草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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算数と能力の相関に関する実証的治験 都下の公立中高一貫校(6)

2009年12月05日 12時55分46秒 | 
●算数と能力の相関に関する実証的治験
 小4時における竹の会の算数の指導の初期的導入は, まず小数の和と差の計算ができるかを診る。これが, できれば次に, 小数のかけ算ができるかを診る。できなければここで「簡単にしくみを説明したレジュメ」を読ませて再度問題を課す。ここまでは, ほとんどの小4が難なくクリアしてゆく。次は, 小数のわり算である。ここでも「しくみレジュメ」をまず読ませる。読んで「しくみ」を理解するというのもひとつの能力である。読んでもわからない子もそれなりにいる。実は, ここがひとつの分岐点である。
 まず, 小数点の移動で混乱する子が必ずいる。そして, わる数が2けたになると「数がたてられない」子が必ずいる。もちろん難なくクリアする子もいる。この「数がたてられない」というのは, 九九に不慣れというのがたいてい原因である。しかし, 小数点の移動が円滑にできないというのは理解能力に関する。
 小数のわり算でも, 余りのあるわり算だと, さらに難度が高まる。なぜあまりのときだけ最初の小数点でとるのか, ここを理解する子はかなり知能が高い。単純に「そういうものだ」と覚えて先へ進む子が普通だ。だが, その点も計算力がつくにしたがって自然にわかってくる。
 こうしてめでたく小数の扱いができるようになったとして, いよいよ分数ということになる。が, 小数と分数との関連というものは, 少しくレジュメ指導しておかなければならない。0.1が, 1を10等分したものの1つだということ, そして1を10等分したものの1つとは, 1÷10 であり, 10分の1だということ, つまり, 根というか基本のところは共通の概念でくくれるのだということを理解させておかねばならない。
 小数や分数の本質的なものを掘り下げてゆき, その本質を理解させながら, 割合概念の本質をこっそりと忍び込ませてゆく。そういうことを私は企図している。
 分数の指導では, 分母とは何か, 分子とは何か, その意味を考えさせることが大切である。
 さて, 分数の指導では, まず最小公倍数について, 説明する。このとき, 最大公約数は無視である。子どもの脳というものは, 2つのものを同時に理解するようにはできていない。1つを十分に理解させれば, 類似概念はほとんど苦労しないで頭に入る。よく体系的理解をさせるというので, 体系的に出てくる概念をすべて説明するということが, 大手などの塾でなされるが, これについてこれるのは一部の知能の高い子だけである。
 最小公倍数は, 通分の考え方への布石である。最小公倍数を求める練習は単純作業であり, たいていの子はクリアする。が, 通分になると, 分母はなんとか最小公倍数でそろえても, 分子を整合させるところで, また混乱する子が必ずいる。もちろん難なくクリアする子もいる。
 分母というものが, 分子1個当たりの大きさを決めるものだということを十分に理解させなければならない。1本のようかんを3等分したものの1つが, 3分の1であり, 4等分したものの1つが4分の1であるということ, だから, 分子はいずれも1だけど, 大きさが異なるので, 単純に個数計算できないのだということを悟らせなければならない。
 「約分」という考え方もこの辺で入れるといいかもしれない。
 多くの子が, この約分でも詰まる。
 さらには, 帯分数の引き算で, 繰り下げという技術が, また子どもたちをパニックに追い込む。
 話しが, 長くなるので, かけ算とわり算の指導について少し触れておく。分数のかけ算もわり算も本来, 分子どうし, 分母どうしの計算でいいのだということを理解させる。かけ算はそれでいい。しかし, わり算では, 分子どうし, 分母どうしの計算では, いつも割り切れるとは限らないから, 頓挫する。分数のわり算では, 割る数の逆数をかけるということをやる。これをどう説明するかが問題である。今年の白鷗でこれが出た。説明のしかたはいろいろある。が, いずれにしても小学生にとっては大問題である。
