給基地となり得る可能性を秘めている。またEOTC東西エネルギーハブの指揮官的役割を担うアゼルバイジャンの存在感も今後、さらに増してくるだろう。
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