このところ日本でも、複数の世界戦を同興行で開催するケースが増えてきた。
「単品では売れないからだ」と揶揄する声もあるが、僕はいいことだと思う。
真剣勝負であり、また相手との噛み合わせに内容が左右される部分が大きい
ボクシングの試合においては、いつ名勝負が生まれ、逆にいつ凡戦が生まれるか
分からない。仮に凡戦になった場合、12ラウンドもある世界戦では特に
一般の視聴者には退屈に感じられるだろうし、観戦に行ったファンにも
「今日はハズレだったなあ」という思いを抱かせる恐れもある。そこで
楽しみな試合がいくつも組まれていれば、「ハズレ感」を減らすことが出来る
というわけだ。
そんな流れの中、来週3月6日にまたしてもトリプル世界戦が行われる。
下にも書いた戸高秀樹の初防衛戦。西岡利晃が4たびタイの安定王者ウィラポンに
挑むWBC世界バンタム級タイトルマッチ。そしてこれも再戦となるWBC世界
スーパー・バンタム級タイトルマッチ、王者オスカル・ラリオス対仲里繁。
しかもこの日の前座では、今最も世界挑戦が待たれる男、佐竹政一が世界ランカーの
カルロス・マウサと「世界前哨戦」を行い、更には日本スーパー・バンタム級の
タイトルマッチまである。非常に豪華な興行だ。
前回は判定の上では引き分けだったとはいえ、かなり分の悪い試合を演じて
しまった西岡に、名誉挽回の時は訪れるのか。同じ相手に4度も挑戦すると
いうのは世界でもあまり例を見ないし、ボクシングファンの間でも冷たい声が
聞こえてきているが、ここは素直に勝利を期待したい。年齢による衰えを
試合運びの巧さでカバーする鉄壁の王者に対し、前回の不調の印象が強い
西岡有利の予想は少ないが、西岡がもしいいコンディションで当日を迎えれば、
能力的にも王座奪取の可能性は決して低くないと思う。
しかし、西岡とウィラポンの間には、「薄そうに見えて実は厚い」とでも
言えそうな、破りがたい壁を感じるのも事実だ。第1戦から3戦まで、西岡は
あらゆる策を立てて戦ったが、それでも常に王者が一枚上手だったのだ。
ボクサーとしての能力は決して低くない西岡だが、果たしてこれ以上の「策」が
何かあるのかと思うと、どうしても悲観的になってしまう。個人的には、
もうここまで来たら自分のセンスだけを信じて、思うがままに戦ってみても
いいんじゃないかと思う。それで負けたのなら、もはや心残りもないだろう。
一方、昨年の「年間最高試合」に選ばれたラリオスと仲里の激闘は、ウィラポン-
西岡の第3戦より遥か前に行われたにもかかわらず、まだ記憶に新しいところだ。
その両者が再戦するのだから、ファンには実に待ち遠しい。前回は、5ラウンドに
KO負けは決定的かとさえ思わるほどのダウンを喫した仲里が、その後目が覚めた
かのような怒涛の反撃。ラリオスの顎を折る強烈なパンチを叩き込んだが、必死に
防衛を図るラリオスのアウトボクシングを追いきれず、惜しくも判定で敗れた。
クリーンヒットの数で明白に王者がポイントを奪っていた結果だが、そんなこと
よりも「戦い」としてのボクシングの醍醐味を感じさせてくれた試合だった。
戦い方の幅の多さの違いから、今回はラリオスが無難にベルトを守るのでは、
という見方が多いが、本来打ち合いが身上の選手でもあり、仲里の方も当然
アウトボクシングに対する対策はある程度立ててくるだろうから、どこかでまた
激しい打撃戦が展開される場面が出てくるはずだ。そこで果たして仲里の攻撃が
生きるかどうか、それが勝負の鍵だろう。どちらも一発で試合の流れを唐突に
変えるほどのパンチを持っているだけに、今回も目の離せない戦いになりそうだ。
