ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

フセイン・フセインvs久高寛之

2007年12月24日 | 国内試合(その他)
世界4位のフセインを明白な判定で破り、久高は散々だった今年を
いい形で締めくくった。

4月に行われた日本王座決定戦(暫定)。有利を予想されていた
久高だったが、吉田健司を相手に自分のボクシングが出来ず敗北。
その後は所属するグリーンツダジムのゴタゴタの煽りを食ったのか
タイ、フィリピンと敵地で連戦し、強敵相手に善戦したものの
いずれも判定負け。これで3連敗となってしまった。


しかし、この試合で久高は、精神的に強くなったことを示して見せた。

序盤はフセインが前に出てプレッシャーをかける。それに対し、
久高は無理に前へ出るでもなく、かといって臆することもなく
よく足を使いながらパンチを放つ。相変わらずのスピード。
また、フセインの前進が止まったと見るや自分から仕掛ける場面も。
上々の立ち上がりだ。強打者フセインも、世界ランカーらしい
力強さを感じさせるまずまずの出足。

以前の久高であれば、相手がどんどん前に出てくると後手に回ったり、
得意のカウンターを狙うあまり手数が少なくなったりすることがあったが、
今回は「攻め込み過ぎず、下がり過ぎず」といった良いバランスだ。

2ラウンドには、右のカウンターでフセインを下がらせ、一気に
攻勢を仕掛けた。しかし、3ラウンドにはフセインがボディを中心に
パンチを浴びせ、緊張感を保ったまま試合は進む。

4ラウンド、これは容易ならざる相手だと悟ったのか、足を使うなどして
展開を変えようとするフセイン。5ラウンドも、ただ前に出るのではなく
引き気味に構えてカウンターを狙うような動きを見せた。
しかし、「押せば引く、引けば押す」今日の久高の距離感は抜群で、
なかなか狙い通りには行かない。このラウンドには再び久高がラッシュ。

何とか流れを変えたいフセイン、6ラウンドには再びプレッシャーを
強める。しかしそれは中途半端で、今度は逆に久高がプレッシャーをかけ
フセインを下がらせる。7ラウンドにはまたカウンター狙いとなった
フセインだが、久高はそれに乗らない。何発か速いパンチをまとめた後、
すぐに相手の反撃に対処。

8ラウンドはフセインが奮起し、ほぼ互角の打ち合い。
9ラウンド辺りから、久高の動きに乱れが出始める。フセインの
ボディブローが効いてきたのだろうか。ディフェンス勘が鈍る。
以前なら気持ちが途切れてズルズル行ってしまったかもしれないような
場面だったが、時に足を使い、時に反撃し、何とかここを乗り切った。

最終ラウンド。手数を増やして迫るフセインだが、それも長くは
続かない。そしてゴングが鳴った。判定は大差。圧倒するとまでは
行かなかったが、ペースはほぼ終始久高が握っていた。


勝者コールを聞いた瞬間、感涙にむせぶ久高。苦しかったこの一年、
そして強敵と対する不安。様々な感情がこみ上げてきたのだろう。

本来の高い素質に加え、この試合では「絶対に勝つんだ」という
強い意志が感じられた。日本の有力選手としては異例の、外国での
厳しいマッチメイク。しかしそういった苦境を経験し、久高は
間違いなく強くなった。いよいよ来年が楽しみだ。


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