草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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中高一貫校は本当にいいことなのか

2009年12月10日 11時41分07秒 | 
●中高一貫校は本当にいいことなのか

 中高一貫校制度は, 平成11年(1999年)に文科省によって制度化されました。それ以降も既存の私立中高は, 併設中学があり高校に無選抜で上がれるしくみはそのままですが, 11年以降は都道府県への届け出がなければ, 既存の私立や国立附属でも中高一貫校とは認められないこととなりました。
 中高一貫校と認められるのと認められないのとでは何かが違うのかということですが, これが認められると, 名実ともに「高校の指導内容を中学で実施できる」ことになります。もちろん私立中・高型では, 併設中学から高校への無選抜入学と「高校の指導内容の先取り学習」は, 常識です。中3で高校1年の教科をやっている私立は偏差値の高い私立ならごく普通のことです。しかし, 11年以降は, これが法令違反になる。少なくとも建前上はそうなるはずです。そこで多くの名門私立が届け出を出しています。ところで私立では, 併設の中学から高校へ入学するときは, 内部生からもちゃんと入学金その他を取っています。が, 一貫校の届け出をしたのなら, もはや1つの学校なのですから, これはできないはずなのではないでしょうか。実際はどうなのか知りませんが。
 こうして中高一貫校として都道府県に認められれば, 公然と先取り学習ができることとなりました。先の入学金徴収の問題はどうなったのか不明ですが, 都内の私立が大挙一貫校設置の届け出を出しています。去年でしたか, 高校の必修科目の未履修の問題が噴出し, 高校卒資格がないので大学を受験できないということが社会問題化しましたが, 先取り学習ができれば, 未履修も回避できると考えたものでしょうか。未履修問題は公立の進学校や有名私立進学校の実態でした。
 多くの親御さんたちが, 考えておられるのは, 中学併設型高校では, 高校入試を回避できるということではなかったかと思います。それに加えて偏差値の高いところでは, 先取り授業を事実上可能にし, 大学受験に有利であると考えたものでしょう。大学附属型の場合は, 大学受験も回避できるということで, こちらはこちらで大人気です。中学併設高校であろうと, 中高一貫校であろうとカリキュラムを自由に組めるというのが, 魅力とされていることは確かです。もちろんその背景には大学受験に有利であるという認識があるわけです。
 公立中高一貫校は, それまで経済的理由で, 私立をめざせなかった層を一気に受検に向かわせることとなったのです。最近は公立中高一貫対策を看板にした大手塾が大繁盛です。親たちも合格できれば, 学費はタダみたいなものだからと開き直った感があります。入学できれば, 高校入試はなく, 大学入試の面倒も見てくれるというわけで, 何もかもいいことづくめのようです。それまでの公立中学と違い, どこの公立一貫校も立派な教育目標を掲げ, 理想の教育実現に向けて情熱に溢れています。とにかくも適性検査という篩いを潜り抜けて入学してくるのだから, 生徒の質も揃っているのではないかと楽観もします。
 
