竹の会にも公立中高一貫校をめざす小4や小5が何人かいます。そういう子どもたちに合格レベルの思考力をつけていくのが, 竹の会の責務です。現在竹の会の指導は, 常識としての国語能力の育成そしてもっとも重要と考えられる「思考力の育成」に向けられています。後者のためには現在「思考の素」と題した私の創作作品が使われています。気になる方もいるかも知れませんが, 現在正面から理科・社会を私立中対策のようにやらせるというようなことは一切やっていませんし, これからもそのつもりはありません。それは公立中高一貫校では理科や社会でさえも, それは思考力を試すという目的の手段として使われるということがはっきりしているからです。だから, 一般に問われる理科や社会の知識が全く出題されないということが常態なのです。問題はむしろ子どもたちがどれくらい思考力をつけているかなのです。出題には本質的な問いが突如として出てくることもあります。私は今年の特に都立の過去問はそれは何時間を何十日かけても読んでは考え考えては読んで出題者側の意図を探らなければならないと思っています。指導を的確にするために必死に読み解かなければならない私の緊急の課題です。
さて, 今日は, 特に都立中高一貫校が求める「思考力」の水準というものの一端を考えるためのひとつの例を提示してみたいと思います。
次の設問は, 平成20年実施の都立白鴎の適正検査のものです。
「問題1 東京マラソンのコースが前のコース図のようになった理由を, あなたはどのように考えますか。東京のもつ特徴を取り上げながら, 会話文やコース図を参考にして書きなさい。
問題2 会話文の中にあるように, お父さんと最も速いランナーとが同時にスタートした場合, お父さんは, 最も速いランナーと最大何回すれ違う可能性がありますか。また, なぜそのように考えたかを計算結果を示しながら説明しなさい。・・・
問題3 円の面積を求める公式, 「半径×半径×円周率」について. なぜこの公式が成り立つといえるのか, 図を用いるなどして説明しなさい。ただし, 円周の長さは「直径×円周率」であることを使ってもよいこととします。」
問題1については, 会話文に「東京マラソンのコースはいろいろと考えられて作られたそうだ。お父さんは東京マラソンのコース42.195kmを, 楽しみながら走りたいと思っているんだよ。」の中に答えの重要なヒントが隠されています。「東京の持つ特徴」とは何か想像しなければなりません。子どもたちに求められる想像力について検査しています。ここでは, 普段勉強で, ただ知識を与えて覚えさせるということでは, 何も答えられないということが示されています。普段から, 「なぜ」と考えるくせをつけること, その意味で指導のレジュメもそのようなものを創作していくことが必要でしょう。
問題2については, 会話文にはお父さんは3時間10分かかること, もっとも速いランナーだと2時間10分くらいかかることが示されています。またコース図には, A⇒B⇒C⇒B⇒D⇒B⇒ゴール というような経路がしめされており, 5kmごとに距離が付されています。すれ違う可能性のあるのは, B-C間とB-D間です。つまり最大2回です。たとえば, B地点でお父さんが1回目に通過する時間ともっとも速いランナーが2回目に通過する時間を調べれば, すれ違うかどうかがわかります。それには, それぞれの分速を調べなければなりません。42.195km÷2時間10分 のような計算が必要です。分速何mがわかれば, A地点までの距離÷速さ といった計算が必要です。同じような計算を何回かしなければなりません。計算ミスをしやすい問題です。普段から計算力を鍛えておかないとどうにもなりません。計算はできたとしても, 理由をつけて結論を出すという過程がきちんとできる程度の能力が求められています。おそらくこの問題が合否を分ける問題でしょう。これができない子はまず不合格となるのは間違いありません。読み取りにくい会話文やコース図から必要な情報のみを取捨選択し, 解答を構成して結論を導くというそういう能力が求められています。思考力がない子には絶対に解答不能です。私立中受験対策をやってきた子には有利かもしれません。しかし, 思考力さえつけていれば基本問題です。現在の竹の会の「思考の素」シリーズはかなり役に立つと思いますが, 今後は, さらに特化した新シリーズを用意する必要があるでしょう。
問題3は, 意表を突く問題でした。特に私立受験の子には, 当然の前提としてきたところで深く考えたことのない子ばかりでしょう。指導要領では一応説明が義務付けられていますから, まじめに学校の授業に取り組んできた子にはよかったかもしれません。いずれにしてもこの問題はボツです。できなくても合否に関係ない問題です。問題はこのような本質的問いがこれからも問われる可能性が強いということです。たとえば, 分数の割り算で割るほうの数をひっくり返してかけるのは, なぜか, というような根源的問題について, これからは, 地道にレジュメ化して子どもたちに経験させておかなければならないとは思いますが, いずれにしても10人中9人ができないような類の問題はどうでもいいことなのです。問題は, 2番のような問題に対して, 確実に理由をつけた上で答えられるかということなのです。時間に追われる中の解答は, 勘違いや計算ミスで自滅する子も多数いるはずです。すべての問題を解くというような指導をしているとこれは必ず失敗します。解くのは, 誰でも何かを書く問題1と思考力を示す問題2です。確実に解ける問題のみで勝負すれば十分です。
