ボクシングレヴュー

「TM」はタイトルマッチ、階級名につく「S」はスーパー、「L」はライトの略です。

12月1日、東海市民体育館

2001年12月01日 | 国内試合(日本・東洋タイトル)
久々にボクシングを見に行った。場所は東海市民体育館。
家から車で15分という近さに、「これは行かねば」と思ったのだ。
しかし車のない僕は、寒空の中自転車で40分も走り、何とか
開場時間に間に合った。

まず驚いたのは人の多さ。こんな田舎で、ボクシングを見にくる人が
これほどいようとは・・・。後に観客数は3000人と発表された。
2階席などは空きが目立ったが、ボクシングの興行としてはよく
入った方じゃないかと思う。この日のメインがヘビー級ということで、
ボクシングをそれほど知らない人も駆けつけたのではないだろうか。

まずは4回戦が6試合もあり、選手には悪いがさすがに後半は少し
飽きてきた。しかもその内KO決着は1試合だけで、客席の空気も
冷え初めていた。僕の後ろの席の、K-1好きと思しき中学生の
集団が下らないお喋りを始め、気が散って仕方がなかった。

休憩をはさんで、僕がこの日最も気になっていた、戸秀樹の再起戦が
行われた。と言っても公式の試合ではなく、エキシビジョンと言われる
公開スパーリングではあったが、戸の「4度目の防衛戦」を見に行こう
と決めていた僕にとっては、初めて見る生の戸だ。戸は3度目の
世界タイトル防衛戦で敗れ、目を痛めて一年のブランクを作っていた。

お馴染みのテーマ曲が流れると、胸が高鳴った。エキシビジョンの相手は
日本バンタム級タイトルを4度防衛中の仲宣明(なか・のぶあき)。
ブランク明けの戸はさすがに動きが重く、対照的にこれから世界に
打って出ようという仲の勢いの良さが目に付いた。しかしとにかく戸高が
帰って来た。あの熱いファイトがまた見れる! これから楽しみだ。

続いてはこれも再起の浅井勇登。世界戦で完敗を喫した浅井の今回の
相手は、タイの国内チャンピオン。今までの浅井なら簡単に倒して
しまいそうな相手だが、やはり何も出来ずに終わったこの前の世界戦の
後遺症か、どうも攻めにキレがない。単発で終わってしまうのだ。
何とか最終ラウンドにKOしたが、スランプを感じさせる内容だった。

最後は東洋太平洋ヘビー級タイトルマッチ。緑ジム所属のウガンダ人、
オケロ・ピーターの2度目の防衛戦。僕を含めかなりの人がヘビー級の
試合を生で見るのは初めてだったようで、先に挑戦者が入場しただけで、
その巨体に客席からどよめきが起こる。今日は軽量級の試合がほとんど
だったせいもあるが、やはり迫力が段違いだ。試合が始まっても、
パンチの迫力(ジャブや空振りにさえも)に観客は騒然。ピーターがやや
手こずる場面もあったが、結果的には5ラウンドKOの圧勝だった。

試合後のピーターは実に愛らしいキャラクターで、既に名古屋の
ボクシングファンの間ではアイドルになりつつあるようだ。
日本語もどんどん上達し、巨体に似合わぬ甲高い声もチャーミングだ。
インタビューの最後になぜか「一本締めします」と言い出し、観客も
大ウケ。ピーターの掛け声で全員一本締めをして終わった。

KOが少なかったため、4時半に始まって全部の試合が終わったのは
9時半過ぎ。椅子が硬く、さすがに腰が痛くなった。
しばらくロビーでぼんやりしていたら、高校生くらいの男の子たちが
「今日はおもしろかったなー」なんて言っていて、何だか嬉しくなった。

人もほとんどいなくなった頃、ピーターが静かにロビーにやってきた。
思わず写真をお願いし、握手までしてもらった。試合後のボクサーの
手は熱い。しかしピーター自身は、もうシャイな青年の顔に戻っていた。

最後にちょっとショッキングな光景を目にした。浅井にKO負けした
タイの選手が、担架に乗って救急車で運ばれていったのだ。
しかもそのすぐ横を、たまたま浅井が歩いていった。こういう時の
ボクサーってどんな心境なんだろう。何となく声を掛けられなかった。

しかし今日は戸や浅井の再起も見れたし、ヘビー級の迫力も堪能したし、
非常に満足感のある内容だった。地方のファンは試合に飢えている。
プロレスほどではないにしても、出来ればこれからもこういった
地方興行をまたやって欲しいな。