 しかし, すでに様々な問題性も指摘されています。
 ・受験競争の低年齢化に拍車をかけることにならないか。
  この点に関しては, 「だから」公立では, 学力試験を行わないのだとされています。私は, 適性検査という名の選抜試験化しているのではないかという実感はもっています。特に東京都の適性問題は難度が高く, 先天的な能力に恵まれた者やなんらかの訓練をされた者が, 選抜される可能性に満ちているのではないでしょうか。
 ・心身発達の差異の大きい生徒を理想の教育目標で落ちこぼれもなく円滑に引っ張っていけるものなのでしょうか。目標はバラ色でも現実は大学受験をちらつかせています。それまでの受験校に見られた落ちこぼれ現象はいずれ不可避と思えるのですが, どうでしょうか。とにかく6年間同じ生徒が一つの集団に固定されるのです。これは中高一貫の裏返しです。学習環境になじめない生徒が必ず出ると思います。クラスになじめないとか, いじめがあるとなれば, 6年間もの 固定は逆に苦痛となるでしょう。途中退学ということになれば, 受け皿は結局公立中です。中3での退学だと高校入試は無理でしょう。高校での退学だと, まず編入は無理です。
 実は私立や国立ではすでに早くから, そして公立中高一貫校でも, 勉強についていけないとか, 学校になじめないという理由での退学が, 増え続けています。彼らはたいていは地元の公立中に転校していきますから, その後の状況はかなり深刻です。不登校になる子が多いと聞いています。多くの公立中高一貫校をめざす親御さんは自分の子も例外ではないという覚悟が必要でしょう。
 昔から, 中学併設型高校や大学までエスカレータ式の中学では, 避けて通れない問題があります。「高校入試がないことからくる」勉強しない症候群です。巷では「中だるみ」などとも言われます。高校入試を回避できるからと一貫校を選んだけど,それが裏目に出たという感じです。高校入試がないから, 全く勉強しないという子が必ずしかも大量に出る。「こんなに勉強しないのなら, 高校入試があったほうがよかった」と嘆いても後の祭りです。あるいは, 「大学受験に有利だ」と考えたはずなのに, 勉強しないのでは有利もなにもあったものではありません。

●中途退学の恐ろしさ
 かつては私立中受験の児童を学校は傍観者として横から見てきたのではないでしょうか。ところが, 全国学力テストが始まり, ただ見ているわけにはいかなくなった。親も子も競争に駆り立てられるようになってきています。そういう中で, 競争からはじかれた低学力の子どもたちが, 大量に出てくる。かれらの歩む道は, 中学では不登校, 高校では中退という必然につつまれている。小学校では全国学力テストでインチキが横行した。学校間の点数競争がインチキを広げた格好です。教育者というが, 聖職者でもなんでもない。小学校低学年から授業内容が全くわからないままに,放置されてきた子たちがやがて公立中へ入学していく。放置されてきた理由はいろいろあるであろう。昼も夜もはたらく親が多い都会では, 親のいない夜を子どもたちだけで過ごす家も多いのではないか。およそ勉強とは無縁の生活を送ってきた子どもたちが, 中学で厄介者になるのは必然の成り行きであろう。およそ学ぶことの大切さを教えられることのなかった子たちの未来はどのようなものであろうか。
 学校を止めて社会に放り出されたときに, 子どもたちは社会の現実を知ることになるのです。高校生だったら, 雇ってくれたバイトも中退すればまず雇ってくれないのです。就ける仕事は限られています。仕事をいくら頑張っても, そのことが次の仕事に評価されることはありません。レジの仕事はおばさんに独占されているので,深夜しかない。あるのはガソリンスタンド, 建設業, ケータイショップ, スーパーなどの臨時雇いで結局飲食店ではたらくしかないというのが現実です。
 子どもたちが, このような現実を身近なものとして理解するはずもなく, 勉強しないことがもたらす恐ろしい結果をまるで自分に関係ないと部活に興じ, ゲームに興じ, テレビに興じ, 親は自らの忙しさにかまけて子どもたちの勉強しない症候群を大目にみるのです。かまってやれない分, そういうことを野放しにするのです。あるいは兎に角も塾に放り込むという無理難題を子どもに押しつけるのです。そのようなしかたで子どもが「はい, わかりました」と勉強するはずはないのに。そもそも 親が学ぶこと, 勉強することで自分の人生を切り開いてきたという人生がないために, 「学ぶ」ことに対する価値意識は低調で, そのことが子どもたちの真髄にしみ込んでいます。口先で「勉強しなさい」と言ってみたところで, 子どもは親を見抜いています。
 公立中の学力低下の真因はいずれにあるのか, 考えさせられることが多いですね。