これから, 詳細に分析を重ねて, 来年の春には完璧な指導体系を組みたいと思います。
過去問を「やる」ということに関しては, 素人の陥りやすい愚行というものがあります。たとえば, 上の例の問題3と同じ問題はもう二度出ないということです。あるいは, 問題2を何べんも習って解けるようにしても, もう同じ思考回路をたどる問題は二度と出ないということです。今度はまた新たな複雑な設定のもとに, 思考力が試されるだけです。全く新しいことが問われるだけです。過去問をただやるだけでは, なんの対策にもならないということです。問題は, 過去問を踏まえて, どのような問い口に出会っても, 慌てず, オーソドックスな思考方法で解明していくという態度です。何が出されてもその場で慌てず「考える」という態度が大切なのです。過去問をできるようにするということはナンセンスです。普段から未知の問題に対して, 推理してなんとかして切り抜けるという地道な努力こそが重要なのです。過去問をやる人の陥る失敗の大半は過去問をできるようにすることで安心するという点にあります。一流の学校なら二度と同じ問題は出しません。ただし, 私立では出題傾向というものは確かにあります。だから似たような問題で練習するということが無駄だとはいいません。確かに, 慶応などの問題を見てみると過去に何度か問われたことのあるパータンの問題があります。しかし, たとえば平成19年の問題と平成20年の問題では, やはり未知の問題という印象です。これが公立だと, まず同じ問題を出すことは100%ないでしょう。
ところで, 都立の適正の問題には, 理科や社会について, 全く出さない学校もあります。また出しても, 小問が1問で, しかも, 私立で問われるようなベタな知識は一切ありません。私は現在竹の会の子どもたちに, 市販の教科書タイプのテキストを「読書」するように指示していますが, 理科にしても社会にしても「思考力」を試すという視点の関連において問題化されており, その場合に問われる想像する力が物をいうつくりになっています。受験用の参考書にも正面から載っていないことが問われますので, 私立受験組に有利とも言えません。私の教材作りもそのような出題者の意図を推し量ってのものとならざるを得ません。「教養」シリーズの執筆はそのへんのところから, 思考力を試すという基準に照らし合わせながら, 書いているものです。
思考力をつけるということの意味を考えるために, このところ都立過去問の分析に追われています。冬期指導の準備もあり, なかなかブログに手が回らないことをお許しください。
さて, 今日は, 特に都立中高一貫校が求める「思考力」の水準というものの一端を考えるためのひとつの例を提示してみたいと思います。
次の設問は, 平成20年実施の都立白鴎の適正検査のものです。
「問題1 東京マラソンのコースが前のコース図のようになった理由を, あなたはどのように考えますか。東京のもつ特徴を取り上げながら, 会話文やコース図を参考にして書きなさい。
問題2 会話文の中にあるように, お父さんと最も速いランナーとが同時にスタートした場合, お父さんは, 最も速いランナーと最大何回すれ違う可能性がありますか。また, なぜそのように考えたかを計算結果を示しながら説明しなさい。・・・
問題3 円の面積を求める公式, 「半径×半径×円周率」について. なぜこの公式が成り立つといえるのか, 図を用いるなどして説明しなさい。ただし, 円周の長さは「直径×円周率」であることを使ってもよいこととします。」
問題1については, 会話文に「東京マラソンのコースはいろいろと考えられて作られたそうだ。お父さんは東京マラソンのコース42.195kmを, 楽しみながら走りたいと思っているんだよ。」の中に答えの重要なヒントが隠されています。「東京の持つ特徴」とは何か想像しなければなりません。子どもたちに求められる想像力について検査しています。ここでは, 普段勉強で, ただ知識を与えて覚えさせるということでは, 何も答えられないということが示されています。普段から, 「なぜ」と考えるくせをつけること, その意味で指導のレジュメもそのようなものを創作していくことが必要でしょう。
