草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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「心の指導」に加筆修正&適性対策のこれから

2010年01月24日 12時08分00秒 | 
◎「心の指導」第1編「指導の神髄」
●「教えるのは矛盾」より
 注
 本日は私の「心の指導」第1編に加筆修正した原稿となります。「心の指導」を執筆したのは平成9年10月ころでした。その当時と今では, 私の指導経験もかなりに豊富となり, それまでに読んできた書物の量も膨大です。当時の状況を前提にして書かれた内容のため平成22年の今にそぐわないところもあります。そこで新原稿を書くようなつもりで加筆修正をしました。今後も「新・心の指導」を著すつもりで, 加筆修正の上, 内容紹介をしてゆきたいと思います。今回のテーマは「教えるの矛盾」とありますが, 受験生の立場から, 「受験度胸」ということについて読み取って欲しいと思います。度胸というのは, ある意味開き直りのことであり, 昨日の記事「試験の心構え」で述べた「囚われない心」を可能にするものです。

○教えるのは矛盾
 以下は, 京都大学名誉教授森毅著「数学受験術指南」(中公新書)の中から要約抽出したものです。
 『・・・』の部分が引用した部分です。
 『(今の子どもは問題を見て)全部, 解き方を教えてくれと言います。しかし, 解き方のわかっている問題というのは問題という定義に矛盾している。本来, 問題というのは, 解き方がわからんから問題なんです。解き方がわかっている問題は罪悪です。まず解き方を覚えて, その覚えた方式で解くスタイルにしている。出来るのは, 覚えてるから出来るというわけです。わかってるから解き方を考えることが可能で, したがって出来るというふうに, 構造的になっていない。憶えることとわかることは, かなり違ってて, 憶えたことというのは断じて忘れるものである。ところがわかったことというのは, これは相当凄いことをせんとわからん状態に戻れない。(ところが今は)わかること以前に, 憶えて出来るという格好になっている。』
 『多くの問題を解こうと急ぐのはムダだと思う。急ぐのは, やったことのある問題が受験本番で出るかもしれない, という幻想からきている。受験本番では, やったことのない問題が出るものだ, と居直ったほうが, 受験生度胸として, 絶対に有利になる。それで, 問題をたくさんこなす, なんてことにあせらなくてよい。それよりは, 一つの問題についてでも, いろんな角度から, トコトン検討しておくほうが, むしろ力がつく。できるだけ少量の訓練から, できるだけ良質の力を身につけること, これが技術の獲得ということである。量にたよるというのは, 勤勉という名の知的怠惰にすぎない。』
 
 引用が長きにわたりましたが, 日本の数学の第一人者である森先生の意見が, 私の指導理論とあまりにも一致するのに, まず, 驚きました。森先生の著作に触れたのはここ二, 三年のことですが, 森先生の考え方は竹の会の私の実践してきた指導法そのままでした。
 最近では, 「数学は暗記だ」などという本がベストセラーになったりしています。その本の著者は灘高から東大医学部へと進んだもともと能力の高い人です。世間の並みの高校生たちにはとても真似のできない代物だと思います。私は並みどころかかなりに優秀な高校生たちがこの「数学は暗記だ」に心酔し, 結果失敗した例を知っています。
 かつて, 「先生, 数学は問題の解き方を教えて覚えさせればいいと思います。考えさせるだけではだめです。」と抗議してきた母親がいました。そういう母親はほかにもいましたが, いずれもなかなか子どもの数学が伸びないのに業を煮やしてのクレームでした。

 森先生は次のように述べられています。
 『とかくあせって, 早く正解を手に入れようとしたがるものだ。しかし, 正解がわかってから, 数学の力がつくわけではない。数学の力がつくのは, 正解に達する以前にある。手がかりを求めたり, 行き詰って別の道を探したり, それが数学の力であり, 受験本番の力でもある。なるたけその過程を大事にしないソンだ。受験勉強のうまいかどうかは, この正解以前の段階を, どう利用しているかにかかる。それは教えられないものだが, 正解以前の自分を見る習慣を持つと, なんとなくコツが身についてくる。』

