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熊本県植木町・向原遺跡 9世紀後半の金銅製の錠前と鍵が一緒に出土

2009年05月30日 | Weblog
 町教委は29日、平安時代の集落遺跡「向原(むかえばる)遺跡」(同町今藤)から9世紀後半のものとみられる金銅製の錠前と鍵が出土したと発表した。
 同遺跡は両側が谷の台地上にあり、約2km南には古代の山本郡の郡衙の推定地がある。
 古代の鍵類の出土例は全国で約130あるが、ほとんどが鉄製。金銅製の鍵は、平城京、平安京、長岡京や、相模(神奈川県)、薩摩(鹿児島県)の国府の遺跡などで過去9例見つかっているが、ほぼ完全な形で鍵が一緒に出土するのは全国で初めてという。過去に彫金の跡が確認された錠前は長岡京の1例だけという。
 3月末に見つかり、九州国立博物館(太宰府市)でCT撮影をしたところ、錠前(長さ約12cm)2個、鍵(長さ約9cm)1本、蝶番の役目を果たす金具など12点が確認された。大きさや形状から箱に鍵をかけるためのものと推測される。
 錠前は一部が大きく湾曲したU字形の「海老(えび)錠」と呼ばれる種類。六角形の筒部には鮮やかな金の装飾が施され、魚卵のような粒状の文様「魚々子(ななこ)紋」も確認された。
 向原遺跡では、約600㎡の調査区で直径1mを超す大型のものを含む400近い柱の跡が見つかっており、中国産の黄釉褐彩(おうゆうかっさい)陶(注1)や青磁なども出土した。規模から寺社仏閣か行政府、軍部があった可能性があり、山本郡衙などの関連施設があった可能性も考えられるという。
 同遺跡の現地説明会は31日午後1時半から行われる。
[参考:毎日新聞、読売新聞、熊本日日新聞、共同通信]

(注1)黄釉褐彩陶
 黄釉褐彩陶の出土の記事を載せているのは、熊本日日新聞だけである。写真、図ほか詳細も全く記されていないのが残念であるが、9世紀のものであれば出土例は大宰府ほか数例しかなく、非常に貴重なものと思われる。
 唐代に開窯された中国湖南省長沙市望城県銅官鎮にある長沙窯で多くが作られている。

平安期の錠前と鍵出土 植木町の向原遺跡 31日現地で説明会(西日本新聞) - goo ニュース


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