李さん、韓国では「イ」さん、北朝鮮では「リ」さん
少し、韓国・朝鮮語を学んだ人ならば、北と南で、若干の発音の違いがあることに気づくだろう。
たとえば、よくある名字「李」の読み方。
北では「リ」と発音するが、南では「イ」である。
「労働」は北朝鮮では「ロドン」、韓国では「ノドン」だ。
半世紀にのぼる不幸な分断で、同じ言語ながら北と南は微妙に独自変化を重ねてきた。
これもその結果なのだ。
北は1949年に漢字表記を廃止する政策を実施し、さらに1964年から約5万語の漢字語や外来語を固有語に置き換えていったという。
一方、南では米国文化が浸透し外来語がどんどん入ると同時に米英語の発音の影響を受けてきた。
そうしたズレが、発音の違いを生んだのだ。
1987年の大韓航空機爆破事件の女性工作員・金賢姫について、韓国当局が「北朝鮮出身」と確信を持ったのも発音の差だった。
北朝鮮出身となかなか認めなかった工作員の金賢姫を切り崩す決め手となったのは、「ラジオ」だったという。
植民地時代の日本語の名残か、北朝鮮では「ラヂオ」と発音する。
米英語の影響が強い韓国では「レディオ」。
これが決め手となったようだ。