 私はよくヒントをいいます。ヒントは基本のしくみに関係するヒントです。これだけヒントの由来を説明すれば後は自分で考えろと私は言っています。決して何から何まで教えているわけではありません。頭から答えが出るまでいちいち説明していたのでは考える力を育てることなんか土台できるわけはありません。そういうふうな教わり方をした子どもは結局頭の使いどころがわからず, 答えの出し方をまねして覚えるだけになってしまうのです。入試でやったことのある問題が出るなどと思わないほうがいいのです。未知の問題に手がかりを見つけてなんとかくらいついてゆく, そのくらいつき方をこそ学ぶべきなのです。暗記の勉強なんて役にはたたない。
 考える手がかりを探すこと, わかることにエネルギーを使ってきた数か月と解き方を教わって覚えることに費やした数か月とでは, もはや取り返しのつかない結果をもたらすことは疑いありません。覚えるべきことがらは右肩上がりに増えていきます。しかし, 人間は覚えたものは忘れるようにできているのです。忘れてしまえばあとには何も残っていない。手がかりを探す術を学んでこなかった者にとって暗記したことが消失してしまえばゼロです。入試というものが未知の問題が通常の事態とすれば暗記の勉強は的外れです。

◎私立と公立一貫校の偏差値比較
筑波大学附属駒場中学校
開成中学校
慶応義塾中等部
麻布中学校
桜蔭中学校
駒場東邦中学校
筑波大学附属中学校
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女子学院中学校
雙葉中学校
白百合学園中学校
武蔵中学校
早稲田中学校
海城中学校
東京学芸大学附小金井中学校
早稲田実業学校中等部
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お茶の水女子大学附属中学校
鴎友学園女子中学校
攻玉社中学校[国際]
東京学芸大学附世田谷中学校
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学習院中等科
明治大学附属明治中学校
暁星中学校
芝中学校
渋谷教育学園渋谷中学校
巣鴨中学校
東京学芸大学附属竹早中学校
本郷中学校
立教女学院中学校
立教池袋中学校 *竹の会合格
穎明館中学校
学習院女子中等科
吉祥女子中学校 *竹の会合格
小石川中等教育学校
國學院大學久我山中学校
[ST]
城北中学校
東洋英和女学院中学部 *竹の会合格
大妻中学校
攻玉社中学校[普通]
光塩女子学院中等科
頌栄女子学院中学校
世田谷学園中学校
東京農業大学第一高校中等部
東京学芸大学附属国際中等校
法政大学中学校
武蔵高等学校附属中学校
大妻中野中学校[アドバン]
共立女子中学校
両国高等学校附属中学校
九段中等教育学校 *竹の会合格
立川国際中等教育学校
帝京大学中学校
東京女学館中学校
白鴎高等学校附属中学校
明治大学付属中野八王子中学校
桜修館中等教育学校 *竹の会合格
成城中学校
高輪中学校
日本大学第二中学校 *竹の会合格
明治大学付属中野中学校
大妻多摩中学校
國學院大學久我山中学校[一般] *竹の会合格
成城学園中学校 *竹の会合格
獨協中学校 *竹の会合格
大妻中野中学校[一般] *竹の会合格
恵泉女学園中学校

実践女子学園中学校[普通]
 *竹の会合格
十文字中学校[スーパー特選]
芝浦工業大学中学校
日本大学第三中学校
日本大学豊山女子中学校
日本大学豊山中学校
昭和女子大附属昭和中学校 *竹の会合格
東京大学教育学部附属中学校 *竹の会合格
日本大学第一中学校

注記 両国や小石川などは, 私立芝中クラスです。事実そのクラスの児童が適性対策なしに受けて合格した事例もけっこうあるようです。算数だけでなく, 読解力ひいては作文力, それに理科や社会の重要テーマについての正確な理解を勘案して, 私立中受験生でも芝中クラスの能力が, 都立中合格には必要となるとなると, 安易に都立一貫校を受験したいなどということがいかにも無謀なことになります。算数のできる子ほど適性の得点がいいというのも, 経験的事実です。これからは作文つまりは読解訓練もさることながら, 適性対策の要はあげて高い算数力の養成に集約してゆくように思います。
注記 偏差値を削除しました。
偏差値は三大大手でもまちまちであり, 受験者層に応じてデータも変わるものであり, どこかの偏差値を出してみても無意味と思ったからです。上記はだいたいの順位と思っていただけばよく, 大手塾の偏差値でも順番が微妙に違っています。
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