問題2については, 会話文にはお父さんは3時間10分かかること, もっとも速いランナーだと2時間10分くらいかかることが示されています。またコース図には, A⇒B⇒C⇒B⇒D⇒B⇒ゴール というような経路がしめされており, 5kmごとに距離が付されています。すれ違う可能性のあるのは, B-C間とB-D間です。つまり最大2回です。たとえば, B地点でお父さんが1回目に通過する時間ともっとも速いランナーが2回目に通過する時間を調べれば, すれ違うかどうかがわかります。それには, それぞれの分速を調べなければなりません。42.195km÷2時間10分 のような計算が必要です。分速何mがわかれば, A地点までの距離÷速さ といった計算が必要です。同じような計算を何回かしなければなりません。計算ミスをしやすい問題です。普段から計算力を鍛えておかないとどうにもなりません。計算はできたとしても, 理由をつけて結論を出すという過程がきちんとできる程度の能力が求められています。おそらくこの問題が合否を分ける問題でしょう。これができない子はまず不合格となるのは間違いありません。読み取りにくい会話文やコース図から必要な情報のみを取捨選択し, 解答を構成して結論を導くというそういう能力が求められています。思考力がない子には絶対に解答不能です。私立中受験対策をやってきた子には有利かもしれません。しかし, 思考力さえつけていれば基本問題です。現在の竹の会の「思考の素」シリーズはかなり役に立つと思いますが, 今後は, さらに特化した新シリーズを用意する必要があるでしょう。
問題3は, 意表を突く問題でした。特に私立受験の子には, 当然の前提としてきたところで深く考えたことのない子ばかりでしょう。指導要領では一応説明が義務付けられていますから, まじめに学校の授業に取り組んできた子にはよかったかもしれません。いずれにしてもこの問題はボツです。できなくても合否に関係ない問題です。問題はこのような本質的問いがこれからも問われる可能性が強いということです。たとえば, 分数の割り算で割るほうの数をひっくり返してかけるのは, なぜか, というような根源的問題について, これからは, 地道にレジュメ化して子どもたちに経験させておかなければならないとは思いますが, いずれにしても10人中9人ができないような類の問題はどうでもいいことなのです。問題は, 2番のような問題に対して, 確実に理由をつけた上で答えられるかということなのです。時間に追われる中の解答は, 勘違いや計算ミスで自滅する子も多数いるはずです。すべての問題を解くというような指導をしているとこれは必ず失敗します。解くのは, 誰でも何かを書く問題1と思考力を示す問題2です。確実に解ける問題のみで勝負すれば十分です。
これから, 詳細に分析を重ねて, 来年の春には完璧な指導体系を組みたいと思います。
過去問を「やる」ということに関しては, 素人の陥りやすい愚行というものがあります。たとえば, 上の例の問題3と同じ問題はもう二度出ないということです。あるいは, 問題2を何べんも習って解けるようにしても, もう同じ思考回路をたどる問題は二度と出ないということです。今度はまた新たな複雑な設定のもとに, 思考力が試されるだけです。全く新しいことが問われるだけです。過去問をただやるだけでは, なんの対策にもならないということです。問題は, 過去問を踏まえて, どのような問い口に出会っても, 慌てず, オーソドックスな思考方法で解明していくという態度です。何が出されてもその場で慌てず「考える」という態度が大切なのです。過去問をできるようにするということはナンセンスです。普段から未知の問題に対して, 推理してなんとかして切り抜けるという地道な努力こそが重要なのです。過去問をやる人の陥る失敗の大半は過去問をできるようにすることで安心するという点にあります。一流の学校なら二度と同じ問題は出しません。ただし, 私立では出題傾向というものは確かにあります。だから似たような問題で練習するということが無駄だとはいいません。確かに, 慶応などの問題を見てみると過去に何度か問われたことのあるパータンの問題があります。しかし, たとえば平成19年の問題と平成20年の問題では, やはり未知の問題という印象です。これが公立だと, まず同じ問題を出すことは100%ないでしょう。
ところで, 都立の適正の問題には, 理科や社会について, 全く出さない学校もあります。また出しても, 小問が1問で, しかも, 私立で問われるようなベタな知識は一切ありません。私は現在竹の会の子どもたちに, 市販の教科書タイプのテキストを「読書」するように指示していますが, 理科にしても社会にしても「思考力」を試すという視点の関連において問題化されており, その場合に問われる想像する力が物をいうつくりになっています。受験用の参考書にも正面から載っていないことが問われますので, 私立受験組に有利とも言えません。私の教材作りもそのような出題者の意図を推し量ってのものとならざるを得ません。「教養」シリーズの執筆はそのへんのところから, 思考力を試すという基準に照らし合わせながら, 書いているものです。
思考力をつけるということの意味を考えるために, このところ都立過去問の分析に追われています。冬期指導の準備もあり, なかなかブログに手が回らないことをお許しください。