●12月もいよいよ中旬に突入です。今週は12日に竹の会の教え子の結婚式に招待されて出席の予定です。

 式辞
私のような一介の塾教師「あたり」が結婚式などという晴れがましい場所に顔を出せたものかどうか, どうも違和感は禁じえません。私は立派な出席者たちの中でひとり場違いな感覚を持ちながら, きっと式の間中, 自分の姿を覚めた目で揶揄しているのかもしれません。それに塾の先生が招待されるというのも列席者はもちろん世間の方には奇異な感じがされるものと推測に難くありません。しかし, 竹の会では塾の子どもたちが他の世間的塾とはかなり違うのは確かです。竹の会の真摯な思いは子どもたちにいい思い出となって残るようです。よくOBやOGがひょっこり訪ねてきます。
 結婚することとなった君は, 小学6年のあるときにお母さんに連れられて竹の会にやってきました。小4のときから通っているという日能研で算数が伸びなくなったといってやってきたのでしたね。小6ながら体格のいい整った面持ちを持った君の目は思慮深く澄んだものでした。私の印象に強くそのことが残っています。君は, それからなんと高校3年になるまで, 竹の会に通いましたね。高校のときの君は, もう学ぶこともなかったのではないかと思うのです。しかし, 君は律儀に休まず通いました。君のような知能も高く優秀な人が, 私の指示を素直に履行してくれているのを見て私は内心感動していましたし, 感謝もしていました。
 中学受験で慶應に失敗したときから,君は竹の会の熱心な支持者になりました。中学時代の君は柔道部の部長をしたり, 生徒会長を2期やったりと, 社会性と協調性に富み, 級友の信望の厚い生徒でした。温厚な人柄で, いつも笑みを湛え, 礼儀正しく最高の敬語で私を敬ってくれました。成績はいつも学年トップ10でした。最高2番ということもあったやに記憶しています。とにかくも君は3年間余程の理由がない限り休むこともなく, 毎日竹の会に通い続けたのです。中3のときは竹の会の今でいうパスポートコースでほとんど竹の会に入り浸りでした。年末の代々木ゼミナールの全国模試で君の名前が載ったときは私は成績表の載った小冊子を何冊も仕入れました。高校受験では, 君は早稲田実業商業の合格を皮切りに, 早稲田実業普通部合格, 立教合格, 慶應一次突破と快進撃を続けました。あのとき渋谷区で早稲田実業に合格したのは君1人でした。しかも, 河合塾・代ゼミ・サピックスなどの大手に通う級友たちには一流校にほとんどが失敗し, 君よりいいところに合格した者はだれもいなかったのです。君は竹の会育ちの生粋の竹の会っ子でした。私は大手に通いながら竹の会にも通い合格というパターンが嫌でした。結局大手のおかげで合格したといわれるからです。
 君が竹の会の真実を証明してくれました。その後, 竹の会からは竹の会育ちの生粋の竹の会っ子が, 慶應や早稲田に合格するようになりました。君が竹の会を信じてくれた君がその先駆者でした。私はいつまでも君の竹の会に対する敬愛の気持ちを忘れることはないでしょう。早稲田に入学後も君はよく陣中見舞いにきてくれました。君の変わらぬ竹の会への思いに心から敬意を表し, 感謝の意を述べたいと思います。
 ご結婚おめでとうございます。こころより君のいや君たちご夫婦を敬愛し, 幸せを祈り続けたいと思います。

 
 
●後記 
 冬期指導について。
 ・会員ほぼ全員の申込が済み, レジュメ準備等の負担軽減のため申込終了としましが, 推薦の結果待ちの方がいることがわかりました。そういうお申し出があれば申込は推薦の結果しだいということでかまいません。
 ・冬期未申込者欠員分につきましては, 外部生(2名予定)を受け入れることとしました。竹の会の冬期指導を希望される方はメール等でお問い合わせください。
 ・12月は, 日程が変則になっている日があります。お間違いのないようにしてください。
  17日(木)は実施, 18日(金)はお休みです。
  23日(祭日)は, 1時~6時の実施です。
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