 分数の計算ができるようになっても, スタートはこれからである。小数と分数の変換, かっこ, 四則混合など計算の順番の判断が求められる。適宜, 通分と約分を使いこなす。
 計算の最後に, 「逆算」がひとつの壁になる。この逆算を1日でクリアする子もいれば, クリアするまでに2, 3か月を要する子もいる。
 計算という抽象的で高度な判断を要するワークではあるが, その節目節目にいつも能力の深浅がかかわってくる。こうして, 計算の指導ひとつをとってみても, その指導過程と治験過程において, その子の知能の程度を測ることが可能となる。その指導過程を通して, その子の知能レベルを知り, いかなる治験を施すか思慮することになる。
 計算を難なくクリアする子は, 知能的には, 水準以上の知能を備えているということが, 実証的に定型的に確認できる。
 こうして子どもの知能を早くから知ることになる。が, いつも定型的なわけではない。逆算に1月かかった子が, その後の割合の指導で驚異的な理解力を示すということもよくあることだ。子どもの能力というのは, 時として予測の範囲を超えて, 驚異的な能力を開花させることもあり, 常に断定を避け, 可能性にかけるという指導法もありである。

●都立白鷗高等学校附属中学校
 白鷗の前身は, 府立大第一高女です。創立120年の伝統のある学校です。その理念は「開拓精神」とあります。女子に開拓精神とはそぐわない気もしますが, 礼儀作法に非常に厳しい学校ということで, その辺は女子校の片鱗を残しているかのようです。白鷗は, 台東区にあり, 場所的には, 上野と浅草の間にあります。下町ということもあるのでしょうか, 学校のカラーは, 「伝統文化を学ぶ」というところにあります。そのため, 特別枠として, 日本の伝統文化に関する特技を持つ生徒を受け入れるのは, その特色の現れでしょう。日本の伝統芸能である歌舞伎のようなものが伝統文化の例のようです。
 附属校ということで, 高校からも入学してきます。附属校一般に見られるように, 高校入試を勝ち抜いて入学してくる子のレベルはかなり高いようです。そのために高校1年では, 内進生と高校入試生とは分けられて授業が実施されています。しかし, それも高校2になると解消し, 混合クラスになります。
 白鷗は, 都内で最初の公立中高一貫校ということで, 先駆的な役割を担っていたように思います。しかし, 他の一貫校と違い, 併設つまり附属型とされたことで, 一貫校の長所をどこまで貫徹できるのか, 疑問のところです。一説には, 中高一貫校の場合, 先取り授業で, 既に中3時には, 高校の科目を履修するので, 内部生が高校入試で入学してくる生徒に比べて有利だという意見もあるようです。中には, 外部生がそのためについてこれないなどという意見もあるやに見えます。しかし, 果たしてそうなのでしょうか。たとえば, 慶應高校の英語の入試問題は, これはもう大学入試のセンター試験並みの英文です。これを50分で解釈して, 設問に答えてゆくとなるとそれはもう大変な英語力が必要とされます。数学だって, 同じです。外部生は, 確かに, 高校数学はやっていませんが, 慶應の数学を50分で解くとして, その数学力ひいては能力の高さは尋常ではありません。こういう子が激しい入学試験を勝ち抜いて入学してきたとします。内部生の先取り授業か何かは知りませんが, 受験という厳しい環境とは無縁のぬるま湯でのんびりやってきた子と厳しく鍛え抜かれ能力を深めてきた子との差は歴然としていると思います。高校入試で入学した子たちが1年もすれば高校科目で凌駕することは目に見えています。事実今度は大学の話しですが, 慶應高校から内部進学した者と大学受験で入学した者との差も歴然としたものです。内進生が英語や数学で大学の単位試験で苦労しているのは周知の事実です。一貫校といっても, その長所を生かしきれない附属型の宿命みたいなものがあるのではないでしょうか。
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