ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

本田秀伸、ついに世界挑戦

2002年11月17日 | その他
これほどボクシングファンに待たれていた世界挑戦者も近年では珍しい。
まさに「日本の切り札」WBC世界フライ級3位、本田秀伸が今月26日、
いよいよ世界王座に挑む。

かつて日本ライト・フライ級王座を6度も防衛し、当時の東洋太平洋王者、
田中光輝を下して「国内最強」を印象付けてから早2年半の歳月が流れた。
その間には現在世界でもトップの中のトップと評価される、メキシコの
マルコ・アントニオ・バレラとの密度の濃いスパーリングを数多く経験し、
そのバレラをして「本田は必ず世界を獲れる」とまで言わしめたほどだ。

日本では比較的世界挑戦のチャンスが多いはずの軽量級において、なぜ
本田はこれほどまでに待たされたのか。まず本田が所属するグリーンツダ
ジムの会長が病に伏し、挑戦交渉が思うように進まなかったこと。そして
何より、本田自身のボクシングスタイルが地味で素人受けしづらいことが
大きな理由だろう。

取り立ててパンチ力があるわけでも、傑出したスピードがあるわけでも
ない。本田の持ち味は相手の長所を殺し、変則的なタイミングでパンチを
当てるということだ。もちろん確かなディフェンス能力もある。
簡単に言えば技巧派である。血湧き肉躍る打撃戦を好むこの国において、
本田が一般的な人気を得られないのにはそういう理由がある。

しかし先の佐藤や保住の敗戦を見ても分かるように、世界ではパンチ力や
精神力だけでは通用しない。まず重要なのは技術や戦略なのだ。
その点、相手によって戦い方を変えられる頭脳的な本田のボクシングは、
年を追うごとに評価が高まる一方だ。

本田はこの世界戦を前に「勝つ自身は99%。残りの1%は神のみぞ知る」
と言った。もとより大言壮語とは無縁の本田の言葉だけに、期待は高まる。
きっと何度も王者を研究し、戦略を練ってきたのだろう。そのための時間も
充分すぎるほどにあった。今まさに、機は熟したのだ。

しかし不安材料はある。何しろ本田は、これまで一度も世界レベルの
選手と対戦したことがないのだ。いかにスパーリングでバレラという
超一流選手と何度もグローブを交えても、実戦と練習は違うだろう。
それに気の遠くなるほど待たされ、ようやく決まった世界挑戦だ。
本田に緊張感の途切れはないのだろうか。思い入れが強すぎる故に、
体が硬くなってしまったりしないだろうか。心配は尽きない。

それでもやはり、「あの本田がついに」世界の舞台に上がる、その事実
だけでもワクワクしてしまう。一体どんなボクシングを見せてくれるのか。
出来れば技術の粋を集めた、「ボクシングの真髄」を見せて欲しいものだ。