「単品では売れないからだ」と揶揄する声もあるが、僕はいいことだと思う。
真剣勝負であり、また相手との噛み合わせに内容が左右される部分が大きい
ボクシングの試合においては、いつ名勝負が生まれ、逆にいつ凡戦が生まれるか
分からない。仮に凡戦になった場合、12ラウンドもある世界戦では特に
一般の視聴者には退屈に感じられるだろうし、観戦に行ったファンにも
「今日はハズレだったなあ」という思いを抱かせる恐れもある。そこで
楽しみな試合がいくつも組まれていれば、「ハズレ感」を減らすことが出来る
というわけだ。
そんな流れの中、来週3月6日にまたしてもトリプル世界戦が行われる。
下にも書いた戸高秀樹の初防衛戦。西岡利晃が4たびタイの安定王者ウィラポンに
挑むWBC世界バンタム級タイトルマッチ。そしてこれも再戦となるWBC世界
スーパー・バンタム級タイトルマッチ、王者オスカル・ラリオス対仲里繁。
しかもこの日の前座では、今最も世界挑戦が待たれる男、佐竹政一が世界ランカーの
カルロス・マウサと「世界前哨戦」を行い、更には日本スーパー・バンタム級の
タイトルマッチまである。非常に豪華な興行だ。
前回は判定の上では引き分けだったとはいえ、かなり分の悪い試合を演じて
しまった西岡に、名誉挽回の時は訪れるのか。同じ相手に4度も挑戦すると
いうのは世界でもあまり例を見ないし、ボクシングファンの間でも冷たい声が
聞こえてきているが、ここは素直に勝利を期待したい。年齢による衰えを
試合運びの巧さでカバーする鉄壁の王者に対し、前回の不調の印象が強い
西岡有利の予想は少ないが、西岡がもしいいコンディションで当日を迎えれば、
能力的にも王座奪取の可能性は決して低くないと思う。
しかし、西岡とウィラポンの間には、「薄そうに見えて実は厚い」とでも
言えそうな、破りがたい壁を感じるのも事実だ。第1戦から3戦まで、西岡は
あらゆる策を立てて戦ったが、それでも常に王者が一枚上手だったのだ。
ボクサーとしての能力は決して低くない西岡だが、果たしてこれ以上の「策」が
何かあるのかと思うと、どうしても悲観的になってしまう。個人的には、
もうここまで来たら自分のセンスだけを信じて、思うがままに戦ってみても
いいんじゃないかと思う。それで負けたのなら、もはや心残りもないだろう。
一方、昨年の「年間最高試合」に選ばれたラリオスと仲里の激闘は、ウィラポン-
西岡の第3戦より遥か前に行われたにもかかわらず、まだ記憶に新しいところだ。
その両者が再戦するのだから、ファンには実に待ち遠しい。前回は、5ラウンドに
KO負けは決定的かとさえ思わるほどのダウンを喫した仲里が、その後目が覚めた
かのような怒涛の反撃。ラリオスの顎を折る強烈なパンチを叩き込んだが、必死に
防衛を図るラリオスのアウトボクシングを追いきれず、惜しくも判定で敗れた。
クリーンヒットの数で明白に王者がポイントを奪っていた結果だが、そんなこと
よりも「戦い」としてのボクシングの醍醐味を感じさせてくれた試合だった。
戦い方の幅の多さの違いから、今回はラリオスが無難にベルトを守るのでは、
という見方が多いが、本来打ち合いが身上の選手でもあり、仲里の方も当然
アウトボクシングに対する対策はある程度立ててくるだろうから、どこかでまた
激しい打撃戦が展開される場面が出てくるはずだ。そこで果たして仲里の攻撃が
生きるかどうか、それが勝負の鍵だろう。どちらも一発で試合の流れを唐突に
変えるほどのパンチを持っているだけに、今回も目の離せない戦いになりそうだ。