草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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都下の公立中高一貫校よもやま話(5)

2009年12月04日 12時18分30秒 | 
●都立小石川中等教育学校
 
 都には現在7つの公立中高一貫校があります。2003年に都立高校の学区制が撤廃されました。それにともなって進学重点校が作られます。2010年には新たに4校が開校予定で, 総計11校で, 都内の公立中高一貫校の新設は終わります。
 都下の公立中高一貫校として選ばれた学校に, 都立日比谷や西といったトップ校が除かれていることにお気づきでしょうか。そうです。選ばれたのは, トップ校の次かその次のランクにある学校です。こうした2番手校もかつては輝かしい東大進学実績を誇っていた学校です。トップ校に放っておいても優秀な生徒が集まるであろう。が, 2番手3番手校にはどうしても飛びきりできる子は抜けてしまっている。それならそういう学校には小学生の中から選ばせておこうということではないでしょうか。
 すでに都教委は, 進学重点指導校として次の高校を指定しています。
 (1) 都立日比谷高校
 (2) 都立戸山高校
 (3) 都立西高校
 (4) 都立八王子高校
 (5) 都立青山高校
 (6) 都立立川高校
 (7) 都立国立高校
 さらに, 都教委は, 進学指導特別推進校として, 次の5校を指定しました。
 (1) 都立小山台高校
 (2) 都立駒場高校
 (3) 都立新宿高校
 (4) 都立町田高校
 (5) 都立国分寺高校

 公立中等一貫校に選ばれた学校は, 両国が府立第三中学, 小石川が府立第五, 大泉が府立第二十, 白鷗が府立第一高女, 南多摩が大四高女, 富士が第五高女, 武蔵が第十三高女, 九段は第一私立中というように前身が伝統校とされるものです。最初に開校したのが, 白鷗(台東区)です。その後, 小石川(文京),九段(千代田), 両国(墨田), 桜修館が開校していきます。総じて, 都の東地域に集中していました。進学重点校が西地域に集中していたのと対照的でした。
 
 もともと小石川は, 学校群制が敷かれる前は, 東大合格実績で日比谷・西に次ぐ高校でした。
 参考  1961年の東大合格者数ベスト8
 1 日比谷 171人
 2 戸山  117人
 3 西   109人
 4 新宿  100人
 5 小石川 82人
 6 現・筑波大附 70人
 7 両国  60人
 8 麻布(私立) 55人

 日比谷から東大というコースは, 正確には, 番町小→麹町中→都立日比谷→東大 までと定型化されていました。これに対して, 小石川にも定型ルートが決まっていました。誠之(せいし)小→第六中→都立小石川→東大 です。当時は越境入学全盛でした。とにかく受験志向の高い小学校・中学でした。文京区は教育の熱気あふれる地域だったのです。そうした沿革をもつ小石川が, 往年の東大合格者数の復興をめざしたのは不思議なことではありません。小石川が都立の進学重点校とくに日比谷と西を並ぶいや超えることをめざしていることは想像に難くありません。小石川こそ並みいる都立中高一貫校の中でトップにあり, 抜きんでて東大進学実績を出さんという意志に燃えている学校はないと思います。
 公立中高一貫校というのは, 私立のように選抜のための入学試験ができないたてまえになっています。適性検査で示される成績というものは, 純粋の学科試験のように偏差値という尺度で図れない, あいまいさに満ちています。もちろん私立の高偏差値児童の能力が高いことは当然で, そういう子たちが適性検査だからといってできが悪いということは通常は考えられません。能力の高い者はやはり適性検査のできもいいのが普通でしょう。が, 特に能力の高い者は別として, 私立対応の受験勉強ではそれなりに能力がある程度の子ではなかなか太刀打ちできない難しさもあります。適性検査問題の出来ばえがよく, 必ず正しい答えのある客観テストに慣れた子たちには, すんなりと答えが出せないだけに不利ということもあります。
 小石川の出題当事者は, 知識量ではなく, 読解力と好奇心だと明言しています。知識の要素の大きい偏差値では計れない子たちが大量に入学するというのは, 入学者の能力にかなりにバラツキがあるはずです。小石川の教育も重点はこのバラツキの解消にあるかと思います。それにしても中2まで英検3級取得率が94%というのは, その調整が順調にいっていることを推測させます。総じて都立中御三家のひとつとして優秀な人材を集めることに成功しているのではないか。学校は学校の求めるレベルの達成率が7割以上だと公言している。
 学校の求めるレベルというのが, 高いものなのか低いものなのかも問題だが, 7割というのもまた上げ底の感はあるかもしれない。あの開成中・高校も, 相当数の落ちこぼれがいると言われている。授業のレベルが高ければ高いほどどうしても落ちこぼれは不可避的に出てくる。ある意味必要悪というか, 避けては通れない。かの都立黄金時代も落ちこぼれの問題が帝国崩壊の内蔵爆弾となった。人は歴史から何をいったい学ぶのか。 
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