米国のバーボン・ウイスキーの醸造業者が、英スコットランドのライバルであるスコッチメーカーを押し出している。低価格と新しい香り?
昨年のスコッチ・ウイスキーの世界向け輸出は7%減少した。米国の大勢の消費者がバーボンやその他のアメリカン・ウイスキーに引き続き切り換えているからだ。7%の減少率はスコッチとしては1998年以降で最大。年間で減少したのは、過去30年間で3回しかない。
1日発表された英国政府統計によると、最大の輸出市場である米国向けのスコッチ販売は9%減少した。
スコッチの蒸留酒製造業者は最近、最も有望な新市場の一つである中国向け販売の鈍化にあえいでいる。しかし、スコッチ・ウイスキー協会は昨年の輸出減少について、米国の消費者がバーボンやその他のアメリカン・ウイスキーに切り換えているためだと述べた。
同協会の広報担当者は「バーボンがわれわれのウイスキー販売に割り込んでいる」と述べ、「米国のスピリット(蒸留酒)類は現時点で極めて競争力があり、アメリカン・ウイスキーはその大きな要素だ」と述べた。
昨年のスコッチの世界向け輸出総額は39億5000万ポンド(約7000億円)にとどまり、13年の42億6000万ポンドを7%下回った。
アメリカン・ウイスキーはスコッチよりも値段が安いのがしばしばで、容易にブレンドでき、地元で生産された製品を消費するという全米的な傾向の恩恵を受けている。業界団体である米蒸留酒協議会によると、昨年のバーボンとテネシー・ウイスキー(テネシー州で醸造されているバーボン。ブラウン・フォーマン社傘下のジャック・ダニエルを含む)の米国販売は7.4%増加した。
調査会社ニールセンによれば、米国でのスコッチの平均価格は24.09ドル、バーボンの平均価格は17.48ドルとなっている。
12年、バーボンの生産は1973年以来初めて100万バレルの大台を突破した。テネシー・ウイスキーを含むと、昨年のバーボンの輸出は10億ドルを突破した。ただし米国と英国以外では、スコッチは依然として海外市場でバーボンを上回っている。
米国消費者のバーボンへのシフトは、ざっと3000億ドルという世界の蒸留酒市場におけるバーボン・ブームに寄与した。また日本のサントリー・ホールディングスは昨年、160億ドルを投じて米ビーム社と同名のブランド「ジムビーム」を買収した。ジムビームは世界で最も良く売れているバーボンだ。*WSJ、
ロンドンに本拠を置く蒸留酒大手ディアジオは、長年にわたってスコッチ増産のために投資したが、一部をバーボン生産投資に切り換えた。同社はスコッチ製造向けの投資を抑え、米ケンタッキー州シェルビー郡で1億1500万ドルで醸造所を建設している。
こうした動きは、スコッチ・ウイスキーを犠牲にしている面もある。英政府統計によれば、昨年の米国向けスコッチ輸出額は約7億5000万ポンドで、前年の8億1870万ポンドを下回った。
*wsj By PETER EVANS AND TRIPP MICKLE 15/4/2 日 11:20 JST