草枕

都立中高一貫校・都立高校トップ校 受験指導塾「竹の会」塾長のブログ
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週刊新潮の武田邦彦非難記事のこと

2011年07月25日 12時28分36秒 | 
 週刊新潮7月28日号が、中部大・教授の武田邦彦を猛烈に非難しています。「放射能を恐れる人のカリスマ」と呼ぶように、新潮は、低線量被曝は体にいい派です。武田の言う年間1ミリシーベルト基準には、根拠がないという論調です。確かに、私も年間1ミリシーベルトという数値には根拠はないとみています。が、新潮は、それ以上でも大丈夫という趣旨での主張です。私は、1ミリシーベルトでも危険という趣旨で述べていますから、まるで真逆の結論です。新潮は、低線量被曝は体にいいという説をやたら強調しますが、このへんになるとどうもなにやら原発推進派の臭いが漂い始めます。さらに新潮は、自然界の放射線被曝は害がないのではないかということで補強します。確かに、私もそれはそうなのだと思います。人工の核は体に蓄積されて濃縮されるが、自然の放射能は体から排出されるという言説が内橋克人の著書で紹介されていますが、新潮はかなりの勉強不足を感じさせます。年間1ミリシーベル論についても、新潮が「ある医療関係者」の取材から得た直線仮説なるものを紹介して、それがICRPに採用されたという説明をしていますが、他の様々な書物からの知見を合わせて考えると、そう単純な経緯ではないように思っています。
 ※直線仮説 1927年H・マラーは、ショウジョウバエに放射線を照射した実験から、放射線レベルに比例して2代目、3代目に奇形や障害が顕れるという仮説を立てた。
 現在、微量の放射線が、安全か危険かという点で、原発推進派と脱原発・反原発派には、大きな認識の差があるとされています。
 新潮は、武田邦彦が、放射能の専門家でもないのに、科学的根拠もないことを吹聴する男だと断じています。新潮によると、彼は、ただの「第一種放射線取扱主任者」であるのに、あたかも専門家のような顔をして「断言」しているというのです。私は、武田邦彦の書物を何冊か持っていますが、彼が、「自分は原発推進」の立場だとはっきり書いているのを知っています。ただ彼は今の安全対策が十分ではない原発は支持できないとも言っています。彼が、自身のブログで一昨年の5月5日に「放射線と人体の関係を研究している人の多くが放射線を少し浴びた方が発癌性が低いと考えている。でも、決して口に出さない。口に出すと袋だたきにあうからだが、民主主義だから専門家はおそれずに本当の事を言うべきだ」と述べ、2009年1月16日の原子力委員会の会合で「私は日本国にとって原子力以外にはエネルギー源が将来ないと思っています。原子力しかないということと、原子力が一番安全だということは当たり前じゃないか」と述べたとされていますが、もし事実だとすれば、先の自身が原発賛成論だと言明していたとしても、かなり欺瞞が見え隠れしていると思います。私は、この男の顔がどうも信用できない。それになんでも断言して決めつける論調も好きではない。新潮の非難は原発推進論からの非難であるが、私は、脱原発の立場でも、武田邦彦をかなり胡散臭く思っている。彼のブログには、1日50万ものアクセスがあるらしい。本もバカ売れで印税だけで3千万円は稼いだとのことだ。彼は、「強大な被曝は大体白血病になる。そのデータはものすごくある。250ミリシーベルト以上で白血球が減少し、被曝で骨髄が損傷し、白血病になるんです。そんなこと知らなきゃ、第1種放射線なんて受からないですよ」と言ったという。新潮の「チェルノブイリで白血病が多発したというデータはない」という質問に対するものである。
 白血病の多発云々の問題はともかく、彼が「第1種放射線なんて受からない」と言ったのは笑える。第1種放射線取扱主任者は資格試験です。放射線管理者になるための資格です。武田邦彦はこの資格を持っているに過ぎない素人なのであった。試験を「受けた」者が、試験の問題を作り実施する側の専門家よりも、詳しいはずもなく、飽くまで資格試験合格程度の話であり、しかも「管理者の資格である。またそういう資格を持っているということを口に出すところからして底が知れている。私は、彼の書物は一応買ってはみたが、「はしがき」だけ読んで読む気がなくなったので、彼の本はすべて教室の片隅に積まれたままである。
 ※武田邦彦は、資源材料工学が専門である。原子炉の耐震性に関する専門家として、原子力委員会の委員、原子力安全委員会の委員を務めてきたにすぎない。
 今はあこちで顔を出す小出裕章氏も実は、2006年あたりの論文で9.11のテロに関して「高々3000人程度が死んだくらいで」と述べていることを週刊ポストが指摘・批判しているが、そして実際に私もこの論文を読んでみたが、確かにあの表現はよくない。ただ小出氏は、アメリカはイラクやアフガニスタンで何万人もの人を殺しているという対比をしたもののようである。小出氏は、一方北朝鮮の核実験をアメリカなどの大国が非難し止めさせようとしているのはおかしいとも述べている。これをとらえて、週刊ポストは、小出氏を反日主義者と決めつけていたが、あの論文では、大国がこれまでやりたいだけ核実験をしてきて、他方で「やめろ」というのは「論理的に」不均衡な議論であると主張しているのだと理解できる。彼が逆説的に、北朝鮮の核実験に反対しているのは読んでとれる。
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